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62.フレイラの手紙   


「ちょっと前のシスと同じね」

「わたくしはここまでは⋯⋯」

「当事者以外にとっては同じよね」


 フレイラからの手紙の内容は、確かに前半は、システィアーナが言うように、レースを売り込んだ過程や結果の報告だ。

 デュバルディオは中々の条件を勝ち取ったようだ。


 ただ、後半のフレイラからの個人的な通信内容は、システィアーナ達三人が困惑するに充分だった。



 デュバルディオ様はとても紳士で⋯⋯

 デュバルディオ様は二国間の王家の出自ながら尊大な態度は取らず、知性的に話を進め⋯⋯

 デュバルディオ様は⋯⋯


「ま、いいんじゃないの? アレクお兄さまから、デュー兄さまに興味が移っただけじゃない?」

「て言うか、元々、アレクお兄さまに近づいたのは公爵の指示で、本人の意志じゃなかったんでしょうね。

 今、身近に居て『紳士的に』優しくしてくれたり、対人関係になれていない深窓のお嬢様には驚きの外交手腕なんかは、格好良く映ったんでしょうね」

「初恋だったりして?」

「まだ、そうと決まった訳では⋯⋯」


 と言いつつ、システィアーナにもそうだろうと思えた。


 とにかく、デュバルディオを褒めちぎるその文章は、外交会談のレポートや交流のあまりない令嬢への私信の域を越えていると思われた。


 でも、その文からは本当にデュバルディオの良さを誰かに聞いて欲しいと言う素直な気持ちはとてもよく感じられる。


「こういう気持ちは、誰にも止められないし、批難することでもないわ。そっとしておきましょう」

「そうね。譬え、フレイラ嬢がデュー兄さまと結婚したいって言い出しても、公爵が認めないでしょうし」

「どうして? いいお話なのでは?」


 システィアーナの言葉に、姉妹二人は絶句する。


「シス、冷たい」

「え? どうして? 応援するとまではいかなくても、静観してもいいんじゃないのと言って、どうして冷たいになるの?」

「あ~あ、これはダメね」

「デュー兄さま可哀想」

「え?」


 姉妹は肩をすくめ、首を振る。


「少なくとも、エステルヴォム公爵は野心家だから、アレクお兄さまの正妃を狙っていたんでしょうし」

「ハルサムとしては、デュー兄さまには王位継承権がないんだから、よしとは言わないんじゃないかしら」

「そんな⋯⋯心惹かれていらっしゃるようなのに可哀想」

「そうね。デュー兄さまも、シスに求婚してるのに、そのシスからフレイラ嬢と良縁だとか言われたら、立つ瀬がないんじゃなくて?」

「⋯⋯あ」


 そう。デュバルディオは、どこまで本気なのかはわからないが、システィアーナの婿になれるよと立候補した男性である。


 そのデュバルディオに別の人物が熱を上げ、結婚を希望したとして、それをいい話だとか言うのは、システィアーナの中でデュバルディオへの婚姻相手としての意識が希薄な証明でもあり、かつそれを人前で言ってしまうのは、婿になる事を希望するというデュバルディオに対し失礼でもある。


「あの、ごめんなさい。そんなつもりじゃ⋯⋯」

「ワザとじゃなくて無意識ならなお悪しね」

「デュー兄さまとは結婚したくない?」

「そんな事ないわ。ホントよ」


 リングバルドとコンスタンティノーヴェルの両王家に縁が出来、本人も優秀で人物もいいとあっては、断る理由などない。 


「じゃ、デュー兄さまを婿取りする?」

「⋯⋯」

「即答できなきゃ、そういうことなんじゃない?」

「ま、貴族令嬢として政略結婚と思って、アレと結婚するよりかはずっと、お兄さまの方がいいんじゃない?」




「⋯⋯っクシ」

「まあ、デュバルディオ殿下、お風邪を召される予徴でしょうか? ここはコンスタンティノーヴェルよりも寒いですから、首元や頭部を暖かくしなくてはいけませんわ」


 まさか妹達にアレ(オルギュスト)よりはましと言われているとは思わないデュバルディオは、可愛い妹とシスティアーナのために、ずっと離れずついて歩くフレイラを連れて婦人方に人気の店へ行き、愛しい妹達や再従(はとこ)叔母(おば)が喜びそうな土産を選んでいた。


 


ちょっと可哀想なデュバルディオの明日はどっちだw

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