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バトル・メイド・サーヴァント~銀の召喚とカルマのスティグマ  作者: 黒船雷光
第二章:真・ロード大戦

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絆の黄金――金鎖の収奪者との戦い

 ヴァンデル砦の暗い影が霧の中にそびえる中、リシア・シルヴァーナは胸の七つのカルマ

 ――傲慢(スーペルビア)憤怒(イーラ)嫉妬(インヴィディア)怠惰(アケディア)強欲(アヴァリティア)暴食(グラ)色欲(ルクスリア)――

 の(スティグマ)が熱く脈打つのを感じた。


 アルヴィン・シルヴァーナの存在が近く、しかし新たな脅威が一行を待ち受ける。

 シルフィードの刃には、炎、鎖、砂時計、金貨、牙、薔薇、王冠の七つの紋様が輝き、戦乙女たちの絆がその力を増していた。


 リシアは戦乙女たち

 ――セレナ、ティナ、レイラ、ミリア、エリナ――

 とロードたち

 ――クラウディア、ルーカス、ソフィア、バルクレイド、エリオット――

 を見やり、決意を固める。


「ガルド様とマリカさんが憤怒(イーラ)の騎士を倒して道を開いてくれた。

 私たちが次に進む番よ。アルヴィン様を必ず救う!」


 一行が砦の門に近づくと、ソフィア・ゴールドウェルが足を止め、眉を寄せる。


「リシア、この気配…強欲(アヴァルティア)よ。私のカルマと同じ、だけど…何か違う。」

 彼女の声には不安と確信が混じる。

 ティナが双短剣「グリードイーター・ツインファング」を握り、「ソフィア様、この敵、私たちの力で倒せますよね?」と確認する。


 ルーカス・シャドウリーフがふっと笑い、目を細める。

「おい、ソフィア。この強欲(アヴァルティア)の気配、なんか俺の怠惰(アケディア)が妙に落ち着かねえ。

 カルマの波動が(うず)くんだ…ひょっとすると、そいつを止められる気がする。」


 エリナが槍「ルースフル・カースホーン」を構え、頷く。

「ルーカス様、私も感じます。私の槍が…この敵に…カルマを飲み込む様な気配を感じます」


 リシアの胸の(スティグマ)が共鳴し、シルフィードの砂時計の紋様がほのかに輝く。

「ルーカス様の怠惰(アケディア)が…強欲(アヴァルティア)に強い? ガルド様の憤怒(イーラ)傲慢(スーペルビア)に効いたように…何か法則があるの?」

 彼女はガルドとマリカの戦いを思い出し、カルマの相性に気づき始める。


 ソフィアが目を輝かせる。

「リシア、待って! 確かにギルバートは『カルマの力を使いこなせていない』と言っていた…ガルド様の憤怒(イーラ)がレギオンの傲慢(スーヴェルビア)を抑えた…そして、ルーカス様の怠惰がこの強欲に反応してる。カルマには…何か法則があるのかも!」

 彼女はまだ確信を持てないが、仮説を口にする。

「もしカルマに強弱の相性があるなら、ルーカス様とエリナさんが鍵になるわ!」


 リシアが頷く。

「なら、試してみましょう! ルーカス様、エリナさん、メインで戦って。ソフィア様、ティナさん、援護をお願い! 皆の絆で、この敵を倒すわ!」

 敵の(カルマティック)カルマを知る(・レヴェレーション)ことは、(コメンスメント・オブ)戦いの(・ザ・クリムゾン)始まりだ。(・デュエル)

 シルヴァーナに伝わる戦乙女(バトル・メイデン)儀式の言葉だが、今は違う意味を込められていると分かる。


 霧が金色の輝きに染まり、鋭い金属音が響く。

 地面から金の鎖が無数に這い出し、リシアたちの動きを封じようとする。

 リシアがシルフィードを振り、風の刃(ヴェントシルヴァ)で鎖を切り裂くと、霧の中から威圧的な姿が現れた。



 金色の甲冑に身を包み、巨大な戦槌「ゴールドクラッシャー」を握る騎士

 ――その瞳は強欲(アヴァリティア)の光に輝き、額に金貨型の痣が浮かぶ。

「我は強欲の騎士、金鎖の(ウィンクトゥス)収奪者(・アウレウス)ヴァルデマール・グランティス! すべては我が物。命すらも、所有に過ぎぬ!」彼の声は貪欲な響きを帯び、金の鎖がさらに溢れ出す。


 ルーカスが前に進み、肩をすくめる。

「欲深い奴はせっかちだな。俺の怠惰(アケディア)で、きみのペースを乱してやろう。」

 エリナが槍を構え、砂と薔薇の力が刃に宿る。

「ルーカス様、私の槍であなたの力を届けます!」


 ソフィアがティナに目配せし、「私たちの強欲(アヴァリティア)でヴァルデマールの動きを引きつけるわ。ルーカス様、エリナさん、隙を突いて!」ティナが双短剣を閃かせ、「ソフィア様、了解です!」と応じる。


