契約召喚の魔法陣
リナが目を覚ましたのでアインツェルゲンガーは話し始めます
邪神シュランゲによってこの世界へ転移させられたこと
この世界で悪魔と呼ばれるようになったこと
邪神に逆らい戦ったが窮地に立たされる
それを女神ルミナス、大戦鬼ヴァリアント、神の子ソレイユに助けられる
邪神は討伐されて死した仲間もルミナスが生き返らせてくれた
女神たちへの恩に報いることがしたいと願います
ルミナスは娘のソレイユを守ることを礼として受け取ることにしました
代表としてアインがソレイユの従者になります
そして天に召される数日前にソレイユと約束を交わします
「神の力は私の子供たちへは受け継がれていない
でもいつか神の力を宿す子が現れると思うの
そんな力があってもきっと困ることがあると思うわ
その子の助けになってくれるかしら?
もちろんあなただってそこまで生きられないかも知れない
いつの時代、どんな場所に生まれるかわからない
それでもお願い、その子を守ってあげて」
女神にソレイユを守ることを誓った
ソレイユの願いを果たすと約束した
アインは神の力を宿す神の子の末裔を探して旅をする
旅が暗礁に乗り上げたとき一人の男と出会います
その男はレイリック・アルフォンス、彼もソレイユの末裔でした
レイリックのおかげで末裔者探しは前進します
神の子の力を継承している者の証しも知ることができました
継承者には左胸の下あたりに薄く小さな星形の痣があるのです
それから神代文字で手紙と魔法陣を書きます
セットで配布したりレイリックの本に載せました
手紙の内容は末裔者へ伝えたいことが書かれています
神の子ソレイユのこと、神力を持った末裔者のこと、その見分け方
覚醒した神力の制御方法、そして魔法陣の使い方などを書いています
レイリックがアインのために手を尽くしてくれました
そのレイリックも亡くなって永い刻が過ぎていきました
そしてようやく召喚されました
召喚と同時にリナとの契約は結ばれます
しかし召喚された場所にはリナはいませんでした
魔法陣が改悪されていたため本来の召喚と違った状況になっていたのです
リナが飛ばされた場所がこの館であることはわかっていました
すぐにアインはこの館へ向かいます
大暴風雨結界に阻まれたり、メルたちと出会ったり
ようやくこの館に辿り着きます
そしてリナと出会うことがやっとできましたとさ
アインは語り終えます
しばしの静寂
「・・・わたしが神の子の末裔だなんてやっぱりわかりません
召喚だって魔法陣の内容が違ったのでしょう?
アインツェルゲンガーさんの魔法陣とは関係ないのでは」
「いえ、契約も召喚もできているので間違いありません
あの男が使い方を間違っていただけです
それに魔法陣の文が一部改悪されていたのです
そのためリナ様はこの館へ飛ばされたのです」
「それでは殺された他の子たちはなぜ飛ばされなかったのですか」
召喚失敗で死んだ子供たちのことを思い苦い顔をするリナ
「末裔者以外は失敗として殺すようにしていたのではないのですか?」
「そんなことはしません、改悪されていたために起こったことです」
「改悪されていたことに今まで気づかなかったのですか?
とても長い歳月の間、一度も確認しなかったのですか?
あなたが確認していればあの子たちは!」
探すために用意した魔法陣
約束や誓い、それはアイン個人の想い
その魔法陣が改悪されてたくさんの犠牲が出ました
自分の願いさえ叶えばいいのか
そのことに憤り涙を流し怒るリナ
「神の子の力だとかそんなの知らない!
あの男やあなたの勝手であの子たちは死んだのよ!
わたしはたまたま死ななかっただけ
ふざけないでくださいっ!」
アインはなにも言えません
リナの言うとおりしっかり定期的にでも確認しておけばよかった
自身の願いを、誓った約束を果たすことだけに没頭していました
「リナ、落ち着きなさい」
「ローラ様・・・」
「子供たちを殺したのは魔法陣を悪用した者ですわよ」
「でも魔法陣の管理をしっかりしていれば」
「たしかに確認を怠ったアインツェルゲンガーさんにも責任はありますわ
ですが確認をしていたとしてもきっと同じことは起きるでしょうね」
「ちゃんと確認していたら起きるはずありません」
「手紙と魔法陣、世界中に出回っているのでしょう?
それらすべてを確認なんて不可能ですわよ
行く先々で確認したとしてもそれでも取りこぼしますわ
その取りこぼしが改悪されて悪用されます
取りこぼしがないようにするなんて不可能なのですよ
だからアインツェルゲンガーさんをあまり責めてはいけません
アインツェルゲンガーさんを許してあげましょうリナ」
ローラは優しくリナに微笑みます
感情のままに責め立てたことに少し恥ずかしくなるリナでした
「アインツェルゲンガーさん、言い過ぎました、ごめんなさい」
リナは頭を下げて謝ります
「いえ、リナ様の仰るとおりなので謝らないで下さい
私の考えが甘かったのです、もっと管理をしておけばよかったのです
不甲斐ない従者で申し訳ありませんリナ様」
アインは跪いて頭を下げる
「でも末裔者への手紙もあったのにおかしいですわね
なぜ誰でも悪魔と契約できるようなことになっているのかしら」
「私もそこがわからない、手紙も魔法陣も神代文字で書いた
だから神代文字が読める者か末裔者しか読めないはず
読めなければ何の魔法陣かわからないから利用できぬはずなのだ」
「ええと、いいですか?」
おずおずとフェリスが手を上げる
「どうしたフェリス」
「長い歳月の間に少しずつ改変されていったのだと思います」
「神代文字で書いてあるのに改変は無理であろう?」
「神代文字を読める者はたしかに少ないです
それでも存在する限りその者が解読してもおかしくありません
そして解読して一般的な魔法文字に訳して作り直した可能性があります
さらにそれが改変されて改悪されていくといったのではと思います」
アインはそんなこと想定外だという顔で驚きます
「そんなの管理したり確認しようがないではないか・・・」
がっくりとうな垂れるアイン
リナもさすがにそれだとアインを一概に責められないと思いました
世の中どうしようもないこともあるのです
「よく気づきましたわねフェリスさん」
「魔導書や魔法陣が載っている書物などは一通り読んでいますし
これでもSランク魔導士ですので魔法陣を自作構築もしますから」
フェリスの言うとおり手紙と魔法陣は一般的な魔法文字に翻訳されていました
最初のうちはそのままの内容でしたが次第に改変されていきます
伝言ゲームのように少しずつ内容が変わっていきました
その結果、悪魔との契約召喚の魔法陣となってしまったのです
さすがにもうその流れは止められません
アインやリナたちはため息をつきました




