絆の炎――紅蓮の処刑者との戦い
クロウ領の北、ヴァンデル砦へと続く雪深い山道は、冷たい霧に覆われていた。
リシア・シルヴァーナを先頭に、七人のロード――
クラウディア・グリーンヴァイン
ガルド・レッドフォージ
ルーカス・ブルーストーン
ソフィア・ゴールドウェル
バルクレイド・クロウ
エリオット・ラヴェンダー
――とその戦乙女たちが、アルヴィン・シルヴァーナを救うため進んでいた。
リシアの胸に刻まれた七つのカルマ――
傲慢、憤怒、嫉妬、怠惰、強欲、暴食、色欲――
の痣が脈打ち、アルヴィンの微かな存在を遠くで感じさせた。
アルヴィン様、あなたの心が私を呼んでいる。必ず、救い出す!
リシアのシルフィードには、七つの紋様――
炎、鎖、砂時計、金貨、牙、薔薇、王冠――
が輝き、戦乙女たちの共有したカルマの力が宿っていた。
彼女たちは、アルヴィンの言葉「銀の鎖」を信じ、絆を通じてカルマを分担し、各自が二つのカルマを操れるようになっていた。
リシアは戦乙女たちを見やり、決意を新たにする。
ギルバート・ヴァンデル=アークノス、どんな力を振るおうと、皆の絆で打ち破る!
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だが、一行が向かう山道の先に暗い気配が立ち込める。
霧が渦を巻き、灼熱の風が一行を襲った。
リシアがシルフィードを構えると、霧の中から巨漢の騎士が現れる。
赤黒い鎧に身を包み、巨大な両手剣「インフェルノ・リーパー」を握る男――その瞳は憤怒の炎に燃え、額に炎型の痣が輝いていた。
「我は憤怒の騎士、紅蓮の処刑者レギオン・フレイザーク! 怒りに呑まれし剣は、すべてを焼き尽くす!」
彼の声は雷鳴のように響き、地面が熱波で震えた。
ガルドが前に出て、拳を握り吼える。
「てめえ、ギルバートの犬か! アルヴィンを返す気はねえみたいだな! 俺の憤怒で、てめえを灰にしてやる!」
マリカがガルドの側に立ち、弓を構える。
「ガルド様、レギオンの力は尋常ではありません。彼の憤怒は、カルマそのもの…まるで、かつての英雄のようです。」
リシアが息を呑む。
レギオン・フレイザーク…エリュシオンの歴史に名を刻んだ英雄のはず。
なぜ、ギルバートの配下に? 彼女は胸の痣を通じて、レギオンの憤怒がガルドのそれと共鳴するのを感じた。この力、ガルド様と同じ…でも、暗い、底なしの怒りだ…!
ソフィアが声を低くする。
「レギオンは、かつてエリュシオンを魔獣から守った英雄だった。でも、憤怒のカルマに呑まれ、暗黒面に堕ちた…ギルバートが彼を復活させたに違いない。」
クラウディアが眉を寄せる。
「リシア、レギオンの力は私たち全員で挑んでも危険よ。誰かが足止めしなければ…。」
ガルドが笑い、拳を鳴らす。
「ハッ! そいつは俺に任せろ! レギオン、てめえの憤怒、俺の炎で焼き尽くしてやる! リシア、先に行け! アルヴィンを救うんだ!」
マリカが頷き、弓に炎と金の力を宿らせる。
「ガルド様、私も共に戦います。リシア、ガルド様を信じて!」
リシアはガルドとマリカを見やり、心が締め付けられる。
ガルド様、マリカさん…あなたたちの勇気で、私が前に進める。
でも、絶対に無事で戻って! 彼女はシルフィードを握り、叫ぶ。
「ガルド様、マリカさん、必ずアルヴィン様を救います! 生きて、シルヴァーナで再会しましょう!」
バルクレイドが肩を叩き、「リシア、ガルドの憤怒は本物だ。俺の暴食も、後に続くぜ!」と笑う。
リシアは頷き、他のロードと戦乙女たちを率いて霧の奥へ進む。
ガルドとマリカは、レギオンと対峙する。
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レギオン・フレイザークは、百年前、エリュシオンの辺境を守った伝説の騎士だった。
彼の剣は魔獣を屠り、民を守ったが、戦いの果てに家族を失い、憤怒のカルマに心を蝕まれた。
ギルバートは彼の絶望を利用し、ヴァルグリス・聖域の力で復活させた。
レギオンの憤怒は、純粋な正義から生まれながら、ギルバートの支配下で破壊の炎と化していた。
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「ガルド・レッドフォージ! 貴様の憤怒など、俺の怒りに比べれば子供の癇癪だ!」
レギオンが剣を振り、炎の波がガルドとマリカを襲う。
ガルドは拳に炎を纏い、突進する。
「ふざけんな! 俺の憤怒は、仲間を守るための炎だ! てめえの腐った怒り、ぶっ潰す!」
