慟哭
瞬間、一番手前にいた魔族の首が飛ぶ
「なにっ!?」
「がっ!」
立て続けに両横の二人の首が飛ぶ
「ちいっ、ここまで速かったのか!」
残りの三人はバラバラに距離を取りシュナイダーから離れる
シュナイダーは右手に剣、左手に短剣を持っていた
どちらも材質はオリハルコン
「その程度で私を葬ろうと言うのか?」
「いつ抜いたのか見えなかったぞ」
「なるほど、我らの同胞が敵わぬはずだ」
「だが我らとてなんの策もなしにこの場にいるわけではない」
シュナイダーは魔族の言葉を無視してすぐに動く
正面の魔族の心臓を剣で貫く
「くはは、かかったな!」
その魔族の血がロープのようにうごめく
さらに首をはねた三人の身体が起き上がる
「我が同胞たちの仇! 死ねえ、英雄ぅっ!!」
血に魔力を流して操りシュナイダーを捕縛する
首なしの魔族に囲まれるシュナイダー
「なるほど、死体を操っているのは貴様か」
少し離れた背後にいる魔族へ言う
「さすが英雄、簡単に気づきやがったか」
その魔族は死体に魔石を埋め込み操っていた
「だがもう遅い! 弾けろっ!」
三人の死体が膨張して爆発する
「囲まれてこの爆発だ、英雄と言えども防げま、いっ!?」
血縛りの魔族の首が飛ぶ
シュナイダーがその魔族の身体に触れる
「お前が弾けろ」
首のなくなった魔族の身体が破裂する
「あとはお前ら二人だけだ」
決して無事ではない、身体は少し焼けて血が流れている
それでもまっすぐ立って魔族たちを見据えるシュナイダー
「これが、英雄か」
「同胞たちが容易く殺られるわけだ」
何も言わずシュナイダーは動き出す
しかし魔族たちを守るようにたくさんの死体が壁になる
街の住民たちの死体だ
「ふはは、お前の友人知人だ! 死体とはいえ無体はできまい!」
「みんな、すまない、さらばだ」
「なに?」
目の前の死体の群れが斬り刻まれ散乱する
そして操る魔族も全身を斬り刻まれ霧散する
「お前っ! 死体とはいえ同胞だろうが!?」
「お前たちも自身の同胞を爆弾にしているじゃないか」
「くそっ! だがお前は魔法が使えない!
身体もさっきの爆発でボロボロだ」
風の刃、炎の玉、氷の矢を放つ魔族
それらを躱し、捌き、弾く
「勘違いをするな、私は魔法が使えないわけではない
魔力量が少ないから必要最低限しか使えないだけだ
さっき血縛りの奴を吹き飛ばしただろう」
体内に魔力の塊を撃ち込んで血縛りの魔族を破裂させたのです
囲まれたときには薄い結界を張っていた
薄くしか張れないのでダメージを少し負ったのです
「なんだこいつ、こんな奴に勝てるわけがない」
強化で速さを上げて逃げ出す魔族
「敵前逃亡か、軍なら軍法会議ものかその場で処刑だな」
シュナイダーはすぐに追いかけ追いつく
「強化魔法も使えるのか!?」
「残念だがそれは使えない」
「な、ならなぜ追いつける!」
「決まっているだろう」
魔族の首と全身を斬り刻む
「血と汗と涙の結晶だ」
何度も死にかけるほどの鍛錬を重ねてきた
愚直に、命懸けで、我武者羅に、決死の努力の積み重ねである
それが彼を英雄へと昇華させた
魔族の残党は殲滅した、街の火の手を消して回る
見つけられるだけの遺体を一ヶ所に集めて火葬する
少しだけこの街で物思いにふける
「戻るか」
軽く黙祷をして街に別れを告げる
戻ってジェームズに街の状況を伝える
「私は王都へ帰るがジェームズはこれからどうするんだ」
「そうだな、ここで傷を癒しながら考えるよ」
「そうか、もし王都に来たら声をかけてくれ」
「ありがとう」
ジェームズと別れて翌朝早く王都へ向かうシュナイダー
いくつかの街や村を通過して王都が本来見える場所まで来ました
そう、本来なら王都の外壁や高台にある城の姿が見えるはず
(なんだ? なぜ見えてこない)
サリド街の件で憔悴しているシュナイダー
そこへこの不安感を募らせる違和感
心がざわつき焦りが出る
(嫌な予感がする、そんなもの当たらないでくれ)
だが的中する、最低最悪の状況を目の当たりにする
王都の外壁はあちらこちら破壊されていた
すべての門が破られていて門兵の遺体もあった
周辺には兵士や戦闘要員の遺体が打ち捨てられている
急いで王都の中に入ると無数の建物が瓦礫の山となっていた
民も兵士も物言わぬ躯となっていた
城の方を見る、頑丈に作られているため全壊はしていない
しかしところどころ壊されている
シュナイダーの心臓は今にも破裂しそうなほど早鐘を打っていた
城に入り探す、必死に探す、大切な二人を
シュナイダーの執務室へ辿り着く
ここには秘密の隠し部屋がある
きっとそこに隠れているはずだと切に願った
隠し部屋の出入り口は破壊されていた
中に入る
立ち止まる
ゆっくりと近づく
「・・・・・お、おお」
震えながらしゃがんでそっと手を伸ばす
二つの頭を抱きかかえる
妻と娘の頭、頭だけ
『ううぅぅぅ、、、おぉ、、おおうぅーーーーーぅっっ!!!』
ただひたすらに叫んだ
ただひたすらに泣いた
ただひたすらに怒った
ただひたすらに狂った
ただひたすらに、後悔した
王都に残さず連れていけばよかったと後悔をした
なぜこんなことになったのか
魔族の残党がここにも来たのか?
様々な考えが頭の中を駆け巡る
だけど今はまともに思考できない状態であった
離れたところにある二人の身体のそばへ行く
妻と娘の頭を抱きかかえながらその場でまた泣き崩れる




