11.北の国からの贈り物
男らしさも持ち合わせながら、高位貴族らしい端整な顔立ち。
小麦色の髪に涼やかな空色の瞳が、人好きのする柔らかい表情に印象的な青年、カルルデュワ。
トーマストルやフローリアナは、「兄」と呼んでいたが、実際には、叔父である。
タルカストヴィア伯爵家の三男坊で、30歳のエメルディアとは9つ違い、まだ21歳の若さで、外務省高官であり、今のところまだ勉強中のデュバルディオより権限を持っている。
職業柄、語学は堪能であり、甥っ子姪っ子と話すときも、近隣の国の言葉で会話をする事がある。
それ故に、語学学習の日に合わせて約束をしたのだろう。
「可愛い甥っ子姪っ子に、その姉達にも、お土産があるよ」
カルルデュワは、従僕に持たせていた箱をひとつひとつ手に取り、ユーフェミア、アルメルティア、フローリアナ、トーマストルの順に手渡していく。
『北の国は冬が長いからね、手慰みに工芸品を制作する人が多くてね、長くこもるからか家具にも凝るんだよ。気に入ってくれるといいのだけれど』
それぞれ礼を述べ、リボンを解き、包装紙を剝がしていくと、細かい彫刻の入った両手の平で受けて持てるサイズの木箱が出てくる。
そうっと蓋を開けると、オルゴールになっていて、優しいメロディが流れる。
「可愛い」
「こんなに細かい彫刻、大変でしょうね」
「カルルお兄さま、『ありがとう』」
『どういたしまして。レディ達にお気に召していただけて光栄です』
語学の時間であることを思い出したフローリアナは、途中から北の国の言葉に直す。カルルも、同じ言葉で返事を返した。
『あら、中に何か入ってるわ』
音が鳴るシリンダーや櫛形の音階板などを目隠しに張られた飾り板にも緻密な彫刻が施されていたが、左半分は天鵞絨張りの小物入れになっていて、それぞれに贈り物が入っていた。
『なんて素敵なの?』
『お姉さまのも素敵だけれど、私のも素敵だわ』
『リアナのだって、負けるないよ!』
三人の姫のオルゴールに入っていたのは、水晶を細かく彫刻してつなぎ合わせ、柊の葉と花を模ったイヤリングだった。
下がって揺れるものや耳朶を花で覆うものなど、三人とも、それぞれにデザインが違う。
トーマストルにも、オルゴールの小物入れに、柊の葉とキンモクセイに似た柊の花を模した水晶の彫刻飾りのタイピンとカフスボタンが入っていた。
『カルル兄さま、ありがとうございます。年末の夜宴会でつけます!』
柊の花は、ちょうど11月から12月が花期で、旬のデザインと言える。
トーマストルのシルバーブロンドと空色の瞳によく合うだろう。