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黒魔女アーネスの、使い魔の、推しごと 〜転生召喚されたし、ご主人様を国民的アイドルにするぞ〜  作者: 茉森 晶
第0章 【前日譚】『アーネス VS ユーオリア ROUND 1 ファイッ!』

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(036)(番外01-02) 『伸びしろですわ』



「で? 何の勝負をしようっての?」

「お互いの体を傷つける気はありません。召喚霊による力比べでいかがでしょう。あなたも召喚魔法はお得意だそうですし……」


 騎士団員が追い返された件、アーネスは風属性の小型精霊竜を召喚した。

 騎士達(かれら)は、その小型モンスターの巻き起こす暴風により近づくことさえできなかった。


 その情報を聞いていたユーオリアは、アーネスの得意属性や術法適性の目星を付けていた。

 が、基本、研究や習練しかしてきていない彼女にとって初めての実践的な機会。

 並の15歳なら、ビビッて本来の力を発揮できなくてもおかしくない。

 のだが、良くも悪くも、ユーオリアは自信満々の世間知らずお嬢様だった。


(わたくしの召喚霊を見たら、きっと『あなたスゴいのね! 私の師匠になってくれないかしら。あなたの家で修行させて欲しいわ!』となりますわ。お顔も可愛らしいですし……念願の妹ちゃん! い、いえ、妹のような弟子ができるなんて、嬉しいことですわね)


 かわいいもの好きのユーオリアはニヤニヤを抑えきれず、一度顔を背ける。

 『黒魔女さんを助ける』という真摯な目的でやって来てはいたが、実際にアーネスを見て、その容姿に顔のゆるみが止められないでいた。


(意地っぱりなことを仰っていますが、きっと寂しいのですわ。少しずつ心を開いていただいて、ゆくゆくは本当の姉妹のように……)


「何をゴニョゴニョやってんの? ふざけてるんなら、帰ってくれないかしら」

「し、失礼しました。ちゃんとしますから、少々お待ちを……」


 ユーオリアは(まぶた)を閉じ、顔の前で(ロッド)を掲げ深呼吸する。


(ユーオリア、何を勝った気でいるのです? 魔法への情熱に自負はあっても、慢心など恥ずべきこと。幼いとはいえ、黒魔女さんに油断は禁物ですわ。予定通りの火山蜥蜴(マグマリザード)ではなく、わたくしの今の最高を見せなくては!)


「ユーオリア・ファイネルが(ことわり)を示す! この命力を()とし、指した理霊(りれい)の役割は書き換えられ、わたくしの望む器を(かたど)る。器を使うは、記す座標に生きる異界の者。依り代に魂を映し、ひととき、忠実な戦士となる!」


 クリスタルの上に浮いた魔法陣が輝きだし、ユーオリアはその中心へ白と赤の混じった(オーラ)を注ぎ込む。

 その表情に余裕はなく、力を抜けば自分の体が弾き飛ばされるくらいの力が加わっているように見えた。


「いらっしゃって! 火山神形(しんぎょう)パードゥガイア!!」


 その声を合図に魔法陣が一気に拡がり、真円からゆっくりと炎をまとった巨人の石像が具現化されていく。


「お嬢様! その召喚は時期尚早ですぞ!!」


 ウルクスの声にも構わず、ユーオリアは魔力を送り込み続ける。

 その額に汗が滲み、プルプルと震える腕を必死に抑え込んでいるのがわかる。

 その大仕事を、アーネスは腕組みで傍観しながら、またひとつ溜息をついた。


「見栄っ張りね……所詮、お嬢のままごとだわ、うん」


 巨人(パードゥガイア)の身の丈はユーオリアの倍ほど。

 予定していた火山蜥蜴(マグマリザード)の10倍にもなる体躯。


「オオオオオオオ……」


 巨体の足先が形成しきるかしきらないかのタイミングで、それは重く低い咆哮を上げ、長い腕をグルンと振り回した。


「キャアッ!?」


 あろうことか、召喚主を吹っ飛ばすような動作。

 ユーオリアは咄嗟に物理防御の魔法を張るが、衝撃で芝生の上をゴロゴロと転がされる。


「お、お嬢様!! 大丈夫ですかッ!?」

「だ、大丈夫ですわ! 実戦なのですから……こういうこともあります!」


 気丈に振る舞うが、やはり15歳の少女。

 かなり怖い思いをしたようで、半泣きの表情になっていた。


「ぷっ……あははははっ! なんだか大変そうね、天才白魔女さん」

「クッ……召喚は成功したはずですわ! ここからでも制御は……」


 ユーオリアは杖を握り直し、まるで指揮者のように空中で新たな魔法陣を描く。

 そしてそのまま、その真円を巨人(パードゥガイア)の胸辺りに飛ばし、追加の命令として撃ち込んだ。


「形成段階で誤因子が出ていたとしても、この術式で全体を走査……問題を発見して修正を……ッ!?」

「オオオオオオオオオオオオオオオ」


 先程はたまたま近くにいた者に当たったようだったが、巨人(パードゥガイア)はその拳をユーオリア目がけて振り下ろした。


「ひッ……!!」

「お嬢様ぁッ!!」


 ゴウンッ!!


