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21.腹芸の出来ないエルネスト



 知らなかった貴族令嬢たちの話に困惑気味のエルネストであったが、よくよく整理してみると、仕事で必要のない限り、今まで通り関わり合わなければいいだけだと、落ち着いた。


「聞いたのはそれだけ?」


 試すような、エルネストの反応を覗うような眼で、デュバルディオが訊ねる。


「いや。それはたまたま確認されただけで、本当の用件は⋯⋯」

「縁談?」


 フレックのひと言に、わかりやすく頰を染めて顔を上げるエルネスト。


「その分だと、いい話だった?」

「いい話? そうだろうか⋯⋯」

「曖昧だね。いい話じゃなかった訳?」


 今すぐ誰かと婚姻しろとか、システィアーナは誰々にやるから諦めろ、という話ではなかったものの、システィアーナと結婚していいよ、という事でもなかったように思う。


「今すぐ兵役に出る前に誰かと婚約しろって事でもなかったし、望む相手は誰かと結婚させるから諦めろって話でもなかった⋯⋯かな?」


 でも、自分からの求婚や愛を乞うのは禁じられて、それでも尚且つシスティアーナに望まれたらという条件は、結果的には諦めろと遠回しに言われているような気もする。


「そうともとれない事もないけど、直接求愛行動を取らなければいいんでしょ? 兵役期間が1年延びても近くにいられるんだから、ただの親戚のお兄さんから脱却するいいチャンスなんじゃない?」


「僕の秘書を務めつつ護衛官(アスヴェル)従騎士(スクワイア)をするなら、ほぼ王宮に詰めることになるでしょう?

 従騎士(スクワイア)ならアスヴェルの身の回りの世話をしながら訓練の相手を務めつつ学びとるために、彼と一緒に王宮の近衛騎士の宿舎に寝泊まりするんだろうし、僕は内勤の公務が多いから、妹達とも近い。シスに会う機会も時間も、今より多くなるはずだよ」


 ひと言も、思う相手をシスティアーナだとは言ってないのだが⋯⋯


「何真っ赤になってんの。知らないのはシス本人くらいのもんだよ」

「それ、陛下にも言われた」

「まあ、わかりやすいよね。一途でいいとは思うけど」

「もう少し腹芸を覚えないと、王宮では足もとすくわれたりしかねないよ?」

「デューはうますぎるんだよ。エルにそんなこと強要しないで。素直で真面目なところがいいところなんだから」


 褒め言葉なのに、貶められている気がする。

 貴族男子としてはだめだと言われているように聴こえたのだ。


「うーん、否定はしないけど、肯定もしないよ。エルのいいところなのは確かだし。周りを騙すほど誤魔化すのがうまくならなくてもいいから、感情を読み取られないように、すまし顔とか無表情を貫く、ぐらいは出来るようになった方がいいかもね」


「フレックのように、いつもにこにこしていればいいのか?」

「それ、僕が脳天気なお莫迦さんに聴こえるけど」





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