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餓死まっしぐら

冷ややかな床の感触を感じて目が覚める


「・・・ここは?」


リナは身体を起こして見回す

屋敷のエントランスロビーであることはわかった


自身の身体を確認する

折れていない、燃えていない


「わたし生きているのね、あれは夢だったのかしら」


もちろん現実だと理解しているリナ

召喚とやらが失敗したのだろうかと考える

そしてここはどこなのかと最初の疑問に戻る


立ち上がり出入り口らしき扉を開ける

庭があったので屋敷から出る


建物は教会に似た洋館

庭には白い丸テーブルと白い椅子が三脚

敷地のまわりは森になっています


「本当にここはどこなのかしら」


リナはあの召喚が失敗して転移させられたのかもと推測する

それなら森を出て誰かに助けを求めなければと思う

だが方角もこの森の広さもわからないので迷う

落ち着いて考えようと椅子に座る


「あら? このテーブル汚れていない? 椅子もだわ」


テーブルと椅子は汚れ一つ付いていませんでした

こんな人気のない森の中で汚れていないなどおかしい

ならば誰かが掃除しているはず


「もしかしたら館の中に誰かいるかも」


リナは立ち上がり館へ戻る


「すみませーん、誰かいませんかー」


館中を声をかけながら探索するけれどまったく反応がない

部屋という部屋を片っ端から確認するけれども誰もいない

結局、誰もいないということはわかった


探索しながら気づいたこと

外と同じく館の中もキレイだった

誰もいないのにキレイなのはなぜか?


「そうか、きっと定期的に掃除に来ているのだわ

 ここは別荘か何かで常住場所ではないのね

 これだけキレイならば掃除したばかりのはず

 だとしたら次に来るのは一週間後ぐらいかしら」


リナは人が来る可能性が見えたので少し安心します


「それまでこの館で寝泊まりさせていただきましょう」



リナはもう一度外へ出ます


「一応森も確認しましょう、街や村への道があるかも知れません」


庭から森へ足を踏み入れます

ゆっくり少しずつ確認しながら進みます


「森自体は普通ですね、ん? 鳥?」


上空に何か飛んでいたので空を見上げます

ワイバーンが飛んでいました


「・・・・・え? 鳥じゃなくてワイバーン?

 本でしか知らないけれど本物?」


プチ混乱するリナ

そのときガサリと茂みから音がしました

狼が現れた、正確には狼型の魔獣です


少し後ずさり素早く館へ向かってダッシュ!

狼は反応が一歩遅れてダッシュ!


ギリギリで庭に入るリナ

狼は森から館の敷地内には入れないようです

少しだけ待機していましたが悔しそうに立ち去ります


「この敷地は見えない何かに守られているのかも」



館の二階から森を眺めます

狼だけでなく多様な魔物や魔獣を確認できました


「ほんとここどこ?」


こんなところに人が出入りできるのか不安になります

でも掃除されているのだから来ているはずと期待します


ぐぅ


リナのお腹が鳴りました


「こんなときでもお腹は空くのね」


厨房へ行きます

探索しながら館に何がどこにあるのかをリナは覚えました


領主様のお屋敷の厨房より広くて冷蔵庫も大きい

きっと色んな食材があるに違いないと少しワクワクするリナ


「館の方が来たら誠心誠意謝りましょう

 食材を使わせていただきます」


生きるために仕方がないのだと言い聞かせます

冷蔵庫を開けるとあらびっくり


「・・・ナニモナイ」


大きい冷蔵庫の中は空っぽでした

厨房の棚や引き出しも確認しましたが食材はありませんでした

調理器具はキレイに揃っているのに不思議です


館はどこもキレイなので掃除スキルは不要

食材がないから料理スキルは役立たず

洗濯スキルのおかげで着替えがなくてもギリギリセーフ


「洗ってる間は裸じゃないの! ダメでしょ!」


洗濯スキルもアウトでした


「あれ? 家事職人のスキル全滅?」


がっくりとうな垂れるリナ


「そうだ、まだある! 食材鑑定!」


家事職人の料理スキルの一つ<食材鑑定>

毒物や飲食可能物を見分けられる


これを使って食べられる草や木の実を探そうと考える

だが森には魔物や魔獣が闊歩している

家事には強いが戦闘ができないリナ


「庭先で鑑定して食べられるものだけ採りに行く

 採ったらすぐに庭へ戻る、それでいこう!」


ヒットアンドアウェイで採取することにしたようです


早速食べられる草を発見します

森に入りむしり取ります

ダッシュで庭に戻ります

これを繰り返していきます

狼が嗅ぎつけてやって来ました

立ち去るのを待って繰り返します

必死です



本日の夕食、よくわからない草と木の実

食材鑑定で食べられるとわかっています

ですが味の善し悪しまではわかりません


「大丈夫、空腹はスパイス!」


精神疲労、肉体疲労、空腹により混乱中

草を食べます、苦いようでしかめっ面です

木の実を食べます、まったく味がしなくて真顔になります


「せめて調味料があれば料理スキルでなんとかなるのに」


少しグチグチ呟きながら食べていきます

そして就寝




一週間ほど経ちました

いまだに誰一人来る気配がありません


「おかしい、使用人の誰かが掃除に来ると思ったのだけれど

 ううん、薄々誰も来ないかもと思っていたわ」


館の状態を見てリナは気づいたのです

リナはあえて掃除をしませんでした

それなのに一週間経ってもキレイなままなのです

ここに来たときと同じ状態なのです

外のテーブルと椅子もピカピカなのです

少なくとも屋外のものは汚れるはずです

それがキレイなままなのはおかしい

恐らくこの敷地内には汚れないような仕掛けがあるのでしょう

故に掃除には誰も来ないと理解したのです


「ダメだ、もう限界です」


草と木の実だけではさすがに厳しい

それすらも採りに行きにくくなっています

リナが森の中へ出入りしていることは気づかれています

狼たちが交代でうろちょろするようになりました

これでは採りに行けません


ここに来た最初のフロアで倒れます

お腹が鳴りますが食べるものがありません

心も身体も疲れ切っています


「儀式で死ななかったけど、結局死ぬのですね、、、」


(領主様、イルザ様、院長先生、孤児院のみんな、ニコル様、、、)


薄れゆく意識の中、リナは優しかった人たちを思い起こす

そしてゆっくりと(まぶた)が落ちる






ガチャリ


扉が開く、その音に落ちた(まぶた)が少しだけ開く


「あら、大丈夫ですの?」


キレイな金髪の少女、お迎えに来た天使だと思うリナ

その天使から(まばゆ)い光が放たれてリナを包み込む


(あたたかい、天国へ行けるといいな、、、)


リナはまた(まぶた)を閉じる

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