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さて、このたびの離縁につきましては。  作者: 朱宮あめ


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 からん、と軽やかな鈴の音とともに、睡蓮は店内に足を踏み入れる。

 喫茶店の店内は少し薄暗く、レコードプレーヤーからはほのかな音量のクラシックが流れている。

 店に入ってすぐ、睡蓮は足を止めた。店内の客たちはみんな見慣れぬ格好をしている。

 胸元がざっくり空いた不思議な柄の着物だった。腰がきゅっとしていて、腰から下がふわりと、まるで大福のようにふくらんでいる。さらにひらひらした布があちこちに付いていて、まるで魚の鰭のよう、と睡蓮は思った。

 今はあのような着物が主流なのだろうか。そういえば、街でも数人あのような格好の若者を見かけた。

 佇んだまままじまじと観察していると、となりで桔梗が苦笑した。

「あれは北の都の者たちでしょう。北はああいった着物を好んで着るんですよ」

「そうなんですね……初めて見るお着物です」

「南や西のひとたちもまた、あれとは違う変わったものを好んで着ているみたいですよ」

「そうなんですか?」

「南は壺装束という着物が主流ですね。西はたしか、チャイナドレスという身体のラインが出る衣装だったような気が。まぁ、それぞれの土地を守る現人神が好んで着ているものを、街のひとたちも着るみたいですね。いつだって、お洒落の最先端は現人神のようです」

「なるほど。桔梗さん、各地のことにすごく詳しいんですね……」

「実は以前、各地を旅したことがあるので」

「えっ! それは……」

 気になって振り向くと、桔梗はにこりと笑って話を変えた。

「さて、いつまでも立っていると邪魔になります。睡蓮さま、あの席にしましょう」

「あ……はい」

 ふたりは窓際の席に座ると、渡されたメニューを見た。

「睡蓮さま、珈琲は飲めますか?」

「こー……ひぃ、とは?」

 聞きなれない単語に睡蓮は首を傾げた。桔梗が優しく説明する。

「異国の飲み物なんですが、最近こちらにも流通するようになりまして。香りが素晴らしく良くて、とても美味しいんですよ」

「へぇ。じゃあ私、それを飲んでみたいです」と睡蓮が答えると、桔梗はカウンターの奥にいたマスターを呼んだ。

「珈琲をふたつ。それから、チョコレートを」

「かしこまりました」


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