11-3 火山麓の村
「ここがサラマンダーの村じゃ。名前はないぞ。ちょいちょい壊れたり移動したりしとるからの、そんなもん付けて愛着持つわけにはいかんのじゃ」
そう言ってサーラに案内された村は、先程のホスの村よりもかなりこじんまりとしていた。殆どの家に車輪がついている。まるで移動出来るかのようである。
「その通りじゃ。ワシらは生存特化。生き延びるためには何でもしておる。人住まぬ地は広いもんでな、今回みたいに他の種族に睨まれてどうにもならなかったら逃げ出すみたいな事を繰り返しておるのじゃ。魔界でもそうだったようにな」
「今回はそうしないと?」
「お主らが何とかしてくれれば、の。何ともならなければ逃げ出す予定じゃった。まあガルーダは速度が売りじゃから逃げられるか分からんがの」
「そんなことよりさあ」
シーリアが口を挟んだ。
「あっっっっっっっっっついんだけど」
「ワシは別に」
「僕はまあ耐えられるけど」
「それは薬で変えてるだけで今のアンタはドラゴンだからでしょ。火山の近くなんて聞いてないわよ」
シーリアは村の奥を指差す。澄んだ青い水の代わりにドロドロと濁った赤いマグマが流れる川が村の近くを走っていた。その川を遡れば、巨大な赤い冠を被った山が聳え立っている。
「ワシらは元々火を崇める種族じゃから。なんで火山の近くに村を作る風習があるのじゃ。人住まぬ地にも火山があってよかったわい」
「家々が動くようになっているのは火山の噴火に聳える意味もあるんですね」
「お、お主中々鋭いの。その通りじゃ」
「ううううう……無視された上に熱いし腹が立つわ……」
「無視はしてないけれど、どうしようもないんだよね。少し我慢してくれ」
「むぐぅ」
シーリアはむくれた顔でアクトを睨みつけると、「とっとと退治に出かけるわよ」と言って村長の元へと向かった。
「引き受けてくれた事、大変ありがとうございます、感謝致します。実に困っておりました。しかし、ホスの村ではそんな事が起きているとは、驚きです、驚愕です」
サーラの案内で向かった家で、長い舌をシューシュー言いながら手を合わせて、村長を務めるサラマンダーの男、レームがそう言った。
「サーラ助かりました、救われました。しかもあのフォーゲルの持つブレスレット、それを使いこなせる人間を連れてきて、連行してきてくれるとは」
中々独特の言い回しの村長だなとアクトは思った。「彼は悪気は全くないのじゃが、ちょうどいい言葉遣いを探そうとして変な言い回しばっかりするので気にせんどいてくれ」とはサーラの談であったが、確かに妙な話し方だなと思った。
「フォーゲルはたった一人ですが、変な鎧でこちらのお金を、財産を奪おうとしてくるのです」
「強盗みたいなもん?」
「はい。魔界で暴れて追放された結果、ここにやってきたようです、流れ着いたようです。戦士達が立ち向かいましたがこの通り、見ての通り」
そう言ってレームが手を伸ばした先には、深手を負ってうんうんと唸りながら、サラマンダー達が横になっていた。
「寝かせる場所が、寝床がありませんで、この家も使っています、使用しています。……もはや戦力はありません、皆無です。このままでは我々逃げ出す他なくなってしまいます、存在しません。どうか助けて、助力を頂けないでしょうか」
「分かった。やってみるわ」
アクトより先に答えたのはシーリアであった。
シーリアはその傷だらけの戦士達を見た。悔しそうな表情を浮かべながら眠る人々。無念なのだろう。彼ら彼女らの傷を無駄にするのは、同じ戦士、そして人々を守る騎士として、良しとする所では無かった。
「アタシもエクストラクターは使える。きっとそいつをとっちめてみせるわ」
そう言って彼女は腕のブレスレット、ナイツエクストラクターを胸元に掲げた。
「……まあ、僕も同感。どの道、エクストラクターやリリーフカードは回収しないといけないからね」
アクトも続いて同意した。
「ありがとうございます、御礼申し上げます。サーラ、引き続きガイドをお願い出来ますか、依頼出来ますか」
「無論じゃ。では話がまとまったところで行こうか、悪者退治」
「うん」
「ええ」
サーラはニコリと微笑むと、二人を連れて村長の家を出た。
「いってらっしゃい、ご無事を祈ります、祈願します」
レームは三人の背に向けて何度も何度も手を振っていた。




