ジャンヌとおともだち
どこかにある人払いの結界で覆われた島
この島は竜族、ドラゴンたちが生まれ育つ場所
100歳になるまで人語や人化の術などを覚えます
100歳になったら島から外界へ旅立ちます
外の世界を知り、また島へ戻って世界のことを一族に語り継ぎます
外の世界を満喫してなかなか戻ってこなくなる者が多いのが玉にキズ
そして今年100歳になった者、なる者が旅立とうとしていました
「外の世界、楽しみなのだ♪」
赤き竜、レッドドラゴンのジャンヌ
外界で人間の友達を作りたいと思っています
悪い人間がいることは知っています
竜を殺したり奴隷にしたりする話も聞いています
だけど悪い人間ばかりではないことも知っています
遥か昔、竜族の祖先は人間と仲良く共生していました
だからきっと仲良くできる人間もいるはず
ジャンヌはそんな人間と友達になりたいのです
「悪い奴に騙されちゃダメよジャンヌ」
蒼き竜、ブルードラゴンのマリー
ジャンヌと幼馴染み、慎重派のお姉さんタイプ
宝石や人間の作る道具や文化に興味を持っています
「食べ物に釣られてついて行ったらダメだよ」
黒き竜、ブラックドラゴンのゲール
同じく幼馴染み、むしろこっちがついて行きそうな大食い娘
「悪い奴は燃やすから大丈夫!」
「「燃やすな!」」
三人とも本日外界へ旅立ちます
「「「行ってきます」」」
三人はそれぞれ別の方向へ飛び立ちました
どこかで再会するかも知れません
島へ帰ったときに再会するかも知れません
それまでのお別れです
ジャンヌは大海原の空高くまっすぐ飛びます
どこかの大陸が見えてきました
「大きい国なら友達もいっぱいできそうだ」
小国は無視して大国を探しながら飛びます
たまに山などで休憩します
魔獣を倒してお食事します
お腹いっぱいで眠ります
そしてまたうろちょろ飛んで行きます
とある大陸の南部にあるレイアル国
それなりに大きな領土を持つ国だが他国とは孤立していました
国土の外周には森と平原と山などがあります
そこには魔物と魔獣がたくさん棲息している
そのため他国との国交が上手くいきません
自国の兵士や冒険者で対処しながら他国へ行くことはできます
魔物や魔獣との遭遇率が高過ぎて行き来するのに時間がかかり過ぎます
他国からこちらへは来てくれません
危険を冒してまでこちらへ来るメリットがないからです
国王ヘンリーは何とかしてこの状況を打破しようと考えます
国中の冒険者と兵士たちを総動員して道を切り開くことにしました
手始めに一番近い国との街道を作ろうとします
魔物と魔獣がわらわらと邪魔します
少しずつ道はできていきますがなかなか進みません
冒険者と兵士たちも疲弊していきます
ヘンリー自身も先頭に立って指揮したり戦います
連戦で疲弊しているときにキングオークが集団で現れました
ヘンリーもみんなもボロボロの状態
絶望的な空気が流れます
キングオークたちがピタリと止まり上空を見上げます
ヘンリーたちも何だと見上げます
上空に赤い竜がいました
「ドラゴンまで来るとは我が国はもう終わりだ」
みんな完全に戦意喪失、絶望に打ちひしがれます
ドラゴンは気まぐれで人間を食べたり殺したりする
人間たちはそう思い込んでいました
「人間、そいつらに襲われているのか?」
赤い竜が話しかけてきました
「困ってるのか? 助けようか?」
ヘンリーはドラゴンの言葉に一縷の望みを賭けます
「そうです、助けてはいただけませんかドラゴン殿!」
「任せろ人間」
ドラゴンはそう言ってキングオークたちを燃やす
一部の炎のブレスを逃れたキングオークたちが撤退します
「逃がさない」
少しだけ身体を縮小させて森の中まで追いかけます
爪で切り裂き鋭い牙で噛み砕いていきます
次々とキングオークたちを殲滅していきました
ほんの5分ほどでヘンリーたちのところへ戻ってきます
「やっつけたぞ、嬉しいか人間」
「は、はい、ありがとうございました」
ヘンリーたちは礼を言う
ドラゴンは笑顔になる、但しヘンリーたちには表情がわからない
ドラゴンの表情などわかるはずがありませんから
「質問していいか人間」
「ど、どうぞ」
何を聞かれるのかヘンリーは内心穏やかではなかった
下手な答えを返して機嫌を損ねたら殺されるかも知れない
「お前たちはドラゴンを殺したり奴隷にする人間か?
ドラゴンと仲良くしてくれる人間か?」
そんなもの後者しか選択肢がないです
前者だったら絶対に怒らせてしまうでしょう
そもそも彼らにドラゴンを殺せるはずがありません
ドラゴンを殺せるならキングオークに苦戦しませんから
「私たちはドラゴンと仲良くしたいです!」
恐いので冒険者と兵士たちもうんうん頷く
「そうか、なら我と友達になってくれ
我は人間の友達が欲しいのだ」
ヘンリーたちは友好的なドラゴンがいるなど初めて知りました
もちろんまだ恐いですがこの申し出を受けることにしました
「私たちで良ければ友になりましょう」
「嬉しいぞ人間♪」
ドラゴンはまた笑顔になる、もちろんヘンリーたちにはわからない
「お前たちの国はこの先の大きい国だよな? そこへ連れていけ」
「ええ!?」
「ダメなのか?」
「ダメというわけではありませんが・・・」
国内で暴れられたらどうしようと考えます
「人化できるから大丈夫だ」
「そ、そうなのですね」
ホッとするヘンリー
一行はドラゴンと一緒に国へ戻ります
国の防壁前で一旦止まります
「あの、ドラゴン殿、そろそろ人化をお願いします
その姿を見たら民たちが驚いてしまいます」
「我の名はジャンヌ、そう呼べ、お前は?」
「申し遅れましたジャンヌ殿、私はヘンリーと申します
レイアル国の国王を務めさせていただいています」
「そうか、よろしくなヘンリー♪」
「こちらこそ」
ヘンリーはジャンヌへの恐れが少しだけ和らいできていました
このドラゴンは無意味に人を襲わないだろうと判断します
「それじゃ変化するぞ♪」
人化するジャンヌ
それを見て驚くヘンリーたち
そして慌てるヘンリーたち
ジャンヌはすっぽんぽんだった
ジャンヌが全裸になるのはデフォルトです