 思わず目を瞑り、ちぢこまるユーオリア。

 轟音のあと、少し遅れてその髪を突風が掻き乱す。


「自分の力量も把握できないお子ちゃまのくせに……なーにが『お姉さんですから』よ」


 ユーオリアが(まぶた)を開くと、目の前には、今まさに巨人(パードゥガイア)のパンチを弾き飛ばしたアーネスが立っていた。


「その姿……! 烈風の鎧装ヴィンガウス……ですの?」

「ふぅん、知識の方は確かみたいね。この鎧、便利なのよ。念じれば早く動いてくれるし、物理被害は風の力で分散してくれるし」


 アーネスの全身を、流れる緑風がまとわりつくように覆っていた。

 それは、とある異界の勇者が使用した鎧で、特殊な製法で風と金属を融合させた不定型な魔法防具。

 つまり、無生物を喚び出す『異具召喚』が行われた結果である。


(異具召喚……今はリファナさんが有名ですが、適性がある魔法使いは極少数。黒魔女さんの才能は無限ですの?)


「そ、そもそも、いつの間に召喚を? 非魔法学的ですわっ!」

「ちょっと黙ってなさい……よっと!」


 再び飛んで来たパンチを両手で受け、風の力で反転させ、そのまま巨人(パードゥガイア)の頭部目がけて撃ち返す。


「オ…………」


 巨人(パードゥガイア)の頭部にロケットパンチがめり込み、全身から噴き出る炎が一瞬ボワッと強く燃え盛る。

 炎が煙に変わり、すべての動きを止めた巨人(パードゥガイア)の魔力が爆散。

 爆発の轟音の中、その巨体は霧のように消えていった。


「種を明かすと……アンタに会う前から召喚してたのよ。それを一時的に圧縮して隠し持ってたってわけ。ま、アタシだから完璧に再構築できるんだけど」


 余裕を見せながらも子供らしいドヤ顔で、白魔女を見下ろす黒魔女。

 ポカンと口を開けて見とれていたユーオリアはハッとして、はしたなく開いた脚を慌てて閉じる。


「憑依核をアタマに設定するのは、召喚霊が自分で守る可能性が高い……それは確かに定石よ。だけど、教科書通りの優等生じゃ実戦では通用しないわ、うん」

「クッ……そんなこと解ってますわ! あの時は、形成だけで手いっぱいで……いえ、すべてはわたくしの未熟さゆえ……」


 完敗の悔しさを噛みしめながら、ユーオリアは立ち上がる。

 いいとこなしの彼女だが、それでも姿勢を正し、まっすぐアーネスに向き直った。


「わたくしの負けですわ。不躾に勝負を持ちかけ、申し訳ありませんでした」

「……さすが、育ちがよろしいわね。アタシもアンタの申し出を受けたんだから、謝らなくていいわよ」


(命を狙う奴もいるっていうのに……この女、ちゃんと負けを認めるし、白魔女のくせに潔いヘンな奴。とはいえ、これ以上ちょっかいかけてくる奴が増えるなら……もう孤児院(ここ)を出て行った方がいいかもね)


