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第17話 王子との別れ

「殿下、どちらに降ろしましょうか」


 そもそもエドワード親子は行く当てがあるのだろうか。


「頼るところがなくてな」


 やはり、そういうことか。ここははっきりとさせておくべきだ。もうエドワードと関わりを持ちたくはなかった。


「申し訳ないですが、私を頼らないで下さいね」


「分かっているつもりだ」


 エドワードは寂しそうに言った。


 エドワードの私への気持ちをシルバから教えられてから、エドワードの挙動を観察すると、確かに私に未練たらたらだ。もうこの男にはさっさとテイルに押し付けてしまおう。私とシルバの時間をこれ以上取らないで欲しいし、私を王妃にする動きをシルバにされたくはない。


「とりあえず婚約者のところに行かれますか? 私が地下牢に閉じ込めてますけど」


「地下牢にか!?」


「ええ、仕返しです」


「今日はグレースの知らない面ばかり見させられる。私はグレースのことが全く分かっていなかったのか」


 また未練たらたら発言だ。絶望の底にいる私に婚約破棄を言い渡し、追放されるのを黙認する人をどう好きになれというのだ。私を助けるためだったとしたら、いっしょに立ち向かう道を選択すべきだったのだ。好きならば、絶対に離してはダメなのだ。


「敵の目を欺くため、殿下も地下牢に監禁されますか? さすがに地下牢に監禁されているとは敵も思わないはずです。もちろんアニーとテイルとは違う特別待遇に致します」


 地下牢には隠し部屋がある。あそこなら、そこそこの暮らしが出来るし、まず見つからないだろう。


「そうだな、逃亡の身ゆえに贅沢も言ってられないな。お母様、大丈夫でしょうか?」


「私はどこでも大丈夫よ」


 エドワードの母は元は庶民で、逆境には強いはずだ。控え目で優しい方で、私にもずっと優しかった。だから、危険を冒してまでも救助したのだ。


 ふとマークが視界に入った。この歯抜け男は、それなりに仕事をしてくれたから、殺さずにおいてやるか。エカテリーナへの伝言役にもうってつけだ。


「マーク、お前も地下牢よ。理由は秘密を知りすぎたからよ。牢が嫌ならここから落とすけど、どっちがいい?」


「牢でお願いひます」


 屋敷に着いて、私はマークを牢に入れた後、エドワード親子を地下牢の隠し部屋に案内した。


「マークが殿下の守衛に私の名を告げていますので、国王軍はいずれ私を追ってくると思います。ここではリッチモンド家を巻き込んでしまいますので、私とシルバはこれから山に戻って、迎え撃ちます。シルバの力はご覧になった通りです。ご心配は無用です」


「分かった。グレース、恩に着る」


(今度こそ、あなたとはお別れよ、エドワード)


 私はメイド数名にエドワード親子をマークの母と弟だと紹介し、箝口令を敷いた上で、客分待遇を指示してから、屋敷を出た。


 山に戻るときに、また人型シルバと会える。


 私の頭はそのことでいっぱいだったのだが、そんなに何度も妖精界を訪れてはいけないらしい。そのため、普通に馬車で帰ることになったが、シルバとの二人旅はとても楽しかった。

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