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第1話 悪夢の始まり

 私はグレース・リッチモンド。300年続く貴族の名門、リッチモンド公爵家の一人娘だ。


 一年前の15歳のときに第一王子のエドワードと婚約した。


 エドワードとは従兄妹同士。相性は悪くはないが、好きかというと微妙だ。


 でも、エドワードの人柄も容姿も悪くはないし、私はこのまま将来は王妃になるのだと思っていた。


 ただ、結婚というものは、こんな感じではなく、激しく愛し合う二人を周囲も祝福し、ようやく手にすることのできる極上品だと心が叫んでいるような気がする。


(このまま彼と結婚していいのかしら……)


 自分の恵まれた人生に疑問を持った罰が当たったのかもしれない。悲劇は突然舞い降りてきた。


 私は熟睡しているところをローズにたたき起こされた。ローズは私の教育係だ。


「お嬢様、大変です! 火事です。母屋が燃えています!」


 私の寝室は離れにある。私はしばらく寝ぼけていたが、状況がのみ込めてくると、完全に目を覚ました。すぐにガウンを羽織って、ローズと一緒に外に出た。


 同じ離れに住んでいる出戻りの叔母エカテリーナと、彼女の娘二人も外に出ていた。上の娘のアニーは二つ上、下の娘のテイルは同い年で、私と仲のいい従姉だ。


 母屋は真っ赤に燃えていた。執事のセバスチャンをはじめ、使用人たちが必死に消火活動をしているが、火の勢いはまったく衰えない。


「お父様とお母様はどこにいるのっ!?」


 私がセバスチャンにたずねると、寝室にいるはずだという。


「寝室って、もう火の海じゃないの……」


 明け方になってようやく火は消えたが、母屋は全焼してしまった。


 そして、焼け跡から父と母と思われる焼死体が発見された。


 私は焼け落ちた母屋の前でいつまでも呆然としていた。夢なら覚めてほしい。昨日まで元気だった両親があっという間に私の前からいなくなってしまうなんて。


 しかし、私にとっての悪夢はこれからが本番だった。

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