 リシアは一行に指示を出す。

「クラウディア様、バルクレイド様、エリオット様、皆さんは後方で次の敵に備えて。

 私たちの絆とこの法則で戦うわ!」


 ---


 ヴァルデマール・グランティスは、百年前、エリュシオンの交易を牛耳った豪商だった。

 富を築き上げた彼は、さらなる欲望に駆られ、仲間を裏切り、民の財を奪った。

 強欲(アヴァリティア)のカルマに呑まれた彼は、ギルバート・ヴァンデル=アークノスによってヴァルグリス・聖域の力で復活し、欲望の化身と化していた。


 ---


「ルーカス・シャドウリーフ! 貴様の怠惰(アケディア)など、俺の強欲(アヴァリティア)の前では無力だ!」ヴァルデマールが戦槌を振り、金の鎖がルーカスとエリナを襲う。鎖はまるで生き物のように動き、二人を縛ろうとする。


 ルーカスが手を振ると、怠惰(アケディア)のカルマが空気を重くし、鎖の動きが鈍る。

「欲に駆られると、動きが単調になるな。俺のペースで遊んでやる」

エリナが槍を突き出し、「黒砂の(カースホーン・)鎮魂歌(スリープ)」で砂の波を放つ。砂がヴァルデマールの鎖を絡め取り、その勢いを弱める。


 ソフィアが金の光を放ち、「ゴールドウェル・バースト」でヴァルデマールの注意を引きつける。

「ヴァルデマール! あなたの強欲(アヴァリティア)、私の心を映す鏡よ!」

ティナが素早く動き、双短剣で鎖を切り裂き、「グリードスラッシュ」でヴァルデマールの甲冑を狙う。


 ヴァルデマールが哄笑する。

「絆? そんなものは富の前では無価値だ! すべてを奪う!」

彼の戦槌が地面を叩き、金の衝撃波が一行を押し返す。

だが、ルーカスの怠惰(アケディア)のカルマが衝撃波を鈍らせ、エリナの槍がその隙を突く。


 リシアが叫ぶ。「ルーカス様、エリナさん、効いてる! この相性が鍵よ!」

エリナが槍にカルマを集中し、「ルースフル・テンペスト」を放つ。

砂と薔薇の嵐がヴァルデマールを包み、彼の動きを大きく制限する。

ルーカスが続ける。「エリナ、俺の怠惰(アケディア)を最大限に乗せろ!」彼のカルマがエリナの槍に流れ込み、砂嵐が重力を帯び、ヴァルデマールを地面に押しつける。


 ソフィアが叫ぶ。「今よ、ティナ!」ティナの双短剣が金色の輝きを増し、

貪欲なる(グリードイーター)突貫剣(・ストライク)」でヴァルデマールの動きを封じる。

ソフィアが続く。

黄金の(ゴールドウェル)核心撃(・ノヴァ)!」金色の爆発がヴァルデマールの鎖を粉砕し、甲冑に亀裂を走らせる。


 エリナが最後の槍を突き出す。

「ルーカス様の怠惰(アケディア)と、私の絆で…!『哀悼の鎮魂歌(ラメント・レクイエム)』」

槍がヴァルデマールの(スティグマ)を貫き、強欲(アヴァリティア)のカルマが砕ける。


 ヴァルデマールが膝をつき、戦槌を落とす。

「俺の…欲望は…終わるのか…?」彼の瞳から金の光が消え、静かな光が宿る。

「…かつての俺は、民のために富を築いた…。解放してくれて…感謝する…。」


 彼の身体は金の粒子となり、霧に溶けた。


 ---


 ルーカスが肩をすくめ、エリナに笑う。「ハハ、怠惰(アケディア)がこんなに役立つとはな。エリナ、いい仕事だったな」エリナが微笑む。「ルーカス様、カルマの相性…これが絆を強くしたんです。」


 ソフィアがティナに頷く。

「ティナ、私たちの強欲(アヴァリティア)がルーカス様たちを支えた。カルマに順番があるなんて…もっと知る必要があるわ。」

 ティナが笑う。

「ソフィア様、この法則、絶対に活かしましょう!」


 リシアは一行を見やり、シルフィードを握る。

「カルマの相性…円環の理の一部に気づけた。ガルド様、マリカさんの犠牲がこの気づきをくれた。

 アルヴィン様を救うため、もっとこの力を理解するわ!」


 バルクレイドが鎌を振り、「リシア、俺の暴食(グラ)で次の敵を喰らい尽くすぜ!」と笑う。

 クラウディアが鎖を握り、「リシア、この相性を活かせば、ギルバートにも勝てるかもしれない!」一行は霧を突き進み、ヴァンデル砦の奥深くへ進む。


 リシアの心に、アルヴィンの声が響く。

(リシア、俺の戦乙女(バトル・メイデン)…お前の絆とその気づきが、俺を救う)。



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