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ジャンヌと帝国軍

「よいかノートン、赤き竜を崇めることを忘れるな

 この国は彼女のおかげで大きくなった、子々孫々へ繋げよ

 我らを友とお呼び下さっているが気安く接することは駄目だ

 彼女は聖獣であり我が国へ遣わされた神の使徒なのだから」


登城を拒否していたのは粗相して逆鱗に触れることを恐れていたからです

崇めてはいるが神聖視し過ぎて畏怖の対象にもなっていました


「わかっています父上、赤き竜とは相応の距離を保ちます」

「ならば良い、私はもう長くない、あとは頼んだぞ」


現皇帝トーマス、病床にふせり余命幾ばくもありません

第一子ノートンが次期皇帝です




数日後、皇帝トーマス崩御、第一子ノートンが皇帝の座に就く

父の死は普通に家族として悲しいようで数日だけは静かでした

同時にやっと皇帝になり自身の思うように動けることに安堵します


ノートンは子供のころからずっと思っていました

赤き竜は神の使徒でも聖獣でもないただの魔獣だと


たしかに国の歴史でその重要性は知っていました

だけどもう竜の力を借りずとも帝国は揺るがない

魔法力、武力、政治力、この大陸内では最強の国である


子供のころ魔物を丸かじりしているのを見たことがありました

ドラゴンに戻って服が破けて人化したら全裸なのに平然としている

見た目はお姉さんなのに子供と同格、とても尊敬できません

ノートンは一切ジャンヌを神聖視したことがありませんでした


「あんな馬鹿な魔獣をなぜ崇拝するのか理解できん」


最近ではノートンと同じように感じている者も増えていました

赤き竜ジャンヌを人に懐いている魔獣程度にしか思っていません




皇帝ノートンを中心に国の重鎮が集まり会議をしています


「私は常日頃思うのだが赤き竜はもはや不要ではないか?

 帝国は強い、もう魔物や魔獣など恐るるに足らん」


ノートンの突然のぶっちゃけにざわつく重鎮たち


「お待ち下さい、帝国が大成したのは赤き竜がいたからでございます」


騎士団長グランツがたしなめようとする


「私も皇帝陛下と同じくそう思っておりました」


魔導士団長ピークスがノートンの意見に同意する


「そうですな、魔獣が神の使徒などと私も疑問視していました」


神官長ジョナスがさらに同調する

重鎮たちのほとんどはノートンの意見に賛同しました


「しかし追い出すのは難しいな、怒って暴れるやも知れぬ」


さすがにドラゴンに暴れられたら被害が甚大です

ノートンと賛同した重鎮たちは考えます


「それでは使役(テイム)して帝国の戦力にしては如何でしょうか」

「ふむ、それは悪くないな、飼いならせば強力な武器となろう」


ピークスの案に乗るノートン


(なんと馬鹿なことを、神の怒りを買うぞ!)


グランツは赤き竜を神聖視しているので恐れおののく

だけどここで反対しても聞き入れてはもらえないでしょう

使役(テイム)に陛下が乗り気で賛同している者が多いのだから


「だがドラゴンを使役(テイム)など本当にできるのか?」


「魔導士団総出で全力でやれば可能だと思います

 もちろん足止めなどに騎士団や神殿の力もお借りしますが

 強くとも所詮は魔獣、人間の集団戦力には敵いませんよ」


余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)でピークスが語る


「よし、なれば赤き竜の捕獲作戦を急ぎ準備せよ!」


(この作戦で帝国は終わるかも知れない)


グランツは命令に背けず諦めるしかありませんでした






数日後、ジャンヌは森でお昼寝をしていました


「ジャンヌお姉さん、お菓子持ってきたよ」

「お菓子!? ありがとメル♪」


勢いよく起き上がってお菓子を貪るジャンヌ

それを見てクスクス笑うメル


「そうだメル、お前に渡したいものがあるんだ」

「なあに?」

「我の寝床に置いてあるから行こう」


森の奥に少し大きめの洞穴がありました

最近はここを寝床にしています

中に入ると敷物が敷いてあります

以前野盗たちを退治したときの戦利品です

他にも戦利品が無造作に置かれていました


「盗品の盗品ね」

「失礼だぞメル」


ジャンヌは小さいアイテム袋をメルに渡します

もちろんこのアイテム袋も戦利品です


「中に我の鱗をいくつか入れておいた」

「え、鱗って剥いだの? 大丈夫なの?」

「脱皮と同じで勝手に剝がれたやつだから安心しろ」

「そうなんだ、でももらってもいいの?」


竜の鱗は貴重品です、売ればかなりの大金になります


「我の鱗を持ってると魔物や魔獣避けになるぞ

 それに病気や怪我などにも効く薬にもなる

 あとは売って贅沢な暮らしができるぞ♪」


「なんか逆に恐いよ、盗賊とかに狙われそう」


「どうしても必要になったときに使えばいい

 それまではお守り代わりとして持ってればいい

 我はメルが友達になってくれて嬉しいのだ

 だから受け取って欲しいのだ」


メルは少し考えて答える


「うん、ありがとうジャンヌお姉さん♪」

「こっちこそだメル♪」


それから戦利品のお茶を飲みながら談笑する二人




「ん? たくさんの気配が森の中に入ってきた」

「盗賊かな? 恐いよ」


「違うな、兵士とかの匂いがする、森を囲むように来てる

 城からの使者なんて久しいな、ちょっと行ってくる」


「うん、気をつけてね」


洞穴から出て気配が多い方へ向かいます


「恰好からして騎士団か? 神官と魔導士もいるな

 どうした、我に何か用事か?」


「赤き竜ジャンヌ様、申し訳ありません」


騎士団長グランツが剣を抜き一気に詰め寄る


ガキィィン!


左肩へ斬りつけるが剣が折れる


「なんだ? 我の身体はそんな剣では斬れんぞ

 力試しがしたいのか? いいぞ遊んでやろう」


「お待ち下さい、今のは確認しただけでございます」

「確認? 何のだ?」


「本物のジャンヌ様かどうかです

 人の姿なので似た方でしたら困りますから」


神官長ジョナスが答える


「その似た人間だったら大ケガだぞ」

「そのために神官長の私が同行しているのです」


「それで我が本物だとして何の用だ?」

「はい、帝国にとって大事なお話があります」


この国にとっての大事な話なら聞くしかないとジャンヌは思います


「それで申し訳ありませんが元の姿に戻っていただけないでしょうか」

「いいぞ」


ジョナスの言うままにレッドドラゴンの姿に戻るジャンヌ


「今だ! 一斉に全魔力を込めて使役(テイム)せよ!」


魔導士団長ピークスが囲んでいた全魔導士に命じる

魔法陣が(リング)のように両手両足、両翼の付け根、首、身体にまとわりつく


「これで貴様は我ら帝国の兵器だ!」


勝ち誇ったように高らかと叫ぶピークスだった

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― 新着の感想 ―
ただ友達といたいだけなのになぁ…人の愚かしさと言うかいやらしさと言うか…切ないです。
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