赤き竜の加護
初めて狼魔獣を倒した日、最初は混乱したメル
でもすぐにこの力があればジャンヌを探しに行けると思いました
ジャンヌから与えられた力なのだと感覚的に気づきます
そして今日、陛下たちに力を示す機会が訪れました
三匹の狼魔獣、上手く倒せるかわかりません
このまま陛下たちに任せればいいとも思いました
だけどメルは動きます
複数相手でも戦えるのか、自分がどこまでやれるのか
立ち止まっていては何も変わりません、変えられません
神官長ジョナスの防御障壁
普通に考えてぶつかって終わりです
ぶつかっても恐らく怪我はしないと根拠なく思うメル
もしも障壁を越えられたら一気に三匹とも倒そうと思います
障壁に体当たりして破壊、そのまま三匹を倒します
メルはこれならきっと大丈夫と自信を持ちました
「ノートン様、これで認めてくれますよね?」
「わかった、認めようメル」
皇帝ノートンに認められました
「じゃ冒険者になってもいいですよね」
「少し協議をするから待っててくれ」
ノートンは待ったをかけます
ジョナスとグランツとコソコソ話し始めます
(やっぱりダメなのかな?)
「グランツの言っていたことは本当だったのだな」
「まさか本当に倒せるとは思いませんでしたよ」
ノートンとジョナスが小さくため息をつく
「まあ私も半信半疑でしたから説得力に欠けていましたしね」
グランツもここまでのものとは思っていませんでした
「陛下、約束どおり冒険者登録をしてあげるのですか?」
「約束だからな、だが条件を付けようと思う」
ノートンは条件について語る
ジョナスとグランツも意見を出す
そして協議が終わる
メルは暇なので倒した狼たちを一ヶ所にまとめます
三匹まとめて運べるか試してみます
三本の尻尾をつる草で縛って引っ張ります
ズルズルと引きずることができました
(ちょっと重いけど運べそうだわ)
「待たせたなメル、ってそれ運べるのか?」
協議を終えてノートンたちはメルのもとへ行きました
狼三匹を動かしている姿にびっくりです
「冒険者登録は約束だから認めよう、だが少し条件がある」
「なんですか?」
「王都で教育と鍛練を受けてもらう
それぞれ一定以上のものを身に付けてからとする」
「わたし三匹とも一発ずつで倒せましたよ」
「そうだな、だがそれだけでは駄目だ」
「なぜですか?」
ちょっとだけムッとするメル
「冒険者として旅をするなら必要なことはたくさんある
旅の路銀は依頼をこなして稼ぐだろう?」
「うん」
「魔獣は狼だけではない、もっと強く狂暴な奴もいる
魔物だって多種多様に存在する」
メルはたしかにと納得する
「武器を使ったり魔法を使う魔獣も魔物もいる
そんな相手にどうやって戦うつもりだ」
「それは・・・」
「鍛練では武器の使い方、素手での戦い方を覚えてもらう
力任せに殴るだけで倒せる相手は少ないぞ」
メルは黙って話を聞きます
「薬草採取も見分けがつくのか? 毒のあるなしがわかるのか?
大陸の移動手段は? 悪意のある者に騙されないという自信は?
お前はまだ知識の乏しい子供だ、そのための教育を受けてもらう」
少ししょんぼりするメル
「いくら力があってもそれを正しく扱う術がなければ意味はない
このまま旅に出れば赤き竜と再会する前に死ぬぞ」
「陛下、もう少し優しく言ってあげて下さい」
「グランツ、冒険者というのは命のかかった厳しい仕事だ
子供でもやるならばしっかりと覚悟を持たなければいけない
メルの両親も心配する、だから私は甘くしない」
(そっか、そうだよね)
メルはこの力があればなんでもできる気になっていました
両親に心配をかけるであろうことにも頭が回っていませんでした
世の中そんなに甘くないということに気づく
「王都での鍛練と教育を受けること、これが条件だ
それが嫌ならばこの話はなしにする、詫びは他のことを考えるとしよう
メルよ、どうする?」
メルは考えます
ですが答えはすぐに決まります
いえ、すでに決まっていたのでしょう
「王都へ行きます!」
メルの家に戻ってきました
レントンとマルシアと村長に王都行きのことを話します
心配する両親と村長
ですがメルが真剣に考えていることも理解しています
渋々ながら認めてくれました
陛下たちは一度王都に帰ります
一週間後にメルを迎えに来ます
一週間後、今回は馬車でやって来ました
兵士も数人連れて来ています
「出発前に確認させていただきたいことがあります」
ジョナスが水晶板を机に置きます
「ジョナス様、なんですかこれ?」
「メルさん、あなたを鑑定させていただきます」
鑑定用の水晶板です
鑑定と言っても称号や加護があるかどうかを見るだけのものです
「メルさんの力は何によるものなのか調べた方が良いと思いましたので」
「そうなんですね、わたしも知りたいです」
メルはジャンヌから与えられた力だと思っています
だけどいつどうやって与えられたのか知りません
そしてどのような力なのかもわかりません
メル自身も知りたかったことなのです
「水晶板に手を置いて下さい」
「うん」
水晶板に右手を開いて置きます
うっすらと輝きすぐに光は消えます
手を離すと水晶板に文字が表示されていました
『赤き竜の加護』
赤き竜の血をその身に取り込んだ者に与えられる加護
攻撃力、防御力、各種耐性などが強化される
戦闘時やそれに付随することにのみ能力が発揮される
日常生活に影響はない
加護の説明も書かれていました
「わたし、ジャンヌお姉さんの血を飲んだってこと?」
「なるほど、それで瀕死だったのに生還したということですね」
「私の障壁を破壊するのも頷けました」
出発の時間が来ました
少ない荷物と共にメルは馬車に乗ります
「陛下、娘のことをお願いします」
「メル、手紙は必ず書いてね」
「うん、絶対書くよお母さん」
馬車が走り出します
村が遠ざかっていく
冒険者になってジャンヌを探す旅に出る
そのための準備をするため王都での生活が始まります
「待っててねジャンヌお姉さん」




