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第19話 王家と教会

 王家と教会は共通の問題を抱えていた。財政難である。


 そして、原因も同じだった。簡単に言ってしまうと、組織の腐敗である。


 税金が王の手に入る前に役人たちが不正に税金をかすめ取ってしまう。また、教会の場合はお布施や寄附が神父や修道女に着服されてしまう。


 王家は直轄領からの税収と各貴族からの国家への納付金が収入源だが、直轄領の税収が年々減っている。税務官の報告によると、税収の大部分を支える農民の人口が年々減少しており、生産量も減少しているという。だが、実際は逆のはずだ。


 明らかに税務官が虚偽の報告書を作成しているのだが、それを証明する計算に長けた役人が少ない。また、仮にいたとしてもすぐに買収されてしまう。


 まさにずぶずぶに腐っているのだ。


 そのため、ありとあらゆる手段で財政の立て直しを図ったが、何をやってもうまくいかなかった。


 遂にブチ切れた国王は


「税務官を全員処刑せよ」


という考えられない策を敢行しようとしたが、さすがに家臣が次々に諫言を呈し、何とか思いとどまらせた。


 すると今度は、


「貴族を滅ぼして所領を増やせ」


という案を出してきた。


 追い詰められた王家の家臣たちは、今度は反対しなかった。


 とはいえ、いきなり武力制圧しては、一つ二つは上手くいくかもしれないが、貴族の抵抗は強くなる一方だし、そもそも兵が持たない。そこで、最初は婚姻や暗殺などの策略によって、貴族の領地を併合していき、十分に力を蓄えてから、一気に武力で制圧するという作戦をとることにした。


 作戦に先立ち、人員や武力を借りられるよう教会にも接近した。見返りは国家から教会への援助金の支給である。


 最初のターゲットはリッチモンド家だった。第一継承者から第四継承者までが全て女性であること、広大で肥沃な領土を持つこと、農業人口も商業人口も多いこと、など条件が揃いすぎるほど揃っていた。


 作戦の立案者は宰相のマクベスだった。途中までは色々と障害はあったものの概ねシナリオ通りだったのだが、もうあと少しというところで、大きな問題が発生した。


 マクベスは報告官に聞き直した。


「リチャードがリッチモンド家のグレース嬢に殺された?」


 報告官によると、リッチモンド家の使用人が空から降りて来て、追放されて山にいるはずのグレースが、リチャードとエドワード王子に会いたいと申し入れたそうだ。


 空から降りて来たというのが馬鹿げているが、外に出て来たリチャードとエドワードが浮き上がって上空の方に消えてしまい、その後、リチャードだけ落ちて来て、死んでしまったという。


「にわかには信じられない話だが、本当にグレース嬢だったのか?」


 マクベスは再び報告官に確認した。


「リチャード様の死亡現場での目撃情報はありませんが、その数分後、側妃様の寝殿で、エドワード様と側妃様とグレース嬢らしき女性の三名が、空に飛んで行くところを弓兵が目撃しています」


「空を飛ぶ魔法か? 重力魔法か。グレース嬢の精霊の線が濃厚だな。リッチモンド公爵邸に直ぐに向かうぞ。兵を出来る限り集めろ」


 マクベスは控えていた衛兵隊長に指示を出した。そして、自らもリッチモンド邸に向かう準備を始めた。

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