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38.手が届きそうで届かない宝石



「このように、塩、(しょう)(のう)(みょう)(ばん)などを大量の水に溶かした鞣し水にさらして1~2週間以上経ちますと柔らかく保存もよくなり、次に日陰で乾かしながら⋯⋯」


 ユーフェミア達が見学に来ると事前に報せてあったので、いつもは忙しくしている職人達で雑然としている工房も、鞣し期間中のもの、鞣し終わって陰乾しのもの、皮を終えてこれから洗浄、脂肪落としから鞣しに入るものと、見やすく順に分けて作業が行われていた。


 皮剝ぎや皮の裏の脂肪を刮ぎ落とす作業に、リアナとカルルは顔色を無くしていたが、システィアーナとユーフェミアは、メモをとりながら真剣に、職人の説明を聞いていた。


「素晴らしいわ。何一つ無駄にすることがないのね」


 ユーフェミアは感心して声を上げる。


 骨も他の加工場に送られ利用される。

 肉は乾し肉や燻製などに使われる。

 目玉や脳、内臓は加工食品や薬に使われ、刮ぎ落とした脂肪も工業用ワックスや獣脂ランプの原料になったりと、ほぼ棄てるところがない。


「命をいただいて我々は生かされておりますからな、使える物はすべて使いますよ」


 お城にいて噂話に耳を傾けるだけでは知り得ない、生命に直結した情報だ。

 今すぐ何かに役立たなくても、知っていれば、何かの時に役に立つかもしれない。


 システィアーナは、知り得る事は何でも吸収しようと、貪欲に学んでいった。


 血なまぐさい加工室で血の気はひいたが、情報は何でも取り込んでおく有用性を身にしみて知っているカルルは、眩しい物を見る目で、システィアーナを見ていた。


(やはり、一貴族の跡取り令嬢で終わるには惜しい逸材であるし、もっと磨けば更に輝く美貌もいい。しっかりしているようでどこか初心な所も、愛らしい)


 ──欲しい。あの愛らしさと気高さとを合わせ持った美貌を、愛情に染めてみたい



 元は、リアナの夢のような願望から始まった。



「大好きな叔父さまと、大好きなシス姉さまが結婚してくれたら、いつも二人ともお城にいて、傍にいてくれるよね?」

「リアナ、カルル叔父さまに無茶を言ってはいけないよ」


 同腹の兄トーマに窘められるリアナに、困ったように微笑み返すカルル。


「シス姉さまとは、ハルヴァルヴィア侯爵令嬢のことかな? 確か、公爵家の次男と婚姻を結ぶはずでは?」

「ううん、おるぎゅーおバカだから、コンヤクハキしたのよ。シス姉さまは、今、お婿さん募集中なの」


 実際には、婿選定は休止中であったが、リアナはそこまで知らない。


「叔父さまも、お嫁さん募集中でしょ?」


 城内で、姉であるエメルディア妃や官僚でもある父伯爵に会うと、嫁はまだかと言われているのをしっかりとリアナは見ていた。


「⋯⋯そうだね」


 侯爵家の跡取り娘が婿探しか。


 始めはただの興味だった。噂は聞いている。

 第二王子の妃や王女達と共に高等教育を受けている才女でもあると。

 僅かに紅色を帯びたピンクゴールドの、王家の血をひくだけに輝くような美少女である、とも。


 それが、こんなに気になるとは。


 カルルはため息をついて、次の手を考えた。





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