悪魔とともに
シェアルド大陸の西側にあるルーセント大陸
悪魔アインツェルゲンガーはそこで足止めされます
数日は大陸最東部にある港町レジンで過ごしていました
暇なのでシェアルド大陸周辺の大陸を渡り歩くことにします
「あの大暴風雨は結界であることはわかった
しかし解除方法が見つからないのが厄介だ」
テレサから先日報告を受けて結界であることだけはわかりました
続けて解除方法を探ってくれるようです
「私の方でも調べているがわからない
恐らく外からではなく内側に解除の鍵がありそうだ」
大陸を渡り歩いてイズール大陸へやって来ました
そのイズール大陸の最北端にある港町セイランに入ります
「暇潰しに狩りでもしてくるか」
アインツェルゲンガーはセイランの近くの森へ行きます
食後の軽い運動のつもりで魔獣狩りをするアインツェルゲンガー
「歯ごたえのない獲物ばかりだな」
狩った魔獣を手際よく解体して部位ごとに分けます
肉以外は灼熱の炎で消し炭にする
「肉は半分売って半分は野営用に保存だ」
アインツェルゲンガーはローラと同じく空間収納が使えます
「さて、帰るか」
森を出ようとしたとき
(この気配は、竜?)
「テレサが伝令でも寄越したのか?
魂話で直接伝えればよいのにどうしたのだ」
竜の気配のする方へ向かうアインツェルゲンガー
森を抜けて草原へ出ます
(ほう、私の姿が見える前にすでに臨戦態勢とは全員それなりに強いな)
アインツェルゲンガーは感心します
「止まれ! おまえは何者だ?」
褐色の闘士カナンが制止します
アインツェルゲンガーは言われたとおり止まります
(角は隠しているから悪魔とも魔族とも思うまいが警戒されているな)
竜の気配がする少女を庇うように魔導士フェリスが前に立つ
(あの少女から竜の気配がするな)
「そこの娘、お前は竜か?」
(メルから竜の加護を感じ取っているの?)
フェリスは更に警戒します
「ふむ、まずは警戒を解いてもらわねばならぬようだな
このままだとまともに話もできぬ」
「警戒するなというのは無理があるぞ
その凄まじい魔力や闘気は只者ではない」
「なるほど、これでも抑えていたつもりなのだがまだまだだったか」
「それで抑えているって、尚更警戒するに決まっている」
カナンは警戒を緩めない
「私はお前たちと戦うつもりはない、そこの娘と話したいだけだ」
「なら何者か正直に話せ」
「私はアインツェルゲンガー、少し強いだけの旅人だ」
そんな旅人がいるかと心の中でツッコむジェネラスの三人だった
「・・・アインツェルゲンガー?」
「どうしたフェリス」
フェリスは書物で呼んだ悪魔の名前と同じことに気づきます
でも本当に悪魔が存在するとは思っていませんでした
「伝承にある悪魔と同じ名前ですね」
「その伝承は何で知った?」
「古い書物で読みました」
「作者はレイリック・アルフォンスか?」
「そうですけど」
はあ、と軽くため息をつくアインツェルゲンガー
「あの男は本当にあちこちで私のことを書いているのだな」
レイリック・アルフォンス、遥か昔アインツェルゲンガーと旅をしていた
探究者で悪魔の伝承などをまとめた書物をいくつも出していた
「まさか本当に悪魔なの?」
魔力と闘気の大きさを感じているのでフェリスは本物かもと思い始めます
「でもこいつ角がないぞ」
剣士アイリーンが指摘します
アインツェルゲンガーは隠していた角を見えるようにしました
「私は悪魔だ、しかし」
アインツェルゲンガーの言葉は続かなかった
続きを言うのを止めてその場から回避したからです
「たしかに強いな悪魔ってのは、かわされたか」
角を出した瞬間、アイリーンが一瞬で間合いを詰めて斬りかかった
そのため言葉を止めて回避したのです
「またか、悪魔だからと問答無用で攻撃をするな」
「悪魔は悪い奴なんでしょ、そんな奴をメルちゃんに近づけさせないよ」
「風評被害はやめろ、それはお前ら人間の思い込みだ」
「なら悪い奴じゃないって証明できるの?」
「なら貴様は私が悪い奴だという証明ができるのか?」
「な、そんなの悪魔なんだから悪い奴なんでしょ!」
「ほう、では人間なら悪い奴じゃないとでも言うのか?
人間の中には他の人間を殺している者もいるようだが?
そいつらも悪い奴じゃないと?」
「う、それは」
反論できず立ち往生するアイリーン
「たしかにあなたの言うとおりです
一方的に悪魔だからと仲間が攻撃してごめんなさい」
「フェリス」
フェリスがアインツェルゲンガーへ謝罪します
「ですがその理屈ですと悪魔にも善悪があるのですよね?」
「そうなるな」
「ではあなたが悪い悪魔ではないと証明させていただけますか?」
「どうやって?」
「私が攻撃魔法を撃ちますからかわさず受け切って下さい」
「理不尽だな」
「悪者ではないと仰るなら反撃などしませんよね?
私も撃つのは一発だけであとはなにもしません
いかがなさいますか」
アインツェルゲンガーは少し考えます
「色々とそちらに都合が良い提案だがよかろう
これで少しは信用してくれるのなら安いものだ」
「それではいきます」
フェリスは上空に巨大なファイアボールを浮かべます
それに雷をまとわせアインツェルゲンガーへぶつけます
「フェリス先生、やり過ぎでは」
「大丈夫よメル、この方に私の攻撃は効きませんから」
「え?」
炎が消えていき爆風もおさまっていきます
アインツェルゲンガーは無傷で立っていました
「ほらね」
「いやダメージはあるからな」
少し呆れ気味にアインツェルゲンガーは反論する
「薄く張ったとはいえ防御結界を破壊された
貴様は大した魔導士だと感服したぞ」
「お褒めいただきありがとうございます」
軽くカーテシーをするフェリス
(これじゃ私の剣でも斬れそうにないな)
アイリーンは少し悔しがります
「さて、これで少しは私への警戒は緩めてくれるのか?」
「そうだな、きちんと話を聞こう」
「もちろんです、本物の悪魔と話しができるなんて貴重ですから」
「しょうがないな、聞くよ」
全員臨戦態勢を解きました
「なるほど、竜ではなかったか」
「はい、加護をもらっているだけです」
竜族の伝令かと思っていたアインツェルゲンガー
メルが竜の血を飲んで加護を得たことを伝えました
与えてくれた赤き竜を探していることも話しました
「ではアインツェルゲンガーさんもあの大陸へ?」
「ああ、お前たちと目的地は同じのようだ」
「だけどあの大暴風雨が問題ですね」
「そのことだがお前たちが協力してくれれば突破できそうだ」
アインツェルゲンガーはその方法を伝えます
「それならばいけそうですね」
フェリスが乗り気になります
他の者たちもその方法に乗ります
「では準備を始めよう」




