お肉もったいないよね
現場から近い六村には行方不明になった子供はいませんでした
帝国軍はジャンヌが遠くの村から連れてきたのかも知れないと考えます
手分けをして帝国内の村々を探しますが見つかりません
「行方不明ではなく遺体で戻っているのかも知れませんね」
神官長ジョナスは視点を変えます
「いやジャンヌ様に助けられて生還しているのかも知れませんよ
むしろ生きていて欲しいです」
騎士団長グランツは遺体説を否定します
「そうですね、生きていますよね、すみません」
「いえ、あの状態だとそう思うのも無理はありませんから」
二人は改めて近くの六村から探し直すことにしました
今度はあの日に怪我をした子供が運ばれてきたかどうかを聞くことにします
一応遺体で運ばれた子供もいるかどうかも聞くことにします
グランツとジョナスは二手に別れて動きます
それぞれ兵士を二人ずつ連れていきます
グランツが訪れた一つ目の村にはいませんでした
二つ目の村、カサネ村にグランツは向かいます
「おや騎士様、本日はなんのご用ですかな
先日の行方不明者の件は兵士の方にお話したはずですが」
グランツは村長に訊ねます
「先日の件のことだが今日は行方不明者ではない
あの日に怪我をした子供が運ばれなかったか教えてほしい
言いにくいが遺体も含む」
「・・・失礼ですがこの人探しの理由をお聞かせ願いませんか」
「すまぬがそれはできぬ」
「なぜでしょう」
「探し人が見つかってからでないと話せぬ
その者の関係者以外には言えぬことなのでな」
村娘メルと縁のある者以外には話せません
関係のない村の者に言えば帝国への不信感を生むレベルの問題だからです
減少しているとはいえ帝国の民の大半はまだ赤き竜を神聖視しています
帝国の民、しかも子供を傷つけ赤き竜を怒らせたなんて大問題です
「なるほど、どうやらあなた方が原因のようですな」
「なんのことだ村長?」
「この国には不要だとジャンヌ様を追い立てたのではないのですか?」
「村長、何か知っているのか!?」
このカサネ村こそメルの住んでいる村なのです
村長はジャンヌが出ていった理由が帝国にあると確信しました
「ジャンヌ様はこの大陸から出て行ってしまわれた
どうやら帝国には不要だとどなたかに言われたようなのです
とても寂しそうに去って行きましたよ」
「そんな、すでにジャンヌ様は去ってしまわれたのか」
がっくりと肩を落とすグランツ
「ならば子供は? ジャンヌ様はここへ女の子を連れて来なかったか?」
「ええ、あの日大事そうに抱えて運んで来て下さいました」
「その子は無事なのか、生きているのか? 怪我は?」
「運ばれてきたときは怪我もなく眠っているだけでした」
(怪我がない? 恐らくジャンヌ様が治して下さったのだな)
生きていること、無事なことに安堵するグランツ
「騎士様、我が村が関係者だともうおわかりですよね」
「ああ」
「ならばお話して下さい、あの日に何があったのかを」
「うむ」
王命でジャンヌを使役しようとしたこと
ジャンヌを庇った村娘を傷つけてしまったこと
それによりジャンヌを怒らせてしまったこと
グランツは恥を忍んで包み隠さず話しました
「なんて馬鹿なことを」
「本当にそのとおりだ、止められず申し訳ない」
「謝る相手が違いますぞ」
「ああ、だがジャンヌ様に会えそうもないからな」
飛び去ったドラゴンを探し出すのはほぼ不可能なのです
直接謝罪できないので関係者に謝るしかないのです
「それでその子供は今どこに」
「会ってどうするのですか?」
「謝罪をしたい、もちろんご家族にもだ
その子の名前も教えてくれないか」
「あの家のレントンの娘のメルです」
少し離れたところの家を指差して答える村長
「そうか、では早速訪ねるとしよう」
「私も一緒に行きましょう、いきなり騎士様が訪ねたら何事かとなります」
「たしかにそうだな、では村長も一緒に頼む」
メルの家に向かって歩き出そうとしたとき
「騎士様? 村長さんもどうしたの?」
メルが森から帰って来ました
「メルおかえり、今からメルの家に行くところ、って何だそれは?」
「元気そうで良かった、うん、わたしもそれが何か聞きたい」
狼魔獣の尻尾を掴んでズルズルと引きずっていました
「えっと、なんか倒せちゃった
捨てとくのもったいないから持ってきちゃった
お肉もったいないよね」
「たしかに勿体無いね、いやそうじゃなくてだね、なんなの?」
村長は混乱している
「倒せたって君が? え? 本当?」
グランツも混乱していた
「噛みつかれたので殴ったら死んじゃった」
「「・・・・・」」
村長とグランツは思考停止中
「じゃ家に帰るね、さようなら」
村長とグランツは何とか意識を取り戻す
「メル、私たちも用事があるから一緒に行くよ」
「メルくん、君とご家族に話があるのだよ」
「そうなの? じゃ行きましょう」
メルはズルズル狼魔獣を引きずりながら家へ向かいます
村長は遠い目をして現実をスルーします
(あの日とは雰囲気が違うなこの子)
グランツはまだ少し混乱していた
「お父さん、お母さん、ただいまー」
「おかえりメル、メル?」
メルの母、マルシアは娘が掴んでいる物体に首をかしげます
「おかえりメル、はあ?」
メルの父、レントンは娘が掴んでいる物体に呆然とします
「今日はこのお肉でなんか作ってお母さん♪」
いい笑顔でリクエストするメルであった




