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・1話

 『…ぞみ!のぞみ! 起きてくれよ! にーちゃんめちゃくちゃ困ってるんだ!!』


 昨日は遅くまで受験勉強に励んでいたため寝ついて1時間も経ってないめぐみは半覚醒のまま目覚まし時計を探す。時計の針は深夜3時を少しまわったところであった。



 『のぞみ!起きたか!』


 「こっちはまだ深夜3時だよ…」


 『へー そうなんだ、こっちはさっき午後の鐘が一つなった頃合いで良い天気だよ。』


 「洗濯が捗るね。」


 『洗濯は置いといて、いまさっき街の領主様が王都へ呼び出されてな、にーちゃんも一緒に王都まで来いって言われちゃって、』


 「良かったね。」


 『全然良くないよ!だって最初に村に井戸掘ったのも、街に風車を建てたのも、少しでも生活が良くなればってだけで、まさか国家事業化されるとは思わなかったんだ。』


 「日本では”とんとん拍子”て言うんだよ。」


 『とんとん拍子?』


 「そう、良いことが続けて起きるコト。」


 『とんとん拍子か、覚えておこう。』


 「うん、それじゃ王都で頑張ってね、お兄ちゃん。」


 『ちょーーっと待ったー!!』


 「まだなにかあるの?」


 『あるんだよ!おおありだよ!!国家事業って言われてもにーちゃんなんにも出来ないよ!元々のぞみから教えてもらった通りに井戸を掘る場所を探したり、風車だってなんで回って居るのかすらわからないのにさぁ?図面だけ領主様に渡して村へ帰ろうとしたら工事が終わるまでは居てくれ言われて、毎日知ってるふりするの大変だったんだ!のぞみにも話したろ、魔法じゃだめなのかって魔法使い達が苦情と風魔法ぶっ放して大騒ぎになったって!この地方都市ですらそんな感じなのに、王都で同じことされたら命がいくつあっても足りないよ!行きたくないんだ…』


 「大丈夫、わからなかったらまた私が調べてあげるから。魔法はわかんないけど頑張って避けて。」


 『軽く言うなよ、戦場で火柱に追いかけられたり、土壁で退路塞がれたりしたのをまた思い出したよ。』


 「トラウマってやつだね。心を強く持って立ち向かってね。」


 『とらうま…またオレのわからない日本語つかって…』


 「日本語じゃないけどね。ま、難しく考えなくても大丈夫。ワタシと”言葉”さんがついてるって。」


 『お、おう、そうだな、コレでも一応加護持ちだしな。…いつも悪いな、にーちゃんもっとしっかりしないといけないのはわかってるんだけど、めぐみに教えてもらう”知識”ってヤツがオレの周りじゃ全然使われてなくてな、説明しようにもオレもわかんないからどうしても不安になっちゃうんだよ…。』


 「うん、こっちじゃ当たり前でもそっちじゃ世界初なことしちゃったからね。でもグレースお母さんに美味しいパンを食べてもらいたいって言ったのはお兄ちゃんだし、お母さん喜んだんでしょ?だったらもっと胸を張って堂々していればお母さんも村の皆さんももっと喜んでくれるよ。」


『まさかこんな事になるなんて思ってなかったからなぁ… 村に戻りたい。』


「国家事業と言っても国がそんなに大きくないんだし、すぐ戻れると思うよ。」



時計を見ると4時30分。随分と長話をしてしまった。


「それじゃお兄ちゃん、ワタシ明日早いからもう寝るね。こっちも人生が掛かった大事な日なのよ。」


『あ、例の”受験”ってやつか。すまんなそんな大事な日に。』


「大丈夫!いつも通りに挑めば合格間違いなしだからね。魔法もぶっ放されないし。」


『そりゃそうだ、魔法がない世界なんて考えられないけど、合格祈ってるよ。』


「ありがと、お兄ちゃん。」


『おう!にーちゃんも頑張ってくる! …でも解らないことがあったらまた教えてな?』


「はーい。じゃおやすみなさい。」


『おやすみ、のぞみ。』




 望は 小さくあくびをして掛け布団を被りなおしながらちらりと時間を確認する。


 明日の朝6時にセットされている目覚まし時計は3時を少しまわったところであった。







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