(031) 『また始末書ですよ』
すみません、一度(032)を予約投稿してしまってましたが、
削除して(031)を投稿し直しました。
教えてくださった方々、ありがとうございます。
* *
「早速、お前たちが事件に関わっていたのか……」
飲み屋が半壊しそうな大騒ぎ。
野次馬が集まり、程なくしてリファナたち騎士団も到着した。
「事件を起こした、みたいに言わないでくれる? アタシは攫われそうになっただけ。完全な被害者よ」
口と腕の戒めが解かれ、アーネスは溜息をつきながら痛む腕をさする。
「わかっている。で……この男たちはヨウジが?」
「えーと……はい。俺が見た限りでは、手に布巻いた奴が例の黒い指輪を使ってましたね」
「アタシに精神操作魔法をかけたアイツもよ。そっちは発動後すぐに砕け散ったんだけど」
「なるほど……」
リファナは縛り上げられた男ども4人を見下ろし、その中の主犯格の男をグイと引き上げる。
「金で雇われただけ、と言ったな。どんな奴だった?」
「……顔を隠した女だ」
「女? 顔を隠していたのに、断言できるのか? 声だけなら……」
「『顔を隠した』って聞いて、当然体も隠してると思っただろ? そいつは顔だけ隠して、体の方は女を見せつけるかのように薄着だったのさ。イイ体だったぜ……へへへ」
(顔だけ隠した薄着の女……そんな奴なら印象強いだろうな)
「余計なことはいい。知ってることを全部話せ。どういう経緯で接触した?」
「店に客としてやって来て、前金と指輪を見せ、話を持ちかけてきたのさ。『指定の時間、裏口から出た路地に黒魔女がひとりでいるから捕まえろ』とな」
「アーネスがこの裏路地に来ることがわかっていた……? そいつは予知でもできるのか?」
「そうかもな。俺たちは雇われただけ。あとは本人を捕まえて訊きな」
その舐めた態度に、ヨウジは我慢できなくなり、リファナから奪い取るように男の胸ぐらを掴む。
「お前は幼い少女を誘拐、虐待しようとしたんだ。『雇われただけ』なんて言っても、罪が軽くなるわけじゃないぞ」
「へっ……『黒魔女を』だろ? 聞く人が聞きゃあ、喜ばれるんじゃねえか?」
ヨウジの瞬間湯沸かし器が起動し、拳が振り上がる。
が……その腕をリファナが止めた。
「止めないでくださいよ!」
「お前はこやつらを散々攻撃しただろう。今は状況が違って、それはまた別の暴力になるのでな」
「へっ……そういうことだ。勉強になったな、少年よ」
吐き捨てるように言う男に、ヨウジは『やっぱり殴らせろ』と思う。
が……そう思った瞬間、男の顔が鉄の拳で吹き飛んだ。
「ぐあッ! や、やめッ!」
容赦ないリファナの鉄拳が再び、男の顔をゆがめる。
警察に相当するらしい騎士団の団長が手甲付きの拳で容疑者をボコるのを見て、ヨウジは『現実の警察でもあったかもしれないが、実際見ると超怖ェ』とドン引きする。
「お前はもう殴る必要ない。私にも殴らせろ、ということだ」
「は、はあ……」
スッキリした顔のリファナの元へ、現場検証を終えたらしいユイットが歩み寄る。
「団長、また始末書ですよ」
「始末書を書いて、クズな言動を我慢せんでよいなら、いくらでも書いてやる」
「決まり事って、そういうものではないと思いますが……」
ユイットは深く溜息をつき、姉のための必要書類の枚数をメモっておく。
「しかし……今回手引きした犯人と思われる女、団長に指輪を渡した男、黒魔女の力を狙う者たちは何人構成なんですかね。アーネスさんは今後も狙われるでしょうし……彼女近辺の警備を強化するしかないですね」
「それって……アタシが監視されるみたいで、以前と変わらないってことじゃないの?」
半分は『仕方ない』と思いつつ、アーネスはリファナの顔を見上げる。
「私たちに命じられていた黒魔女監視の任は解かれている。顔を合わせることは多くなるかもしれんが、決して監視しているわけではないと信じてもらいたい」
「別に疑ってないわ。自分の安全のためなんだし……感謝くらいするわよ」
タイプの違う女性ふたりが、なんとなく解り合えたように感じて、ヨウジは少しホッとする。
(ふたりとも、昨日より丸くなったようで……イイ感じじゃないか。そのうちアーネスも、リファナさんに母親みを感じるように……って、こんなことユイットに聞かれたらブッ飛ばされそうだな)
チラとユイットの方を見ると、彼はアーネスにあらためて小さく礼をした。
「終焉の魔女ドレーザを復活させようという思想集団……我々はそう予測しています。その目的は非現実的でも、すでに国を混乱に陥れていることは事実。我々騎士団は今後、あなた達を守るため全力で動きますので、どうかご協力願います」
昨日とはまったく違う対応にアーネスは戸惑いながらも『姉が絡まなければ、そうおかしな奴でもないんだろう』と、少し引きつった笑みを浮かべる。
「お前たちにはもう少し話を聞きたいが……子供を夜中に拘束するわけにはいかん。ユイット、彼女らを無事送り届けるように」
「待って! アタシ……まだ帰らない!」
リファナの言葉を遮るように、アーネスは声を上げた。
「何ですか、私が送って行くのでは不満ですか?」
「そ、そうじゃないけど。えと、その……」
アーネスは頬を赤らめながら、何か訴えかけるような目でヨウジとユイットを交互に見上げる。
その顔に、ヨウジは思いついたままで答えた。
「あ、トイレか? その辺の店で借りれば……」
「ち、違うわよッ! バカッ!!」
お約束のようなデリカシーゼロ返しをするヨウジに、アーネスはついイラッと。
「帰るけど……少しだけ待って欲しいの。ほら、ヨウジ! ちょっとこっち来て!」
「え? な、何だ何だ?」




