・6話
「お兄ちゃんに褒められるのはとても気分が良い。」
毎日学校が終わった頃に希/ホープから届く加護の声を聞きながら望はそう思う。
父の一郎は会社、母の仁恵もパートで夕食までは帰ってこないため、この双子通話(と命名した)が出来るまでは学校の図書館で予習や復習をするのが日課だったが、加護に目覚めてからは流石に学校で誰もいないのに喋っている姿を見られるのはまずいと思い、最近は直ぐに家に帰るようになった。
『こっちは後はもう寝る時間だから良いんだけど、そっちはまだ晩ごはん前なんだろ?のぞみも友達と遊ぶなら毎日じゃなくてもいいぞ?』
「それは大丈夫、友達ともちゃんとも遊んでるよ。学校行事もバッチリ。」
『そっか、ま、オレから呼び掛けないと駄目っぽいからなぁこの双子通話。』
「それはお兄ちゃんの加護だからだろうね。」
『二人が喋ることが?』
「そそ、”言葉”さんによると子供一人に一つ贈られるんでしょ?風魔法じゃないことはわかったんだし、私と話せる魔法がお兄ちゃんがもらった加護だと思うんだよね。」
『うぅ、スゴイ加護だとは思うんだけどのぞみとオレの二人でしかやりとり出来ないのって不便じゃない?もっと村の人や街に住んでる商人と話が出来ればなぁって、考えちゃうんだよね。』
「んーまーそうだね。」
『仁恵かーちゃんや一郎とーちゃんとも話してみたいんだよな。悲しませるつもりはなかったんだって。』
「…大丈夫だよ、二人は今でもお兄ちゃんにのこと話しては感謝してるし、二人の愛情を一身に受けてワタシはめちゃくちゃ元気に育ってるよ。」
『はは、そりゃ良かった。あれから熱でうなされてる声も聞いてないしな。』
「あの時もお兄ちゃんの声を聞いたから次の日には熱下がったんだよ。だからお兄ちゃんの加護は一見地味でもワタシにとっては自慢の魔法よ。」
『///。』
「///。」
『コホン、で、だ、のぞみの加護はなにかわかったのかな?』
「コホン、えーとね、色々実験した結果、多分なんだけど時間を操る魔法だね。」
『なにそれ!?時間を、操る?お日さまをぐるぐる回したり?なにそれ怖い!』
「太陽の運行を操るコトは出来ないけど、例えばワタシがお兄ちゃんと夜の1時から3時まで、つまり2時間双子通話で喋ったとするでしょ、その2時間を無かったコトにして夜の1時に戻るの。」
『にーちゃんにはちょっと難しい。でも無かったことにって、まさかオレと話した内容も全部無かったことになってるの?』
「ううん、喋った内容は覚えてるし、その間に調べ物したり勉強したコトも全部覚えてる。それに時間は戻せるだけで進めることはことは出来ないの。使った分だけ戻せるって感じ。」
『じゃぁいまこうやってオレと喋ってる時間も、話した内容は覚えたままで元の時間に戻せるのか。』
「そういうことだね。最初に気がついたのは朝4時半まで双子通話した時、あと2時間ちょっとしか眠れないのやだなぁまだ0時なら良いのにと思った瞬間に時計の針がヒュンと0時に戻ったの。」
『時計が壊れたんじゃなくて?』
「壊れたんじゃなくてね。一応次の日に新しい電池に交換したけど今も問題なく動いてるよ。」
『電池って雷の力を蓄える結晶のことだったか。』
「よく覚えてたね。」
『村長の家に雷結晶を使うランプがあるんだよ。もっともその結晶が高くて隣においてあるロウソクで明かりを取ってたけどね。』
『しっかし、のぞみの時間を操る加護も初めて聞く魔法だなぁ。』
「そうなんだ?てっきりそっちの世界じゃメジャー…有名なんだと思ってたよ。」
『もしかしたら村の外では使われてるかもしれないけど、火や水、土魔法のように見たり聞いたりすることはなかったなぁ。』
「レア魔法か、お兄ちゃんの地味魔法と同じだね。」
『地味魔法っていうな!でも誰も使ってないのは同じだな。』
「この魔法のお陰でお兄ちゃんと話ずっと喋ってても寝る時間はたっぷりあるし、学校で習う予定の勉強範囲はもう一通り終わらせちゃったんだよね。」
『人より多く勉強できるのか。良いなぁオレもいっぱい農園の仕事を頑張ってかーちゃんに楽させてやりたいよ。』
「ワタシもお兄ちゃんの役に立つ”知識”をもっといっぱい勉強してお手伝いするよ。」
『そうそう”知識”のお陰で家畜の病気も減ってきたんだ!ありがとなのぞみ!』
「役に立ててよかった。これからも何かわからないことがあったらいつでも双子通話で教えてね。こっちの”知識”が使えるならどんどん使って楽していこう。」
『地味魔法で頑張るぞー!!』
「自分でも地味魔法って言っちゃうんだ。」
『あ、』