・エピローグ[”言葉”より皆様へ。]
[”言葉”と申します。]
[以前、私が希くんを異世界:エクスペータへ転生させた理由は、彼が巨大な生命力のを持つためとお話しましたが、なぜ異世界なのか?は詳しく説明していませんでした。]
[まず、エクスペータの世界は地球でいう所の白亜紀やジュラ紀といった生命力が高い生物しか生きられない若い世界です。世界自体が荒削りなので生きていく生物たちも荒削りに耐えられる生命力を有しています。あと人間の皆さんには魔法という加護を授けています。]
[この魔法も実は生命力を使って発現していまして、とにかく有り余る生命力を使って生き抜かねばならない、それがエクスペータ世界の理です。]
[少し主題から外れますが、誰にでも等しく与えられる加護/魔法を持って生まれるにも関わらず、ボレンティールの村をはじめエクスペータの世界に住む人々の大半は強い魔法が使えません。]
[それは人それぞれが持つ生命力の強さや効率化が等しくないため、魔法を明確を発現をするためには先天的な素質と後天的な訓練の両方が必要となるからです。]
[生まれて直ぐに指先から炎の矢を飛ばすことが出来る火の魔法を操る子供もいれば、いくら訓練しても火打ち石から飛び出す火花を発現するのが精一杯な大人など様々で、もちろん後者の方が圧倒的に多いのです。]
[魔法使い同士の手繋ぎによる魔力(生命力)の循環も長年の訓練と仲間の連帯感によって発現する大規模魔法です。そのため一般的な村人たちは肉体労働(こちらも生命力が資本)で農作業を行い、加護の魔法に頼ることも訓練することも稀となります。]
[話を戻しまして、地球も昔は生命力が高くなければ生きられない世界でしたが、次第に小さな生命力でも問題なく生きられる世界に変質していきました。]
[ちょっとオカルト的なお話になりますが「人間の脳は30%しか使われず、残り70%は眠ったままになっている」と聞いたことがありませんか?それは本当のことでして、強い生命力を持っていた頃の名残です。]
[希くんは、そんな強い生命力があった頃の人類に近しい存在として生まれました。先祖返りと言ってもいいでしょう。あのまま胎内で大きくなると彼の生命力を維持するだけで仁恵くんの母体はおろか、望くんの生命力も奪ってしまうため、エクスペータの世界への異世界転生という処置をとりました。]
[それと、今までとんとん拍子に進んだため、ちょっとした森田兄妹の勘違いを訂正するタイミングがありませんでした。こちらも説明したいと思います。お二人に与えた加護です。]
[希くんの加護は遠く離れた望くんと話せる魔法ではありません。望くんに生命力を分け与える魔法、彼の有り余る生命力を少しずつ送るコトで、彼女の生命力を安定させるつもりでした。]
[声が伝わっていたのは一卵性双生児のお二人が持つ元々の能力です。普段は使われてない脳の機能の一部だと思ってください。]
[ところが本来は少しずつ生命力を送るはずでしたが、希くんは生命力の圧が高すぎてどばーっと届いてしまうのです。どばーっとです。それはもう壊れた蛇口のようにどばーっとです。これでは受ける側の望くんの身体が参ってしまいます。]
[そこで望くんには希くんから貰った生命力を使って、実時間から隔離された時間軸空間を作り出す加護を与えました。時間軸空間内で消費した時間は兄の希くんから貰った生命力で賄っているので、望くんの実時間や体調には影響がありません。]
[望くんは時間を操る魔法と認識していましたが、彼女が作る時間軸空間でも時間は普通に流れてます。時間軸空間の外、つまり通常の時間軸は止まっているようなものなので、元の時間軸に戻った時に望くんが”時間を巻き戻した”と感じるのも間違いではありません。]
[まさかアレ程の知識欲の権化になるとは予想が出来ませんでしたが、希くんが脳の30%を使える一般人だとしたら、望くんは脳の90%以上を使える地球の情報社会の申し子でした。]
[彼女もある意味若い世界で生きるための素質を備えていました。しかし、あくまで別々の世界で無事に生まれた結果であり、お二人共元気に育ってくれて本当に良かったと、私もホッと胸を撫で下ろしています。]
[以上が森田家の兄妹の勘違いによる加護の誤認識と、その用法でした。]