11-4 山登り
村長の家を出てサーラが口を開く。
「奴は今は火山の上に住んどる。そういうわけで火山登る必要があるのう」
「うぇぇぇ……」
シーリアは不満気な声を漏らした。彼女は勿論先程の決意を忘れたわけではないが、それはそれとして暑いのは困る。
「そうだ」
するとシーリアはナイツエクストラクターを起動、鎧を身に纏った。
「厚着するとむしろ暑くなるんじゃないか?」
アクトは言うが、シーリアはふふんと鼻を鳴らす。
「いいえ、アタシの思った通り、魔法の障壁とかでだいぶ楽になるわ。よし!!これで行きましょう!!」
「目立つがまあ良いか。元気なことは良いことじゃて」
そう言うとサーラは再び歩みを始めた。ガシャンガシャン、騎士の鎧を纏ったシーリアは、金属の触れ合う音を発しながらそれに続いた。
火山に近づくと、アクトは強い魔力の流れを感じた。上から下へと向かうその流れは、足元に流れる赤いドロドロとした液体のそれと一致しているように思えた。
「マグマに魔力が流れてるのか」
「不思議なこってな、そのようなんじゃよ。山の奥に何か大きな魔力でも眠っておるのじゃろうかの」
「ふーん」
シーリアは興味無さそうに適当な相槌を打ったが、他方アクトはふむとマグマを眺めた。
「山の奥ねえ」
「それはいいじゃない。それよりとっとと退治するわよ」
「それもそうじゃの。いくぞい」
サーラとシーリアは歩みを早めたが、アクトはマグマを眺めながら少し遅めにそれに続いた。
「そろそろ近いぞ」
火山の頂上付近。徐々に暑さにも慣れてきた頃、サーラが速度を遅く忍び足になりながら言った。山の上に想像出来る木々は全く無く、ゴツゴツとした岩だけが転がっている。視界が開けているため、アクトは少し心配になった。
「見た感じどこにもいないですけれど」
「だがこの辺りから飛来してきたのを見た者がおるのじゃ。多分どこかに住処がーー」
「誰の住処の話かなァ?」
アクト達の後ろから聞き覚えの無い声が聞こえた。
「伏せて!!」
シーリアが叫びながら振り返り、エクスカリバンカー:シールドモードを翳す。
ガキィン!!
「ぐぅっ」
何かがエクスカリバンカーにぶつかり、鎧を纏ったシーリアの体がアクト達の方へと吹き飛ばされる。
「んがぁっ」
思いがけず押されたアクトはそのまま倒れこむ。
「この声は……」
サーラはギリギリのところでバランスを取って地面に手をやりながら中腰のような体勢で耐える。
「用心棒か何かァ?ちょいちょい、アタシの慈悲を無視するつもりィ?」
シーリアが立ち直りながら声の主を見ると、そこには羽のような薄羽の鎧を身につけて片足立ち、もう片方の脚をぷらぷらと揺らしながら飄々としている女が居た。ガッチリとした太腿は、薄橙の素肌を露わにしているが、汗一つかいていない。
「フォーゲルじゃ!!」
「こいつが!?女じゃない」
話ぶりからして相当凶悪な相手だと思っていたシーリアだったが、その相手が自分と同じ女性だったことに思わず驚きの声を上げた。
「アンタだって女じゃないのよォ?」
「まぁそうだけど。でも同じに扱われるのは不本意ね。アンタみたいに他人を脅したりはしてない」
「ヒュヒュ。別に脅してるわけじゃないわよォ。ちょーっと食料とか財産とか寄越してくれるようにオネガイしてるだけよォ」
彼女の目元にはアクトがエクストラクターを起動した時に身につけているようなバイザーが降りている。その下に見える口元が歪み、笑い声が上がる。
「それが脅しって言うのよ!!ちょっとアクト、起きなさいよ」
盾を構えて防御の姿勢をとりながら、シーリアはアクトの方をチラと見る。
「アクト?」
返事が無い。
「……頭を打って気絶しとる」
アクトの姿を見とめて膝下で介抱しながらサーラが告げた。
「え」
「ヒュヒュ、アンタが吹っ飛ばした時にやっちゃったみたいねェ。大丈夫?ボーイフレンド」
「一応息はしとるし血は出とらん。単に強く打ってしもうただけじゃろう。が、今は目を覚ましそうにない」
サーラの告げる言葉にシーリアは心の中で頭を抱える。
「あーもう!!じゃあソイツの介抱よろしく!!」
「お主は?」
サーラの問いに、キッとフォーゲルを睨みつけながら、シーリアは答える。
「コイツをぶっ飛ばす」




