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第42話 妖精王の宴

 地獄絵図の始まりだった。


 梟が夜空にはばたく。いや、浮いている。


(あはっ、あははは! 今宵の宴の始まりよっ!)


 妖精王の桃ちゃんの頭上には人魂がゆらゆらと揺れていた。その火の玉から、次々と糸のような火の矢が飛び出し、侵入者の眉間に一本ずつ突き刺さっていく。


(きゃははははっ)


 梟だから無表情だが、人型であれば、その顔は狂気に歪んでいたことだろう。


 夜の屋敷は静まり返っている。その静寂のなか、ドサリ、ドサリと人の倒れる音だけが聞こえていた。


 侵入者たちは最初のうちは、自分たちが一人ずつ殺されていることに気づかなかった。声も出さずに倒れていくため、全く気づけないでいたのだ。ところが、隣にいた人の気配がいつの間にかなくなっていることに徐々に気づきだし、振り返ってみて驚いた。


 かすかな星明りでようやく確認できたのだが、屋敷内に無数の人影が横たわっていたのだ。


 何とはなしに上空を見上げた侵入者の一人が声を上げた。


「なんだあれは?」


 上空10メートルほどのところに青白く燃えている人魂のようなものが見える。その火の球から、何本かの糸のようなものが飛び出している。その糸が額に突き刺さり、また1人命を落とした。


 犠牲者が増えていくうちに、ようやく大量殺戮が現在進行中であることに侵入者たちは気づき、パニックになった。


「う、うわあああ」


 各々が悲鳴を上げ、屋敷から逃げ出そうと門に向かって走り出した。しかし、彼らも、一人ずつ仕留められていった。


(あら? もう終わり? ん-でもいいか、一仕事したって感じよね。さて、ジルドたち、もう終わったかしら。さすがにしている最中は私も遠慮するわよ)


 梟は寝室の方に音も立てずに飛んでいった。桃ちゃん専用のふかふかベッドが寝室と少し離れたメルヘンチックな部屋に用意されているのだ。梟は心地よい眠りについた。


 闇に包まれたリッチモンド邸内には、額に焦げ跡のある遺体が200体横たわっていた。


***


 早朝、セバスチャンがいつものように使用人宿舎から外に出て、屋敷の見回りから始めようとして、腰を抜かしてしまった。


 至る所に黒装束の人が倒れている。ものすごい数だ。


 セバスチャンはよろよろと立ち上がり、一番近い人に近づいてみると、死んでしまっているようだ。よく顔を見ると、植木職人のジョージだった。


 あの噂は本当だったのか。グレース様から妖精がいなくなったら、仕返しをする計画があると小耳に挟んだことがある。


 ジョージは愚か者だ。グレース様は決して理不尽な方ではない。きっちりと仕事をしているものには、正当な評価をしてくださるのだ。私の評価は低いが、きっと私の気づかない理由があると思っている。


 グレース様が目を覚まされたようだ。桃様が廊下を浮かんでグレース様の寝室に移動しているのが、窓越しに見えた。契りを結んでも妖精が消えないのはおかしなことなのだが、グレース様だったらそういうのもありだろうと、なぜかセバスチャンにはしっくりと来てしまった。


 エカテリーナ様もお目覚めのようだ。離れの寝室前に待機していた侍女が呼ばれて寝室に入っていくのが見えた。


 屋敷中の使用人たちが動き始めたようだ。そして、外に出たものが次々に悲鳴を上げた。


 リッチモンド家の使用人たちの長い長い一日が始まった。

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