11-7 撃ち、放つ、その一撃
フォーゲルは焦っていた。
明らかにシーリアは徐々に速度を上げている。自分のスピードに付いてきている。
魔界を荒らし追放された時も、このブレスレットを手に入れて人間になれるようになった時も、自分を超える速度の者など居なかった。居たかもしれないが気づかなかった、現れなかった。だからそんな奴は居ないで片付けられた。少なくともそれだけで自分のプライドは守られていた。
だが今眼前の相手は、しっかりと自分を追ってきている。
「ウゼェんだよォ死ねやァ!!」
それが彼女の怒りのボルテージを上げに上げた。先程までの余裕ある口調は鳴りを潜め、荒い怒気の籠もった怒鳴り声を上げながら、一気に上空へと飛び上がり、エクストラクターのレバーを引く。
『バード』『ラストイニング』
フォーゲルのエクストラクターがアクトのそれよりもテンションの低い声を上げる。
「食らえやァ!!」
声を上げて上からまっすぐ飛び降りるフォーゲル。脚の爪がギラリと光り、風を纏って明らかに鋭く、鎧すら切り裂くであろう威力を備えているのが分かる。
シーリアはそれを見て考える。このまま突っ込んで迎撃すべきか。いや、自分は傷を追わなくても、風で吹き飛ばされる事にはなるだろう。そうなれば自分の背に居るサーラ、そして……。
それは避けなければならない。絶対に。
では何が出来るのか。一瞬の逡巡の後、少しアクト達と離れた場所にシーリアは降り立った。
「ハッ、諦めたかァ!?」
嘲るように口を開いたフォーゲルは、その狙いをシーリアに定めたまま、軌道を変えて流星の如く彼女に向けて空を翔けた。
「誰が諦めるか……!!」
シーリアはそう言うと自らのエクストラクターの針を回し、8時の方向、盾の絵に合わせた。
『ランスロット』『ディフェンドアップ』
すると背中の羽が消え、全身の鎧が光ると、厚みが増え、動くために空いていた隙間が消え、全身がまるで鉄の塊かのように変化した。
「それが何だァッ!!」
怒りで思考が曇ったフォーゲルは動きを変えない。真っ直ぐシーリアに向けてその鉤爪を翳していく。
そしてその爪が、シーリアの鎧へと到達した。
パキン。
「がっあああああああぁァァァァ!?」
シーリアの肩へその爪を食い込ませようとした瞬間、フォーゲルの脚の爪が砕けた。正確には鎧に備え付けられた鉤爪が砕けただけであるが、硬度の高い物を握り砕けたその衝撃は確かにフォーゲルにもフィードバックしていた。
「な、な……ッ。アタシの……爪が……ッ!!」
慟哭する彼女に向けてシーリアは自らの盾を翳す。
「降参しなさい。今なら怪我なく牢屋に入れるわよ」
杭の先端がフォーゲルのバイザーをクイクイと軽く持ち上げる。その動き、行動が彼女の怒りを更に掻き立てる。
「舐めんなよォ……!!」
一瞬距離を取ったフォーゲルは再びレバーを操作すると、彼女の身につけた篭手の爪が鋭く光る。
「今度こそ切り刻むゥ!!」
宣言と共にフォーゲルは地を駆け、シーリアへと飛び掛かる。
「痛い目見ないと分からないみたいね!!」
シーリアは叫ぶと、針を11時、盾が輝き杭が伸びた絵へと合わせた。
『ガウェイン』『ファイナルアップ』
するとシーリアの盾、エクスカリバンカーが輝き、その先端の杭もまた激しく光った。
「ラウンドアップストライク!!」
シーリアは叫ぶと、盾をフォーゲルに向けて真っ直ぐ突き出した。
同時に盾からガッコンという機械仕掛けが動く音がし、バンカー部分から光の杭が打ち出された。
「あ……やばッ」
フォーゲルはそれを見た瞬間自分の防御をも貫き兼ねない事を悟り、瞬時に回避の姿勢を取った。
が、無駄だった。
回避するより前にフォーゲルの肩を光の杭が貫いた。
「がァァァァァッ!!」
ガン、ガン、ズザザザザザ。
フォーゲルが空中で痛みに悶え、自らの姿勢を制御できなくなり、地面に激突、何度かバウンドした後に熱い地面を刳りながら倒れ込んだ。
「う、がァッ……」
苦悶の声と共にフォーゲルはその姿をガルーダのそれへと戻していく。そしてカラン、カランと彼女の付けていたエクストラクター、そしてセットしていたリリーフカードが地面へと落ちた。
シーリアはフォーゲルが戦闘続行不可能状態に陥った事を確認して、アクトの方を見る。
サーラが指で○を描いた。
アクトはその手の中でうんうん魘されながらも眠りについていた。
「ふぅ」
その姿を見て、シーリアは息を吐いた。