マリカが弓を引き、炎と金の矢を放つ。
「レギオン、あなたの憤怒は民を救ったはず。なぜ、今は破壊に溺れるの?」
レギオンが哄笑する。
「救い? 俺の家族は死に、民は俺を忘れた! ギルバート様だけが、俺の怒りに価値を与えた! 貴様らも、焼き尽くす!」
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ガルドは拳を振り、炎の拳撃「ブレイズ・インパクト」を放つ。
レギオンの剣がそれを迎え撃ち、衝撃波が霧を裂く。
マリカは素早く動き、炎と金の矢「ゴールドフレア」を連射し、レギオンの動きを封じる。
だが、レギオンの剣から放たれる「クリムゾン・テンペスト」は、灼熱の竜巻となり、二人の攻撃を飲み込む。
「弱い! 貴様らの絆など、俺の憤怒の前では無意味だ!」
レギオンが剣を振り下ろし、地面が溶岩のように割れる。
ガルドはマリカを庇い、炎の壁を展開。激しい炎同士のぶつかり合いが起きる。
周囲の岩や地面が高温で焼けて赤くなる。
そして炎がガルドの腕を焦がす。
「マリカ、下がれ! こいつは俺の獲物だ!」
マリカが叫ぶ。
「ガルド様、一人じゃ危険です! 私たちの絆で、レギオンを倒すんです!」
ガルドは笑い、拳を握る。
「ハッ! なら、てめえの矢で俺の炎を援護しろ! 行くぜ、マリカ!」
マリカが 矢を放つ。
「ガルド様、レギオンの動きを封じる!」
レギオンが剣を振り、灼熱の波がガルドとマリカを襲う。
ガルドは拳を振り、炎の拳撃「ブレイズ・インパクト」で迎え撃つ。
衝撃波が霧を裂き、地面が震える。
マリカは素早く動き、炎と金の矢「ゴールドフレア」を連射し、レギオンの動きを制限する。
だが、レギオンの「クリムゾン・テンペスト」が再び二人を業火の炎で包む。
マリカの戦闘衣装も焼け爛れて、その防御力を失いつつある。
ガルドはマリカを庇い、炎の壁を展開。
「マリカ、このままだと埒が明かないぞ!」
マリカが叫ぶ。
「ガルド様連携しましょう!私たちの絆で、レギオンを倒すんです!」
ガルドは笑い、拳を握る。
「ハッ! なら、てめえの矢で俺の炎を強くしろ! 行くぜ、マリカ!」
マリカが頷き、弓にカルマの力を集中。
炎と金の矢がガルドの拳に絡みつき、彼の拳撃を強化する。
ガルドが突進し、「インフェルノ・ブレイク」を放つ。
炎と金の拳がレギオンの胸を直撃し、鎧に亀裂が走る。
レギオンがよろめき、怒りに燃える。
「貴様…俺の憤怒を…!」
ガルドが吼える。
「てめえの憤怒は過去の亡魂だ! 俺の炎は、仲間との絆で燃える! マリカ、今だ!」
マリカが最後の矢を放つ。
炎と金の光がレギオンの痣を貫き、憤怒のカルマが砕ける。
レギオンが膝をつき、剣を落とす。「俺の…怒りは…終わったのか…?」
彼の瞳から炎が消え、静かな光が宿る。レギオンは呟く。
「英雄…だった俺を…解放してくれて…感謝する…。」
彼の身体は炎に包まれ、灰となって霧に溶けた。
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ガルドが息を整え、マリカに笑う。
「ハハッ! やったぜ、マリカ! てめえの矢、最高だった!」
マリカが微笑む。
「ガルド様の炎が、私を強くしました。絆の力…本物です。」
二人は霧の奥を見やる。リシアたちがヴァンデル砦に向かっている。ガルドが拳を握る。
「リシア、アルヴィンを救え。俺たちはすぐ追いつくぜ!…だが、少し休憩が必要だ…」
「ガルド様、マリカがお供いたします。少し休まれてください。」
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一方、リシアたちはヴァンデル砦に近づいていた。
リシアの胸の痣が強く脈打ち、アルヴィンの存在が近いことを告げる。
(ガルド様、マリカさん…あなたたちの絆が、私たちをここまで導いた。アルヴィン様、もうすぐです!)
シルフィードの七つの紋様が輝き、リシアは戦乙女たちを率いる。
「皆さん、ギルバートを倒し、アルヴィン様を救う! 絆の力で、エリュシオンの未来を守るわ!」
バルクレイドが鎌を振り、「リシア、俺の暴食でギルバートを喰らい尽くすぜ!」と笑う。
クラウディアが鎖を握り、「リシア、エミリアの魂のためにも、勝つわ!」と誓う。
一行は霧を突き進み、ヴァンデル砦の暗い影が姿を現す。
リシアの心に、アルヴィンの声が響く。
(リシア、俺の戦乙女…お前の絆を、信じている)




