・11話
11月11日、一卵性双生児の希と望が森田家で生まれた。
森田一郎と仁恵はホープこと希を強く抱きしめた。
希もまた両親を強く抱きしめる。
兄はホープとしての生も家族ももちろん愛しているが、言葉をかわすことなく別れる事になった両親に対して、ありったけの思いを込めて、これまでの事やこれからの事を話し続けた。
異世界間トンネル『ゲート』の動作が安定化した暁にはホープの母グレースを日本に連れてきたいし、一郎や仁恵にもボレンティール村を見に来てもらいたい。住む世界が違って家も人々の笑顔や生活は同じだということを日本や外の世界に知ってほしい。もちろん二人も賛成である。
先ずは異世界間国交の発案者でもある望の外交日程や安全保障等のすり合わせを行い、1年後には一般人の渡航も解禁される予定である。
森田家の望さんは大変有能な首相なのであった。
それはまだ望がNSCに努めている頃である。
政界へ出ると決めたその日に初めて希が生きていることを両親へ打ち明けた。
兄が異世界で元気に生まれ育っていること、双子通話でやり取りしていること、そして悲しい思いをさせて済まないと思っていることを希本人が話したいが今はまだ難しいことなど。
一郎も仁恵も涙を流しながら喜び、そして望が計画している異世界間トンネル計画を応援してくれた。
「ワタシの”知識”をフル活用して首相になるわ!」
『首相って、こっちの王様みたいなもん?』
「だいたいそう。」
『だいたいそうって、簡単に言うなぁ。』
「大丈夫!政治家の表も裏も”知識”とコネはバッチリ仕入れちゃってるからね!」
『大丈夫かなぁ日本、こんな妹が首相になっちゃっても…。』
「たーのしくなってきたーーー!!」
『の、のぞみさんがおかしくなった?!』
常に有言実行を体現する森田望首相は、国民から絶大な支持を受け異世界間トンネルと異世界間国交実現へ導いたのであった。
おしまい。