謝罪
メルの父、レントンは狼魔獣を解体します
メルの母、マルシアはお肉を下ごしらえします
村長とグランツは椅子に座って呆然としています
メルも椅子に座ってお茶を飲んでくつろいでいます
「いや待って!? 料理は後にして話させて下さい!」
我に返った騎士団長グランツが叫ぶ
「あ、そうですよね、すみません」
「そうですね騎士様、すみません」
マルシアとレントンも少々混乱していました
二人も椅子に座り、ようやくお話が始まります
「まずは謝罪をさせて下さい
我が帝国軍の者がご息女を傷つけたこと謝罪します」
立って深く頭を下げるグランツ
「メルは眠っていただけで怪我なんてありませんでしたよ?」
グランツは村長に話したようにすべてを話します
「恐らくジャンヌ様が治して下さったのでしょう」
「そうだったのですね・・・」
レントンは少し怒り気味に言う
大事な娘を傷つけられたのですから
「それでその魔導士は? そいつは謝りに来ないのですか?」
「奴は拘留中です、後日謝罪させに連れて来ます」
「メルが怯えるわ、来なくていいです」
「お母さん、わたしは来てほしいよ」
メルの言葉に一同驚きます
「だってちゃんと謝ってほしいもの」
「そうか、なら必ず連れてくると約束しよう」
「ありがとう騎士様」
謝罪の件はひとまず落ち着きました
そして一同が気になっている話題に移ります
「メルくん、あの魔獣を倒したって本当かい?」
「うん、本当だよ」
「しかしなメル、どうにも信じられんのだが」
「村長さん、わたし嘘ついてないよ」
「メルが嘘を言う子じゃないのは知っておるがな」
メルは狼魔獣とのやり取りを話します
「牙が通らない?」
「お父さん、くすぐったいよ」
フニフニとメルの腕を触るレントン
「まあわたし自身もなんでなのかわからないの
でも倒したのは本当のことだし」
「ふむ、その件については後日検証させてもらってもいいかい」
「うん」
この日はこれでグランツは帰ります
村長はお肉のお裾分けを持って帰りました
メルは狼魔獣の肉料理を両親と美味しくいただきましたとさ
皇帝ノートンの執務室
グランツはジャンヌとメルのことを報告します
「そうか、赤き竜はもうこの大陸から去ってしまっていたか」
時すでに遅しと後悔するノートン
「だがそのメルという娘が無事だったのは良かった」
「はい、とても元気でした、元気というかなんというか」
「どうした? 歯切れが悪いなグランツ」
グランツはメルが狼魔獣を倒したことを伝えます
「グランツよ、疲れているのか?
すまん、働かせ過ぎてしまっていたようだな」
「グランツ殿、治癒なら今すぐにでもかけますよ」
ノートンと神官長ジョナスが心配する
「たしかに疲れてはいますがこの話は事実です」
「お前がそんな冗談を言うなんて本当にどうしたのだ」
グランツも半信半疑です
しかし狼魔獣を引きずっていたのを見ています
狼魔獣はメルの身体の三倍はあり重量もあります
それを片手で引きずっているとはいえ平然と運んでいました
とても11歳の小柄な少女ができるはずもありません
「グランツの冗談はさておき、その娘には会わねばな
その娘と両親に詫びねばならん」
ジャンヌには謝罪することがほぼ不可能になってしまいました
しかしメルへは可能なのでノートンはきちんと謝罪しようと考えています
「では明後日、メルという娘のところへ参ろう」
「「御意」」
ちょっぴり複雑なグランツでした
翌々日、ノートンとジョナスとグランツがカサネ村に馬でやって来ました
「護衛が私たちだけというのはどうかと」
「戦場へ行くわけではないのだからグランツとジョナスだけで充分だ」
兵士をぞろぞろ連れて来ては村人を不安にさせてしまいます
ノートンなりの配慮なのですが三人とも身形がいいので村人がざわつきます
「陛下、ようこそおいで下さいました」
村長は跪き頭を下げる
「急な訪問で騒がせてしまったようだ、すまんなデニス」
「おや、私の名前をご存知で?」
街の領主の名前ならともかく村の村長の名前を知っていることに驚きます
「村を統括する者の名前と顔ぐらいは把握している
さすがに村民までは覚えていないがな」
ノートンはお忍びで街や村を定期的に視察しています
少なくともその場所の統括者だけは覚えるようにしているのです
少し感心する村長でした
村長に案内されてメルの家に行きます
「い、いいい、いらっしゃいませ!」
「こ、こちらへ、どど、どうぞ!」
「落ち着けレントン、マルシア」
メルの両親は皇帝の襲来にパニックです
「騎士様、このおじさんたちは誰なの?」
「「「メルゥーーーッ!!」」」
メルの言葉に村長と両親が大慌てです
メルはジョナスとノートンとは初対面なので仕方がありません
皇帝や神官長といえども知らないおじさんたちなのです
「君がメルだね、私はこの帝国の皇帝ノートン・レイアルだ」
「私は神官長のジョナスです」
「・・・・・」
メルは父親の後ろにゆっくり隠れます
「ご、ごめんなさい、、、」
「待ってメル、俺を盾にしないで?」
父レントンを盾にして不敬を謝るメル
「気にしなくてよい、今日は我々が謝罪しに来たのだから」
ノートンとジョナスとグランツは横一列に並んで立ちます
「先日は私の部下が君に危害を加えてしまい申し訳ない」
「あの場にいながら止めることができず申し訳ない」
「同じくすぐに治癒できなかったことを謝罪します」
三人は深々と頭を下げる
皇帝が村娘に頭を下げたことに驚く両親
「メルよ、許していただけるだろうか
なにか願いがあるなら申してくれ、できる限りのことはする」
ノートンは詫びの意で願いを聞くことにします
メルは少し考えて答えます、胸の内に秘めていたことを




