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37.工房へ



 午後からは、ユーフェミアの公務、毛皮の加工技術の視察に付き合う事になっていた。


 秋の収穫祭を終え、狐狩りのシーズンが始まると、毛皮の加工工房が繁忙期を迎える。

 ちょうど王室とも縁のある加工場で、(なめ)し終わった皮を加工し始めるというので、視察する。

 行程を知り、どれくらい手間がかかるものなのか、どれほど盛んな産業なのかなどを、紙面の数字をみるだけではなく直接学ぶのだ。


 システィアーナも、自領の主要産業の視察は定期的に行っている。

 ロイエルドが宰相就任後、自領の管理に時間がとりづらくなってからは、システィアーナは進んで、領主代行を行ってきた。


 ユーフェミアと共同開発事業で、養蚕と製糸工業も営んでいる。


 メルティやリアナも、己の研究題材を持つ年頃でもある。


 切り出した石の板で舗装された王都の大通りを、あまり揺れずクッションのよい王家の馬車で、東地区に集中する工房通り(クラフトストリート)へ向かう。 


 元々はユーフェミアとシスティアーナの二人で行く予定であったが、リアナが同行したがり、予定のあるメルティと分かれ、3人で馬車に乗り込んだ。そこに、ちゃっかりカルルも着いてくる。


 馬車の後ろのステップに立った従僕と護衛騎士の他、騎馬で前方に二騎、左右に一騎づつ、後方に六騎と、護衛の数が多い。


「そうだね。王都の大通りを、盗賊やならず者が襲うことはほぼ無いだろうけど、貴族や他国から来た商人への牽制、威信を見せつける形も必要だし、それに⋯⋯」


「それに?」


 カルルの説明に、リアナが首をかしげる。その姿も愛らしく、王女でなければ、頭を撫でたり抱きしめたいと、システィアーナはいつも思っていた。

 まだ8歳の可愛い盛りである。それでも、庶民の何倍も勉強を重ね、遊びに興じる時間は少ない。


 遊びたいと駄々を捏ねる事もなく、素直で賢明で、庇護欲を抱く対象。

 それが、システィアーナにとってのリアナであった。


「突然、街の陰に潜む危険分子が襲ってきたら、迎え撃つ騎士と、王女達を守る騎士と、これぐらいは必要なんだと思うよ」

「きけんぶんし」


 そういった存在が居るとは聞いてはいないが、いないとも言い切れない。

 自分達の不遇を他人のせいにして逆恨みで攻撃的な者や、自分達に有利な政権を取るために、現王家や貴族院をどうにかしたいと思っている不穏な存在は、どんな世にも必ずいるものだ。


 やがて幾度か角を曲がって、目的の毛皮工房へ到着した。





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