二人の魔王 中編
「最近はよくここに入り浸っているなトライゾン」
「すみませんセラフィム様、ここは落ち着くので」
地下聖堂で書物を読んでくつろぐトライゾン
「なんだったらお前用の部屋に改造してやろうか?」
「いえ、この状態が気に入っていますのでお構いなく」
「そうか、まあゆっくりしてくれ」
「はい」
セラフィムは地下聖堂から出て大図書館へ行きます
「アネラも本が好きだよな、わたしは眠くなるから苦手だ」
「冒険小説ならばセラフィム様でも大丈夫なのではないでしょうか」
「そもそも文字だらけなのが辛いのだ」
「左様でございますか」
セラフィムは庭に出ます
うーんと身体を伸ばして空を見上げます
「アインとテレサは元気かな、最後に会ったのは200年前だったな
まあ魂話でたまに話しているからいいか」
庭から出て大森林へと向かいます
「退屈だから魔獣でも転がして遊ぶか♪」
大森林で魔獣を殺さない程度にフルボッコする遊び
いい迷惑です
「セラフィム様、少しよろしいでしょうか」
「なんだトライゾン」
「地下聖堂でお見せしたいものがあるのです」
「そういや最近なにか作っていたな、それか?」
「はい」
「わかった、見せてくれ」
「ありがとうございます」
トライゾンとセラフィムは地下聖堂へ行きます
地下聖堂は大型ダンジョンボスの部屋ほどの広い空間です
その最奥に祭壇があります
この祭壇は地中にある聖魔石の聖魔力増幅装置なのです
「いつ見ても煌びやかだな、ん?」
「見せたいものはアレです」
祭壇の前に寝台が設置されていました
「なんで寝台なんか作ったのだ?」
「長期休暇のときにここでゆっくり本を読んで過ごすためです」
「お前、ここに引きこもるつもりかよ」
「ダメでしょうか?」
「いやいいけどさ」
寝台を眺めるセラフィム
「とうっ!」
「セラフィム様!?」
ボスンと寝台に飛び込むセラフィム
「おお結構フカフカだな♪」
「まったく、荒らさないで下さいよ?」
「わはは♪」
少し離れるトライゾン
「まあ荒らされても構わないのですがね」
「どうしたトライゾン?」
ぶつぶつと何かを唱えているトライゾン
首をかしげるセラフィム
すると祭壇がいきなり光り出して寝台の周囲に結界が張られます
「おいトライゾン、これは何だ?」
「見てのとおり結界ですよ」
「悪戯にしては質が悪いぞ、何がしたいのだ?」
「セラフィム様、いやセラフィム、貴様をここに封印する」
ニヤリと笑うトライゾン
「こんな結界で封じられると思われているとはな」
セラフィムは結界に触れて魔力を流して破壊しようとする
しかし破壊されない
「どういうことだ?」
「祭壇の聖魔力で作った結界だ
それに貴様の魔力は結界内では効力を失う
貴様の魔力操作を妨害する仕掛けを仕込んであるからな」
寝台の上であぐらをかき、ふーむと考えるセラフィム
「聞かせろ、なぜこのようなことをする
なにか気に入らないことでもあったのか?
言ってみろ、できる限りのことはしてやるから」
「必要ない、貴様に代わって私が新たな魔王となるのだから」
「なんだ魔王になりたかったのかトライゾン」
そんなことかという感じで呆れるセラフィム
「魔王になってやりたいことでもあるのか?
事と次第によってはお前に譲ってやってもいいぞ」
「偉そうに、譲られなくともこのまま私が即位するだけだ
貴様を封印してしまえばいいだけなのだから」
「なるほど、なめるな」
セラフィムが魔力を全開放する
地下聖堂が揺れる
結界にヒビが入り始める
「さすがだな、だが」
「ん?」
祭壇から聖魔力を帯びた無数の光の玉が結界を修復していく
結界は常時瞬時に修復されていくため壊れない
さらに解放した魔力の一部を祭壇が吸収していく
「厄介な仕掛けをたくさん仕込んでいるようだな
さすがわたしの片腕だ、見事だぞトライゾン」
「お褒めいただき光栄です」
勝ち誇った顔で微笑み臣下の礼をとるトライゾン
「大人しく封印されてやろう
だが魔王になってどうするつもりかぐらい聞かせろ」
「そうだな、聞かせてやろう」
トライゾンは語る
「他種族を蹂躙し、我が魔族の下僕にする
世界のすべてを魔族が支配するのだ!」
「・・・世界を我が手にというやつか、ガキかお前は」
「うるさい! 魔族は他種族よりも優れているのだ!
それなのに貴様は他種族を支配しようとしない
なぜ我らがコソコソと魔族大陸だけで暮らさねばならぬのだ」
「自由に他の大陸へ遊びには行っているだろ」
「ふざけるな! 人の姿になって行っているではないか
それがコソコソしているというのだ!」
恐らくどんな説得をしても聞かないだろうとセラフィムは諦める
「いつからだ? いつからお前はそう考えていた
お前はわたしや魔族のためによく働いてくれていた」
「いつからだと? そんなものは決まっている
貴様が即位したときからだ」
「そうか、ならお前はずっと我慢していたのだな」
「ああ、他種族に危害を加えるなと王命を出されたときからだ
王命だからずっと我慢してきた、イライラしながらな」
「すまなかった、お前の苦しみをわかってやれなくて
だがきっと相談されてもわたしはあの王命を取り下げないだろう」
「わかっているさ、だから貴様を封印するしかないのだ
この準備のために地下聖堂に入り浸っていたのだ」
「わたしには普通にくつろいでいるように思えた
まんまとやられたよ、お前の勝ちだ」
セラフィムは寝台に腰をかけて笑顔で敗北を認めましたとさ




