シュークリームが盗まれた。
私は高校二年生だ。
名前はAで男。
昨日、密室事件にでくわした。
だが、この事件は表に出ることはないだろう。
私は、この事件を話したくて仕方がなかった。
密室事件なんて、人生で巡り合えるほうがまれだ。
放課後。
私はクラスにいる友人Eに話しかけた。
「おはよう、昨日すごいことがあったんだ。密室事件だ」
Eは男で友人だ。いつもやる気がない。
物事にあまり興味がないだけかもしれないが。
「おはよう、密室事件とは、まるでミステリー小説みたいだな」
「そうなんだ、まさにミステリーだ。犯人がわからないときえたんだ」
「小説なら、密室といえば殺人が定番だけど。とくにさわぎにもなってないということは、殺しではないのかい?」
「ああ、そんな大それたことじゃないんだ。シュークリームがなくなったんだ」
「シュークリームがなくなった。それはたしかに事件だ」
Eは鼻で笑った。
「馬鹿にしないでくれ。たいしたこじゃないが、密室は密室なんだ」
「密室?誰かが食べただけだろう?それで忘れたとか」
「違う、との時の状況が不可解なんだ。聞いてくれよ」
私は、Eに昨日、起きたことを語りだした。
昨日、放課後、私が加入している将棋部にいた。
将棋部は全員で4人。男二人、女二人。
部室には、男、Bと私。
Bは三年生、将棋部の部長だ。頼りになる落ち着いた人だ。
私は先輩であるBと話しながら将棋を指していた。
そこに、ドアが開け荒れてCが入ってきた。
何気なく時計を見たら、16時55分だった。
Cは一年生で女性、後輩だ。控えめな子だ。
「Bさん、Aさん、もしよかったらこれどうぞ」
Cはケーキ屋が入っているようなケースを持っていた。
「どうしんだい、Cさん」
Bは将棋の指す手を止めて、Cに近づいた。
私もCに歩み寄った。
「手作りなんですけど、もしよかったら食べてください」
ケースのなか拳サイズのシュークリームが4つ入っていた。
「シュークリーム?」
「もしかして、Cさんの手作り?」
私の願望はあったらしい。
Cは恥ずかしそうにうなずいた。
「あまり、おいしくないかもしれないですけど」
「そんな、すごく上手にできてるよ」
「おいしそうですね、さっそく食べましょうよ」
「でも、まだDちゃんが来てないです。少し待ちませんか」
「ああ、そうか」
私は肩を落とす。
Cさんと仲のいいDさんは一年生で女子だ。
私は気を取り直して、Bさんと将棋を指そうと思ったが。
その時、電話がなった。
教室にそなえつけられてあるものだ。
Bが電話に出た。
めったに電話などかからないので、誰からだろう。
「Dからだ。職員室に将棋道具が届いたから、人でほしいらしい。みんな来てほしいそうだ」
「ああ、部費でたのんだやつですね」
「わかりました」Cさんがシュークリームが入った箱を閉じて机の上に置いた。
Bさんに続いて私とCさんも教室をでた。
職員室に行こうとするが、そこで声をかけられた。
「Bさん少しいいかな」
となりの囲碁部のGさんが話しかけてきた。
Bさんは「悪い先に行ってくれいか」と私とCさんを職員室にいくよううながした。
「わかりました」
私はCさんと職員室に行った。
職員室に入るとDさんは、将棋盤を指さした。
部費で購入した将棋盤だ。
たしかに女性のDさんでは持つのが大変だ。
私は両手で将棋盤を挟むと持ち上げてみる。
「一人でだいじょうぶ」
Dさんが慌てて手伝おうとする。
「大丈夫ですよ。見た目ほど重くないので」
「そう?じゃあ、私たちは小物を持って行こうかしら」
「うん」Cさんは将棋雑誌を手に取った。
Dさんは駒の入ったケースを持つ。
「ところで、Bさんはどうしたの」
「Bさんなら部室を出た時にGさんに呼び止められてましたよ」
「そうなの」
「まあ、将棋盤も思ったほど重くないんで、Bさんをまたなくても大丈夫でしょう」
「そうね」
私たちはBさんを待つことなく部室に戻った。
Bさんは部室前でGさんにまだ、つかまっていた。
私が将棋盤を持っているのをみるとBさんは慌てて駆け寄ってきた。
「悪い、大丈夫か。職員室で待っていくれればよかったのに」
「大丈夫ですよ、あまり重くないですし」
私は、持っていた将棋盤を上に持ち上げた。
「ああ、悪い。長く話しすぎたな」
GさんがBさんに謝ると隣の教室に入っていった。
Bさんは両手がふさがってる私のかわりに、将棋部のドアを開けた。
「ありがとう、A。重かっただろう」
「全然、大丈夫ですよ」
私は将棋盤を机の上においた。
DさんとCさんも入って、将棋部が全員そろった。
「そうだ、Dさん。Cさんがみんな分のシュークリームを持ってきてくれたんですよ」
「そうなの」
「そんなにたいしたものじゃないけど」
「てづくりですよ。みんなで食べましょう」
私はシュークリームのケースを持ってきて、みんなの前で開けた。
「あれ?3つかない」
「ほんとうだ一つ減ってる」
私はBと顔を合わせた。
「どうしたの」Dが怪訝そうに見てくる
「4つ、あったはずなのに3つかいないんです」
