目覚めの夜
「ようやく見つけた……!」
高揚感を帯びているように思えるその声はどこか聞き覚えがあるように感じた。
ドカアァァァァン!!!
騒々しい。一体何が起こっているのだろうか。そう思い、ふと瞼を開く。思ったように目が開かない。まるでゴーグル無しで海に潜ったような目の痛みが走った。やっとの思いで目を開くと、目の前には男が一人立っていた。男は僕が目を開いたことに何故か歓喜していた。声だけでなく、僕はその男の姿にもどこか懐かしさを感じていた。
「〜〜〜」
「そうでも無いよ。君には……〜〜〜」
何やら男以外にも人はいるようだが、話している内容や話し相手までは確認できない。
自分が今どういう状況なのか分からないまま辺りを見渡すと周りにある机や椅子がひどく小さく見えた。そこで足元に目をやる。僕は経験のない光景に驚いた。どうやら僕は浮いているらしい。足元に地面はなく、浮遊感がある。
バリーーーン!!!!!!!
驚く暇もなく突然浮遊感が消えた。僕が入っていた何かが破壊されたようだ。そして僕の身体は地面に叩きつけられそうになった。僕は咄嗟に受身を取ろうとするが、ここでもまた身体が言うことを聞かない。このままではミンチにされてしまう。あれこれ策を模索していると先程の男が受け止めてくれたのか、僕はミンチにならずに済んだ。しかし落ちた衝撃か僕は気を失った……。
「これからどうする気だ。」
「どうもこうもないよ。僕は、成すべきことを成すだけさ。君も。」
「なに?」
「崩落する前に早く脱出した方がいいよ。」
男は少年を抱えながら少年の囚われていた地下を抜け、停めていた車に向かう。
「八重〜!八重ちゃーん!!」
男が呼ぶ先にはタバコを吸う女が車の運転席に乗車していた。
「はいはい、お疲れ様〜蛇でもでた?さっ、帰るよ〜。」
バンッッッ!!
男は勢いよく助手席の扉を開ける。
「は!?!それ、、それって…!!!」
「いたんだよ!八重!ようやく見つけたんだ!!!!!」
女が困惑するのを他所に男はそそくさと少年を車に乗せようとする。
「ほら早く!八重も手伝ってよ!!!」
「え、あ!いや!!助手席なんかに乗るわけないじゃん!後ろ後ろ!!!」
2人の姿は傍から見れば二人組の強盗そのものである。
「よしっ!早く!!八重!早く出して!!!」
「わ、わかってるわよ!!!!」
車は女の同様と共に急発進する。
「こいつ、ずっと眠ってたくせにおっっもかった〜!!全く、どんな生活してたんだよ。」
憎まれ口を叩きながらもその顔は男が女に見せる7年振りの笑顔であった。
「ほんと、よく見つけたわね。ていうか良く連れ出せたわね。」
「何言ってんの?八重は僕が口だけの男だと思ってたわけ?」
「いや、普通に考えて7年も生死不明の友人が見つかると思わないじゃない。」
「え〜?八重って晴人に対してその程度の想いなんだ。」
「車から突き飛ばすわよ。」
「はははー。冗談が上手いな〜八重ちゃんは〜。」
そんな会話をしていると背後に不審に尾行してくる車が現れた。
「追手?」
「だろうね。ちょっと会わないうちに人気者になったんだね。」
「ていうか晴人なのよね?その、子。」
「間違いないよ。」
「でも、その姿…」
「僕は絶対に晴人を見間違えたりしない。」
そうこうしているうちに到着地点が見えてきた。一行の車は目的地である二条城へと向かった。