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身の振り方

「フローラ様は、この家に留まりたいと考えですか? あの結婚は本当に望まれたものですか?」


「結婚の話も聞いているのですね……」

フローラはため息をつく。


新たな婚約も形だけのもので、フローラが好意ももたない相手だ。


「婚約届は王家を通しますので。あなたがミューズ様の友人であるからこそ、精査されています。本当にあなたの意志でサインされたのでしょうか?」


「父からの勧めもあり、私の意志でサインをしました。それは本当です。学校を卒業後にはあちらの家に嫁ぐようになります。その為の勉強が忙しく、放課後にミューズ様達と話す時間もなくなってしまいました」


「それは俺を庇うためですか?」

ライカの言葉に一瞬息が止まる。


「あなたを誑かしたとかで、咎を求める陳述書を王家に提出すると言われたのではないですか? それを止めさせたくばこの政略結婚を受けろと。違いますか?」


「どうやってそんな事をお知りになるのですか?」

恐ろしい程情報が正確で早い。


「うちには優秀な諜報員がおりますので、全てわかります」

マオは物の記憶を見る魔法が使える。


事件や事故、重大な場面で証拠となるものがない時などに、過去の記憶を見ることができる。


真実を知るために開発された魔法だが、王家の秘術としてその魔法を使用するには王族の許可が必要だ。


ティタンからの許しを得た為マオがここに忍び込んで、その魔法を使用し、フローラとダンテのやり取りが分かったのだ。


「俺があなたに剣を教えたこと、そして令嬢として他家に嫁ぐ以外の生き方を提示したのは、これからの女性の自由な生き方を尊重するためです。これは王太子であるエリック様の意向もあるため、俺が咎められることはありません」


「どういう事?」

ライカの言う意味がよくわからない。


「フローラ様。貴族の女性が騎士を目指すことも、冒険者を目指すことも、剣を振るう事も、どれも悪い事ではありません。貴族として領民を守る義務はありますが、ローズマリー侯爵家には跡継ぎもおり、政略結婚が必要なほど貧窮はしていない。なのに何故愛のない結婚をする必要があるのか、あなたがそこまですることはないはずなのに」

ライカはだいぶ苛立っていた。


「王家は女性騎士を求めております。なので、もっとその体制を整えたいと願っているのですが、なかなか昔からの貴族は納得してくれない。本人達が望めば王家は後押しします。冒険者としての活躍もサポートします、国の為に尽くしてくれることに変わりはありませんので」

そのような新体制の話をされ、フローラは困惑もある。


「ですが、父を裏切ることは「先にあなたを裏切ったのはローズマリー侯爵では?」

ライカが噛みつくように言い放つ。


「婚約破棄どころか解消で了承し、示談金もあなたへの慰めもない。その後の人生のフォローが愛人のいる家に嫁入り? どう考えてもフローラ様を想っているとは思えない」

舌打ちが聞こえてくる。


「ですから、あなたがこの家から独立したい、あの父親から離れたいというなら俺達は力を貸せます。いつでも頼ってください」

そう言って渡されたのは魔石のついたネックレスだ。


「王家の者しか持たない魔石です。魔力を通し話したい相手を思えば、俺でもミューズ様でもティタン様とも話が出来ます」

ライカが再び顔を隠す。


「俺達はフローラ様の力になれます、よく考えてみてください。このような狭い屋敷にとらわれてはなりません。世界はもっと広いのですから」

ライカが窓辺へと立つと、来た時と同じように体が浮かぶ。


同じく黒い服を着た小柄な人物がライカの元に来る。


「遅いです、急ぐですよ」


「すまん」

声に聞き覚えがあった。


ミューズの従者のマオだ。


「フローラ様、僕たちはあなたの味方ですからね」

そう言うとあっという間に二人の姿は見えなくなった。


「あの二人は、とても仲がいいのね……」

風魔法を使えるのがマオだけとは知らないフローラは、あらぬ誤解を抱いたまま、窓を閉めた。



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