黄色いうさぎ
「なぁ知ってる?月にはうさぎが住んでるって。」
暗闇の中、隣に座る友人が行き成り話しかけてきた、何を言い出すのかと思ったら、友人の目線の先に、目を奪うほどに輝く、大きな満月があった。
「何それ、信じてるの?昔よく聞かされたような気がするな。」
月にはうさぎが住んでいて、餅をついている、ただの昔話でしかない、それを信じている友人、この歳になってと思いながらも、まだ知らない世界に夢を馳せている友人が羨ましい。
笑いながら言ってしまったが、心のどこかで、「居たらいいなぁ。」と思っている自分もいる。
「本当に住んでると思う?」
真顔で見つめてくる友人、それに少し戸惑ったが、私は夢は語れない、現実的なことしか話せない。
「まさかー、人間は月に行ったんだよ、うさぎが居たら、ニュースになるって。」
「居るって、何か自分たちの世界に変なの入って来たから、うさぎさんは、逃げちゃったんだって。」
友人は笑いながら言う、どうしたらそんな発想が出来るのか、頭の中を覗いて見たいと思う、いつもいつも奇想天外なことを言っては、やって、私を楽しませてくれる。
「何処に(笑)だとしたら、悪いことしちゃったね、もう、帰ってこないのかな。」
あの月にうさぎは居ない、分かっている事なのに、少し寂しく思う。
「うさぎは臆病だからね・・・・、もしかしたら、あの月から、ぴょ〜んって飛んで、この地球に来てるかもしれないよ。」
またそんな事言って、でももし、そうだったら、それはまた素敵な事。
「ふふふっ、だったら面白い、黄色いうさぎかな?」
黄色に輝くうさぎ、居たら直に見つける事が出来るかもしれない、この地球じゃ目立つに違いない。考えるだけで、心が温かくなる。
「当たり前だろ。黄色いうさぎ、会ったら幸せになれるかもな。」
「見てみたいなぁ、黄色いうさぎ。一言謝らなくちゃね。」
もしも見つける事が出来たら、怒らずに笑って友達なってくれるだろうか、隣で笑う友人のように。
「だな、『勝手に月に入ってすみません』ってな。」
「うさぎの餅食べたいなぁ。」
きっと、美味しいだろう、今まで食べたどのお餅よりも、友人二人と食べれたなら。
「仲良くなれたら、作ってもらおう。」
「うん・・・・・。」
「・・・・・。」
「もう寝よう、体に障る。」
心配想に見つめる友人、本当ならもう寝なくてはいけない時間、でも今回位は、良いと思える、まだうさぎの話をしていたい、まだ満月を見つめていたい。
「もう少しだけ駄目?せっかくこんなに綺麗な満月なのに、寝ちゃったら勿体無いよ。」
「はぁ〜、じゃぁもう少しだけな。」
呆れる友人、でも顔は笑っている。
「ありがとう・・・・・明日頑張るから。」
「当たり前だ、今度どっか行こう・・・・絶対。」
「うん、約束ね。」
「あぁ、約束だ。」
明日を過ぎる事が出来たら、うさぎ探しにでも行きたいなぁ。
きっと友人は笑いながら、「行こう。」と手を取ってくれるはず。
完