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・2話

 森田望もりたのぞみは小学4年生の夏休みに両親から双子の兄の話を聞かされた。


 一卵性双生児の兄として生まれるはずだったのぞむは、母のお腹の中から忽然と消えてしまったという。医学的には「バニシングツイン現象」と呼ばれ10~15%の確率で起きると言われている。


 母の仁恵は元々身体が細く、子供を産めるかどうかを心配されていたのだが、不幸中の幸いと言うべきか望は3000gの健康優良児としてこの世に生を受けた。いま思えば希が望と仁恵のコトを助けてくれたんじゃないかと、一郎も仁恵も涙ぐみながら話をしてくれた。


 『弟だったかも?』と思わないでもなかったが、密かに兄が欲しかった望はそれ以来「お兄ちゃんが救ってくれた命」を大事にしようと心に誓った。




 望が小学5年生になった冬休みの時、日本列島の隅々でインフルエンザが猛威を振るった。教室という閉鎖空間では感染しないほうが難しい、望も含め20人のクラスメイトが罹ってしまい学級閉鎖になったほどだった。


 三日間40℃近い熱にうなされるた望は朦朧とする意識の中で不思議な声を聞いた。まだ声変わりをしていない男の子が一生懸命に望に呼びかけている。日本語ではない、望が聴いたことがない言葉だった。


『のぞみ、!!!!!!!!!!』


『!!!!!!!!!!!、のぞみ!!!!!!!!!!!!!!!、!!!!!!!!!!!!!!』


『!!!のぞみ、!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!。!!!!!!!!!!!』



「ありがとう…」


 言葉はわからないながらも自分を励ましてくれているようなその男の子に、望は弱々しくお礼を言いながら再び眠りについた。



 その日の晩、あれだけ高かった望の熱は37度まで下がり、母が作ってくれた玉子粥も少し食べられるようになった。会社を休んで一緒に看病していた父の一郎もホッとしたのか次の日に少し熱を出し、午前中に病院へ行くことになったがこちらは直ぐに治まった。




 望は不思議の声のコトを両親には話さなかった。

 

 元々隠し事をするような子ではなかったが、熱にうなされながら見た夢だったし、それを話して別の理由で入院なんてことになるかもしれないと、子供らしからぬ理由で自分の心の中だけに留めることにしたのだった。






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