第11話:青髪ヒロイン、文化祭前日のざわめき、俺の雑用が限界突破
教室は文化祭前日の熱気でカオスだった。黒板にはカフェのメニューが乱雑に書かれ、机は試作用のボトルやカップで埋まってる。俺、臼木崚雅、雑用係として看板の脚を運びながら、汗だく。隣で辛康太が、ポスターの仕上げでマーカー振り回してる。
教室の隅で、納戸瑠璃がドリンクチームと試作用のジュースを調整してる。料理だけでなく、ドリンクまで作れるのか。青髪をシュシュでまとめて、白いシャツの袖まくりがやけに絵になる。フルーツの爽やかな香りが漂う。
「臼木君、これ運んで!」
林奈緒、美術部のボブカット女子が、装飾用の紙テープをドサッと渡してきた。
「林、毎回俺? 雑用係、ほんとキツいぞ」
「えー、頼りになるから! 頑張って!」
林が笑って去る。ったく、便利屋かよ。テープ抱えて体育館に向かうと、田中彩花が看板用のペンキ缶持ってフラフラ。メガネずらして、ため息。
「臼木君、雑用大変だね。納戸さんのドリンク、今日の試作すごいよ。前より進化してるって、みんな騒いでる」
「進化? 前のチーズケーキもヤバかったけど、ドリンクもそんな感じか?」
「うん! ベリーとハーブのミックス、めっちゃ爽やか! 納戸さん、センスやばいよね」
田中が目を輝かせる。
教室に戻ると、試作用のドリンクが並んでた。グラスに赤紫のベリージュース、ミントの葉が浮かぶ。納戸さんがクラスメイトに配りながら、ニコッと笑う。
「臼木君、辛君、飲んでみて。今日のはちょっと冒険したやつ」
「冒険って、どんな?」
俺が聞くと、彼女はグラスを軽く振った。
「ハーブとベリーのバランス、こだわったんだ。感想教えてよ」
一口飲むと、ベリーの甘酸っぱさにハーブの清涼感が混じる。前のレモネードより複雑で、夏の終わりにピッタリだ。康太がゴクゴク飲んで、グラス掲げる。
「納戸さん、これ進化しすぎ! 前のレモネードも神だったけど、こっちは別格だな!」
「確かに、めっちゃ美味い。納戸さん、カフェ開けるだろ、これ」
「ふーん、ありがと。失敗しないように、気をつけたんだ」
納戸さんの笑顔、柔らかい。クラスメイトの女子が「このジュース、明日絶対人気出る!」と騒ぐ。
ドリンク試作の傍ら、ケーキの試食も少し。チョコケーキ、前のチーズケーキより濃厚で、ベリーソースが合う。康太が「ケーキも進化してる!」と叫ぶ。
「臼木、看板の脚、倉庫からもう一個!」
クラスメイトの背高い男子が叫ぶ。体育館の倉庫に走ると、演劇部のリハーサルや軽音部の音出しが響く。文化祭、明日だな。
倉庫で脚見つけて、教室に戻る。汗だくで置くと、納戸さんが水のペットボトル差し出す。
「臼木君、雑用お疲れ。ほら、飲んで」
「サンキュ、納戸さん。助かる」
水をゴクゴク。納戸さんは看板の位置直してて、青髪が汗で張り付いてる。なんか、いつもより気合い入ってる。
「納戸さん、ドリンクも看板も、めっちゃ張り切ってるな」
「ん、こういうの、楽しいから。明日、みんな喜んでくれるといいな」
彼女の目、キラッと光る。なんか、いつもと違う空気だ。
放課後、教室の片付け中、康太がポスターの最終確認して、ドヤ顔で絡んできた。
「よ、崚雅。俺のポスター、完璧だろ。明日、カフェが主役になるぜ!」
「主役はドリンクだろ。お前、落ち着け」
「細けえ! アニメなら、俺のポスターで客が殺到する展開だ!」
康太が笑う。お前のアニメ脳、ほんと派手だな。
そこに、納戸さんが片付け終えて話しかけてきた。
「ねえ、臼木君、辛君。キャンプファイアのジンクス、知ってる?」
「ジンクス? ああ、踊った相手と告白が成功するってやつな」
俺が言うと、康太が目を輝かせた。
「よくアニメとかラノベであるやつじゃん。しかもこの学校のジンクス、ガチで当たるって有名だぞ」
「ガチって、マジかよ。誰か成功した奴、見たことあんのか?」
俺が半信半疑で聞くと、林が横から割り込んできた。
「あるよ! 去年の先輩、ジンクス通りにカップル成立したって! 納戸さん、誰か気になる人いる?」
「…まあ、いるっちゃ、いるけど」
納戸さんがポツリと言う。いる? 誰だ? 俺、聞き返しそうになったけど、グッと堪えた。康太が「ほら、来た!」と囁く。
「お前、また変な妄想してんだろ。いい加減にしろ」
「妄想じゃねえ! 俺のキャラ設定、鍵握る親友だぞ!」
康太がニヤニヤ。納戸さんは笑って誤魔化した。
「辛君、ほんと面白いね。臼木君、明日も雑用頑張って」
「はいはい、頑張りますよ」
夕方、校庭で最終準備チェックの後、家に帰りベッドに転がる。納戸さんのドリンク、看板、ジンクスの話。気になる人って誰だよ。文化祭前日、こんなざわめき、俺の平穏な高校生活には刺激が強すぎる。
こんなドラマに首突っ込むキャラ、俺じゃねえよな。




