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25.匂い立つ



 すべてコンスタンティノーヴェル以外の言葉を使って近隣の国々との繫がりや関わりを学び、休憩の茶席を入れた後、王城の奥にある小ホールへ王女達三人とシスティアーナは移動した。

 カルルも付き添っている。リアナの小さな手をしっかりと握っていて、リアナも機嫌がいい。


「本当に、リアナはカルルデュワが好きなのねぇ」

「うん。語学も凄いし、礼儀作法も完璧、とっても優しいし、ダンスだって上手なのよ?」

「⋯⋯そうね」


 外交官として諸国の代表と会う機会の多い職務上、ある程度必要なスキルである。


 ホールに入ると、先に来ていた男性陣が迎えた。


「お忙しいのに申し訳ありません」

「いや、約束だからね。こちらも運動になるしいいんだよ」


「デュー兄さまと踊るの久し振りよ。いっつもいないんだから」


 デュバルディオと同腹のアルメルティアが、口を尖らせながら、差し出された兄の手に自らの小さな手をのせる。


 ディオ、フレック、アレクサンドル、それぞれの護衛騎士に混じって、エルネストもいた。


  見学席に、トーマストルが座っているのを見て、リアナは首をかしげた。


「兄さま、今日はお休み?」

「ちょっとね、風邪気味なんだ。一緒に踊って移すといけないから」

「そうなんだ⋯⋯ じゃ、カルルにいさま、リアナと踊ってくれる?」

「お望みのままに、マイプリンセス」


 まだ8歳で身体の小さいリアナは、いつもは同腹の兄トーマとダンスの練習をするのだが、どうやらその兄の体調がよくないらしく、ここぞとばかりにカルルにおねだりしていた。


「私も、たまにはデュー兄さま以外と踊りたい」


「まあ、男は余るし、好きな相手と踊るかい?」


 四男三女の王子王女にシスティアーナが加わえられても、今日はカルルとエルネストがいる。踊るだけなら下位貴族当主や跡取りまたは上位貴族の次男以下である騎士達も当然、必要に迫られ嗜みとして一通りは踊れるのだ。


「みんなで順番にまわろうか?」

「あら、フレック? みんなでと仰るのですもの、私も混ぜていただけるのよね?」


 入り口の傍に設置されたセディ(背凭れと肘置きのある二人がけチェア)に、フレックの新妻アナファリテが微笑んで座っていた。


「勿論だよ、奥さん。⋯⋯でも、弟達はともかく、他の男性達とは踊って欲しくないかなあ」


「あら、心の狭いこと」


 ころころと笑いながら立ち上がるアナファリテは、普通に夫の手を取り腰と手を預けるだけなのに、妙に色香の漂う美女で、カルルや騎士達は何を思おうと顔には出さなかったが、エルネストは少しの動揺を隠せなかった。


(結婚すると、女性は皆、ああも綺麗になって、匂い立つような色香が漂うようになるのだろうか⋯⋯)


 王子王女の学友候補に集められた中にアナファリテもいたので幼少期から知っている女性ではあったが、フレックと結婚してからは、美しさに磨きがかかったなと思っていた。


(シスも、いずれは⋯⋯)


 その時、自分が隣に立っている可能性はどれほどあるのだろうか。


「エル従兄(にい)さま」


 システィアーナが、エルネストの腕にそっと手を添えた。





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