 アーネスはそんなことを考えながら、『晒し首おじさん』の周りの地面を風の刃で切り崩す。

 屈辱ながら地中から這い出たウルクスは、兎にも角にもユーオリアの側へ駆け寄り、彼女の体を気遣った。


「お嬢様、私の背に! 至急、診療所へ……」

「必要ありません。あなたは下がっていてください」


 ユーオリアはウルクスを制し、ユリの花の刺繍が入った革製ポーチをアーネスに手渡した。


「約束のお金です。カバンも記念に差し上げますわ」

「ど、どうも。さ、気が済んだらサッサと帰って? 何の変哲もない静かな村だってのに……アンタが大騒ぎするから、村の人が集まってきちゃったじゃない」


 派手な戦闘(バトル)にならなかったとはいえ、人間サイズ以上の召喚霊が現れることなどない村で、3mのゴーレムが出現したらそれだけで大騒ぎ。

 皆、遠巻きに様子を窺っていた。


「村民の皆さん、騒音、震動など、ご迷惑おかけしました。すべてはわたくしの力不足によるもの。被害報告など苦情は、ユーオリア・ファイネルまでご連絡くださいませ」


 野次馬に短く礼をすると、ユーオリアは振り返り、あらためてアーネスの顔を見据える。


「黒魔女さん、いえ……アーネスさん。助けていただき感謝しています。このご恩は、いつかお返しいたしますので」

「そんなのいいから……もうアタシに関わらないで」

「いいえ、また挑戦させていただきます。わたくしには、まだまだ伸びしろがあることを証明いたしますわ」


 ニコッと可愛らしい笑みを添えてそう告げると、(きびす)を返し、ユーオリアは堂々と歩き出す。

 去って行くふたりを呆れ顔で見送り、アーネスは深い溜息をついた。


(何なのよ、まったく。やっぱりヘンな奴がどんどん来ちゃうのは問題……)


 そう言いながらも、アーネスは自分の口角が上がっていることに気づいてしまう。


(なに笑ってんの? アタシ……。あんな何もかも正反対のお嬢様、一番嫌いな人間のはずでしょ)


「笑顔にさせられるなんて、なんか悔しい……面白い奴ではあったけどさ。ま、もう二度と会うこともないか……」


 この三日後、アーネスは孤児院を去る。

 とはいえ、行き先はすぐ近くの森の中、であるが。




「アーネスさん、すごい実力でしたね。あんなに小さくて可愛らしいのに……」


 同じ頃、ユーオリアも笑顔で歩いていた。


「こちら側を敵視する危険な存在であることがわかったでしょう。『また挑戦』などと仰ってましたが、もう関わらぬよう……」

「『こちら側』とは、どちら側です? ウルクスあなた、彼女を別世界の人間とでも思っているのですか?」

「い、いや、そういうわけではありませんが……」


 ユーオリアは小さく溜息をつき、青い空を見上げた。


(大勢の人々に想いや考えを共有する、よい魔法が開発できれば……少しは世界も変わるかもしれませんのに。こういう時は……魔法より歌や詩の方が、人の心を動かせたりするのですよねぇ……)


「日々、魔法の研究ばかりになっていますし……たまには、歌の練習でもしようかしら」

「よいですな! 最近聴かせていただいておりませんが、お嬢様の歌は昔から素晴らしいですから……」


 黒魔女のことを考えないようウルクスが話題を広げるが、ユーオリアの頭の中は、もうアーネスのことでいっぱいだった。

 次の勝負のため、どんな召喚霊を目標にするか。どんな術式の組み方を試すか。

 その顔はまるで、家族へのサプライズプレゼントを考えているかのようだった。


「難しいけど……媒体(アイテム)の追加設定に挑戦してみようかしら。アーネスさんとおそろいの『本』を使えるように……うふふっ」



おわり


ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます!


本編の続きはまだストックが無いのですが、

ある程度プロットは作っていて、

銀組の担任の魔女先生から試験を受けたり、

ヨウジがユーオリアをアイドル変身させ、

アーネスとデュオでパフォーマンスしたり……

ドタバタ学園コメディっぽいノリにしていきたいな、と思ってます。


が、なかなかまだまだ多くの人に見てもらえておらず、

ほかにやることもありまして……

一旦ここでひと区切りとさせていただきます。


設定もキャラクターも力を入れていて、

とてもお気に入りの作品になってます。

自分自身が書きたい気持ちが強いので、

読者さんが増えていかなくても

時間が取れたら何とかしたいところです。


もちろん、ブックマークと★評価を押していただければ、

ヤル気倍増ですので、何卒よろしくお願いします!



さて、次回更新から

『スーパー美人インフルエンサーなのに、俺の声にだけフニャるひよの先輩』

の17話以降をアップして行けたらと思ってます。

予定よりストックが足りてないので、連日投稿ができるか

わからないですが……こちらも応援してもらえたら嬉しいです。


ではでは、またいつか

ヨウジ&アーネスたちに会いに来てください!

挿絵(By みてみん)

(画:亜方逸樹)

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― 新着の感想 ―
面白かったので、続きが読みたいと思いました。 7月の一区切りから、待ってましたが、「他にやることもあるので・・・」とのことでしたので、気長に待つことにしますね。(スーパー美人インフルエンサーなのに・・…
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