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第13話 王宮襲撃

 私はマークを連れて王宮の上空に来ていた。


「マーク、リチャードは何処にいるの?」


「し、知りません」


「あなた、役立たずなの? だったら、ここで落としてお終いよ?」


「お、お役に立ちます。恐らく第一王子様のところだと思います」


「エドワードのところ? リチャードは子爵よね。後ろ盾がいると思ったけどエドワードなの?」


 実はエドワードがなぜ私と婚約解消したのか、理由がよく分からないでいた。私の母は現王の腹違いの姉だ。したがって、エドワードは従兄弟に当たる。幼少時からお互いによく知っていて、相性も悪くはなかった。


 テイルの父は伯爵で、血統は私の方が圧倒的にいい。エドワードの母は身分が低く、それで随分前から是非とも私を婚約者にと向こうから懇願されていたのだ。私の両親はエドワードとの婚約には消極的で、国王陛下から直々に申し入れがあり、しぶしぶ承諾したのだ。


 テイルのことが好きなのだろうか? 子供の不注意の失火が、国王が決めた婚約を解消するほどの過ちなのだろうか? 婚約解消のためだけに両親を殺したのか?


『グレース、そのエドワードって奴に吐かせればいいんだよ』


 私はどうやら随分と考え込んでいたらしい。シルバの肉球で頬をツンツンされていた。シルバ、可愛すぎる。


「そうね。エドワードに聞けばいいか。エドワードの宮殿はあそこよ」


 私は王宮の東の一角を指差した。何度も訪問したことがある。


『こいつはどうするんだ?』


「マークは先触れの使者になってもらうわ。さあ、グレースが来たと伝えて来て」


「へ? 私がですか? 身分の低い私など、通してくれませんよ」


「いいから、頑張って来なさいっ」


 シルバがマークを宮殿の守衛の前に下ろした。突然上空から降りて来たマークを守衛たちが取り囲んでいる。マークは私たちの方を指差そうとしているが、私たちが見えないので、狼狽えている。


 あっ、マークが守衛に殴られている。


『何だよあいつ、ボッコボッコにやられてるじゃないか』


「ほんと、使えないわね。エドワードとリチャードをおびき出してくれるかと思ったのに」


 しばらくマークは殴られていたが、後ろ手を縛られて、跪かされている。


「出て来たわ。リチャードよ。マークと話しているようね」


 リチャードはマークから説明を受けたのだろう、上を向いて私たちを探しているようだが、見つけられないので、マークを蹴飛ばしている。


「シルバ、マークをここまで戻してくれる?」


『いいぜ。グレース、お前は面白いこと考えるなあ。まるでマークを餌にした魚釣りみたいだ』


 突然マークが空に上昇したため、リチャードが驚いている。エドワードを連れ出して来てくれるといいのだが。


 マークが私たちの前まで上昇して来た。歯が何本か折れ、顔が膨れていて、酷いあり様だ。


「マーク、随分と男前になったじゃない」


「お、お嬢様、もう、ゆるひてくらさい」


「そうね、肘鉄の罪はこれで許してあげるわ」


「あいがとうごさひます」


「で、リチャードには伝えたの?」


「はひ、でも、信じてくれまへんでした」


「そうでも、ないみたいよ」


 リチャードがエドワードを連れて外に出て来た。二人で上空を見ている。


『ははは、飛んで火に入る夏の虫だな。グレース、ここまで上昇させるぜ』


 二人がジタバタしながら上昇して来る。守衛たちが慌てふためいているのが見える。


 エドワードとリチャードが私たちの前まで上がって来た。上空40メートルぐらいの位置だ。


「殿下、リチャードご無沙汰しております」


 私は丁寧に頭を下げた。

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