「勘違いじゃない?」
「そんなはずは」
私だけでなくBとCも見たから、見間違いなはずはない。
「Bさん、廊下にいたとき教室から誰かでてきましたか」
「いや、出てきてない」
「それなら、シュークリームを食べた人はまだ教室にいるはず」
「たしかに」
教室で隠れられそうなのは、掃除道具箱。
それとベランダ。
Bが掃除道具箱をあけた、そこには人はいなかった。
「ベランダだ」
だが、ベランダには誰もいなかった。
「もしかして、ベランダから逃げたのか?」
「なるほど」
隣の教室にあるベランダまで、5メートル程、無理そうだ。
それにここは3階。
飛び降りてにげるのは、無理だ。
3階のそとからは、グランド走る陸上部の掛け声が聞こえてきた。
私たち、4人は顔を合わせて教室の中を探し回ったが、シュークリームも犯人も見つけることはできなかった。
現在に戻り。
「E。この密室事件どう思う」
「密室ね、シュークリームが教室のどこに隠されてた可能性は」
「隅々までさがしからないはずだ。部室は狭いし。シュークリームはそこそこ大きいから、見逃すことはないよ」
「そうか」
「なにより、もしシュークリームを私たちの気づかないところに犯人が隠したとしても。教室から出ることができないんだよ」
Eは顎を手で撫でた。
「それで、結局昨日は、シュークリームはどうしたんだ?一人分足りなかったんだろう」
「Cさんが私は自分で作れるから、ぜひ食べてほしいといって。私たち三人でたべたよ」
私は家に帰った後もどこにシュークリームが消えたのか、考えた。
「Eはわかるかどうやって、犯人がにげたのか」
「得意げだな。もしかして、密室のなぞは解けているのか」
「ああ、簡単な事だよ。犯人はベランダから逃げていないということは、ドアの入り口にいたGとBしかありえない」
「ふたりがぐるだっていうのか?」
「そうだ。Gはどうしても、シュークリームが食べたかったんだ。だけど、個数は四つしかない。人数分だ。分けることはできない。だから、Bに協力してもらってGは私たちが職員室に行ってる間に食べたんだ」
「それなら、なぜ1個だけなんだ。ふたりがグルなら、二つ食べないとおかしい」
「おかしくわない。そこわわざと一つだけ食べたんだ。二つなくなれば、犯人が二人いるといってるようなものだ」
私は自身満々に推理を披露した。
「だが、それだとBとGのどちらかが、その日、Cがシュークリームを部室に持ってくるのをしっていたことになる」
「それは、きっと朝に見かけたんじゃないのか」
「だが、A達が職員室に行くことをBとGは予測できんかったはずだ。電話が来たのは、Dから職員室に荷物が届いたと連絡が来たからだ」
電話がかかってこない可能性もあった。
A達いがいの男でを頼るかのせいもある。
そう考える自分の推理に矛盾もあるきがする。
「たしかに、そう指摘されるとBさんがそういう悪さをするようにはおもえないな」
「たしかに、Bさんは面倒みがいい気がよさそうな人だな。女子にもモテそう・・」
そこで、Eは言葉をとめた。
「A、もしかしたらシュークリームを盗んだのが、だれか分かったかもしれない」
「誰なんだ?やっぱり、Gさんか」
「いや、おそらくGさんじゃない。犯人はCさんだ」
「Cさんが。自作自演だっていうのか」
「そうだ。それに一人だけじゃない。Dもおそらく協力者だ」
「Dさんも」
「ふたりがグルじゃないとこの犯行は無理だ。おそらく、事前に打ち合わせての犯行だ」
「電話がかかってきただろ。Cさんが部室にきてすぐに。それは、シュークリームを食べるのを阻止するためだ。職員室に道具が届くのは、後輩が先生から聞かされていた。それを利用した」
「たしかに、職員室に呼ぶのは可能だ」
「電話をしたのは、おそらく17時頃を目安にしたんだろう。すきを作ってシュークリームを隠すためでもある」
「でも、電話を見てる気にっていっても、シュークリームはそこそこ大きいから。ポケットとかにいれたら膨らんでしまうよ」
「シュークリームの中身がきっと空だったんだろう」
「中身が入っていなかったのか?」
「きっと、Cさんが用意したうちの一つはクリームが入っていない。空の状態。つぶして、手の中に隠すこともできる。すきを見てポケットか口にいれてしまえば、ほんの数秒でシュークリームはなくなる」
「どうして、Cさんは自作自演でそんなことをしたんだ」
「Bの気を引くためだろう」
「気を引くため」
「後輩の女子が一人だけ食べられなかったんだ。優しい先輩なら、かわりの食べ物御馳走するとかいう可能性もあるだろ」
「Bさんなら、ありえる」
「きっと、協力したDもBにCが可哀そうだから。なにか、してあげてほしい時なことを助言したのかもしれない」
「二人っきりになる。切っ掛けがほしかったてことか」
「ここから、うまくいくかは、二人しだいだけどな」
Eの視線は窓の外に移った。
放課後に二人で帰っているBさんとCの姿があった。
Cはとても嬉しそうに笑っていた。
おそらく、Eの推理はあたっているのだろう。