村娘メル
ジャンヌはメルに別れを告げず大陸を飛び出しました
物語はその時間までさかのぼります
メルはジャンヌがいじめられていると思ってかばいました
ピークスの氷の槍で右胸を貫かれて意識が飛びます
失った意識の中で夢を見ます
「なんだろうここ?」
白い霧が立ち込めている空間
恐る恐るゆっくりと歩きます
人影がうっすらと見えました
(人がいた、悪い人じゃなければいいけど)
とりあえず近づき声をかけることにしました
「あの、ここはどこなのでしょう」
近づくと人影の姿がはっきりとわかるようになる
その人はメルの父親より少し上ぐらいの茶髪碧眼のおじさんでした
身形がよく、まるで皇帝陛下のような装い
帝国軍に攻撃されたのでメルは少しビクッとしました
「ここは君のような子供がまだ来ていい場所ではないよ」
優しく微笑みながら話してくれます
(悪い人ではなさそう、よかった)
少しホッとするメル
「おや、君はどうやら赤き竜の加護を受けているようだね」
「赤き竜ってジャンヌお姉さんのこと?」
「懐かしい名前だね、そうだよ」
「おじさん、ジャンヌお姉さんのことを知っているの?」
ジャンヌの知り合いのようなのでメルは安心します
「その状態ならすぐに目覚めることができそうだね
さあ早く目を覚まして家族を安心させてあげなさい」
メルの身体がオレンジ色のゆらゆらしたオーラに包まれています
「え、なにこれ?」
メルは驚きますが不安などはありません
むしろ心地良い感じがしています
「あ、身体が消えていく」
メルの身体がゆっくりと消えていきます
「ジャンヌのことを頼んだよ
そうだ、君の名前を教えてもらえるかな
ジャンヌの友達なのだろう?」
「うん、メルって言います
おじさんもジャンヌお姉さんの友達なの?」
「ああ、私もジャンヌの友達、ヘンリーだ」
その言葉を聞いてメルの身体は消える
目が開く、メルは目覚める
両親が気づいて抱きついてくる
「よかった、このまま目覚めないかと」
「メル、どこか痛いところはないかい」
「お父さん、お母さん」
起きたてで状況が理解できていません
頭もまだぼうっとしています
(夢見てたけどよく思い出せないや、でも)
メルはヘンリーという名前だけ記憶に残っていました
(ジャンヌお姉さんの友達のヘンリーおじさん)
1200年前の王様のことなど知りません
メルにとってはただの身形の良いおじさんです
「大丈夫かいメル」
「村長さん」
メルが起きたことを知って村長がやって来ました
ジャンヌが助けてくれたことを聞かされます
そしてこの大陸から出ていったことも聞かされました
「ジャンヌお姉さん・・・」
メルは悲しくなって泣きました
自分が大人になっても一緒にいようと誓ったことがありました
なのに何も告げずに出ていかれました
メルは両親に慰められて泣き疲れて眠ります
メルは落ち込んでゴロゴロ寝るだけの生活を数日過ごしました
両親は怒らず好きにさせてくれていました
ですが少しずつ家や畑の手伝いを始めます
もともとしっかりした子なのでニートにはなりません
「ごめんね、お手伝いサボっちゃって」
「気にするな」
両親はメルを優しく見守っています
ジャンヌととても仲が良かったことも知っているからです
久しぶりに森へ行きます
ジャンヌと遊んだ川べりに座ってボケっとします
「人化するときいつも裸だったなあ
今もどこかで裸なのかなジャンヌお姉さん」
その予想は的中であることをメルは知らない
ガサガサ
「ん? なんだろ」
少し離れた木々の間の茂みから音がしました
(結構離れているのに聞こえた?)
「最近耳と目が調子いいなあ、身体も快調だし」
遠くの物音を鮮明に聞き分けられたり
遠くを見渡せるようになっていました
「成長期だから身体も丈夫になってきたのかな」
グルル
さきほどの茂みから狼型の魔獣が現れました
「魔獣!?」
驚いて立ち上がります
この森で魔物や魔獣が出たことは1000年以上ありませんでした
ジャンヌがいなくなったため現れるようになったのです
帝国内の他の場所でも目撃されるようになっていました
「恐い・・・」
足が震えます
狼はメルに向かって飛びかかります
「いやあっ!」
ガブリと右腕を噛まれるメル
助けなどいません、メルは死を覚悟しました
「グルル?」
「あれ? 痛くない?」
狼は噛みついたものの牙が通らないことに困惑する
メルも牙が刺さらないことに困惑します
「こ、この、離れてよ!」
小さな村娘の拳など大したダメージにはならないことはわかっています
それでも引きはがすために殴ってみました
ドバンッ!
狼が殴り飛ばされます
遠くまでゴロゴロ転がっていきました
少し痙攣して息絶えます
「なにこれ?」
恐る恐る狼に近づきます
殴った頭部が変形していました
「これ、わたしがやったの? どういうこと?
なにこれ、わけがわかんない」
噛まれたはずの右腕は傷一つありません
殴った拳もなんともない
だけど狼さんはズダボロです
「わたしの身体、どうなっちゃったの!?」
メルの頭は大混乱




