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23.花の匂いに包まれて過ごす休日



 赤い薔薇やガーベラ、チューリップなどの好きな花と、かすみ草も多めに分けて、花瓶に生けると、リーナはにこにこと自室へ帰っていった。

 執事見習いの従僕に花瓶を持たせ、自分はエルネストの花束を抱えて。まだ身体の小さなリーナには前方不注意で危なっかしいが、どうしても自分で持つときかなかった。


 ソニアリーナがエルネストを慕っているのは周知の事なので、侍女達も微笑ましく見守ることにした。


 色味が多く、目を楽しませるカルルの花は花瓶一つ分だけシスティアーナの部屋に飾られ、残りは館中に飾られた。

 どこへ行っても花の匂いが広がっていた。


 ピンクを基調に殆どが薄桃色、薄紅色、白で整えられていたアレクサンドルの花も全部は飾れなかったので、エントランスホールと食堂、サロン、システィアーナのよく使う部屋──図書室やサンルーム、化粧直しなどに使われる衣装部屋、自室の水まわり──浴室や個室などに多く使われた。


 寝室にも、三人の花が、エルネストの花束のサイズに合わせて整えられ、飾られている。


 やはりシスティアーナの事がよく解っているエルネストと、王女達に訊いたのかアレクサンドルの花が、部屋にも、システィアーナの好みにも合っていた。


 図書室で本を選んでも、サロンでお茶を飲んでも、サンルームで本を読んでも、バスルームでも一日中、薔薇の香りが満ちていて、早くよくなれと力づけてもらっている気になれた。




「で? システィアーナ。カルルデュワ・タルカストヴィア伯爵子息とはどのような付き合いを?」


 サンルームで読書をしていると、ロイエルドが入ってきて、おもむろに訊ねた。

 すかさず、侍女がハーブティーを淹れ、ロイエルドに差し出す。


「お話をしたのは、昨日が初めてですわ」

「初めて? 初めてで、あんなに花を贈ってくるのかい?」


「⋯⋯そう思われますわよね? わたくしも思いました。なぜなのかと」


 手紙や宝飾品などの贈り物なら返品も利くが、生花では難しい。受け取りを拒否しても、花屋も困るだろう。

 結局、見舞いだからと受けとった。


「親しくしているのではないのだね?」

「はい」

「ふぅむ」


 ロイエルドは考え込んでしまった。


 先日の釣り書きの山に、タルカストヴィア伯爵家の物はなかった。

 だが、そういった気もなく、見舞いというだけで、初対面の女性に家人が困惑するほどの大量の花を贈るだろうか?


 ロイエルドの常識でいけば、否である。





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