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26.ユーフェミアの思惑



 思いつきで服を飾り付けてちょっとばかりの遊びのつもりが、なぜか、前触れなくやってき来たユーフェミアに見留められ、取り外すのを遮られた。


「ダメよ、せっかく可愛くしてるのに。王宮に出仕するのなら、そのまま行きましょう?」

「ほ、本気ですか?」

「ええ。そんな風に身につけて喜んでる姿を見たら、きっとお兄さまも喜ばれるわ」


 ユーフェミアの言葉にハッとした。


 この白薔薇は、王宮で育てられ、時の女王のために品種改良された、王家保存の固有種である。

 この姿を見られたら、誰の目にも、アレクサンドルの贈った花を身につけて喜んでるようにしか受けとれないのではないか。


「だ、だだ、ダメです! 花を身につけて喜んでる子供みたいなことしちゃったんですよ、人に見られるなんて、ダメです!」


「可愛いのに。シスはいつも淑女教育が行き届いた令嬢らしい佇まいで凛としているから、こんな可愛らしい一面もあるのよって、見せびらかしたらいいのに」

「赦してください」

「だーめ」


 面白いものを見つけた子供のように活き活きとした目で、システィアーナの手を摑み押さえ込むユーフェミア。


「それにしても、このお屋敷、凄いわね? どこもかしこもお花だらけよ? お兄さまったら、どれだけ摘んだのかしら」

「あ、あの。白と薄桃色の薔薇とラナンキュラスは殿下にいただきましたが、花瓣が尖った色の濃い薔薇やガーベラやチューリップは、その、⋯⋯カルルデュワ様にいただきましたの」

「カルル様が?」


 少し黙って考え込んだが、すぐに顔を上げて、システィアーナの手をひいた。


「やっぱり、そのまま行きましょう」

「ユーフェミア殿下!?」

「ここは、王宮じゃないわ。再従(はとこ)叔母(おば)である貴女の自宅よ。プライベートでは親しみを込めてミアと呼んでくださる約束よ?」


 にっこり微笑んで、白薔薇を花瓶から一本抜き、レースのティーフで雫を拭うと、システィアーナの髪に挿した。


「さ、行きましょう? システィアーナ・リリアベル・アレナルハウディス=ハルヴァルヴィア侯爵令嬢」


 王妃エルナリアよりもエスタヴィオに似た麗しい顔を楽しげに綻ばせ、ユーフェミアはシスティアーナの手をひいて、エントランスへ向かった。





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