・5話
ホープと望が11歳の誕生日を迎えた頃から加護(風魔法かもしれない)の力は日増しに強くなり、最初は「おはよう」や「おやすみ」といった簡単なやりとりをしていた望は、いつしかホープへ日本の勉強を教える時間へとステップアップさせていった。
「おにいちゃん。きょうはいい天気ですね。」
『おににちゃん。キョうはいいてんきです、ね。』
「いもうとの名前はのぞみです。」
『いもうの…のぞみ!』
「ちょっとみじかくしたー。」
『・・・・めぐみは・・ってない・・・。』いいだろーめぐみはまちがってないんだから
「まーいっか。つぎは、隣の客はよく柿食う客だ。」
『となりのきゃっきゅは… ・・・・??』それなに??
「んーと早口言葉。あと寿限無とかいま学校で流行ってるの。」
『くちがおかしくなる!』
「でもだいぶ言葉が覚えてきたね。」
『いったろ!にーちゃんはできる子だって!』
「前に教えたかけ算九九は覚えてる?」
『・・・・、・・・・・・・。』まだです、調子乗りました。
「素直でよろしい。」
『・・・・・・・・・・・・・・、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。』日本って勉強が好きなんだなぁ、こっちは文字が書けると村一番の秀才扱いされるんだぜ。
「義務教育って9年間はみっちり勉強しなきゃ駄目なんだって。」
『・・・?!・・・・・・・・・・?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?』9年も?!いったいいつ寝るんだよ?村一番どころか街の区長になれるんじゃないのか?
「どうだろう、ま、お兄ちゃんはどんどんえらくなって農園を大きくしないとね。」
『・・!・・・・!・・・・・・・・・・・・・・・・・!!』おう!任せとけ!かーちゃんの為にも頑張ってやるぜぇ!!
『・・・、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?』ところで、なんでのぞみはこっちの言葉で喋ってんの?
「なんでって、覚えたからだよ?」
『うそーん!』うそーん!
「お兄ちゃんと話をしてるだけだからむずかしい言葉はまだわからないけどね。」
『・・・・・・のぞみ・、。。。。。。。。。。…。』まだ11歳なのにのぞみが、妹が区長になっちゃう…。
「じゃも~っと頑張っちゃおっと♪」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・、・・・・・・・・!』にーちゃんもくくをがんばっておぼえるから、おいていかないで!
「置いていかないよ、一緒に頑張ろ。」
『ありがとうございます。』
「なぜ敬語?」
『なんとなくね…。』
元々一卵性双生児として生を受けた二人だからか、九九に四苦八苦していたホープであったが、日本語を操れるようになる頃には四則計算もマスターしていったのであった。
『四苦八苦72 なんっつってな!』
「…そういうのは教えなくても使えるようになるんだね。」
『にーちゃんは出来る子だからな!』
「はいはい。」