表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
232/260

46.応援したい親友


「いいことあったみたいだね? エル」

「え?」

「なんか、表情がね、柔らかい。ファヴィアンの氷のような視線を受けてオロオロしてるのかと思えば、今は鼻唄でも歌い出しそうだ」


 そうなのか? 頰を撫でるが、わからない。ニヤけてはいないと思うが、確かに叱られたようには見えないかもしれない。


「普通だと」

「思わないよ。シスとイチャイチャしちゃった?」

「んな訳っ」

「あ、図星? いやぁ、ファヴィアンが眼をつり上げて怖い顔してたからさぁ。公衆の面前で「エル従兄(にい)さま♡」とか甘えた声を聴いたり腕に縋られちゃったりしてない?」

「見てたんなら態々(わざわざ)訊かなくても⋯⋯!!」


 頰を染めて講義するエルネスト。


「あ、やっぱりそうなんだ? 兄上も驚いてたみたいだし、ファヴィアンが冷た〜い目で見てたからそうなんだろうなって、さ?」


 鎌をかけられて墓穴を掘った事に気づき、苦い物を噛みつぶしたような表情(かお)になる。


「まあまあ、そう睨まないで。いいじゃん。エルには気を許してるって事でしょ」


 頼られて悪い気はしない。甘えられると嬉しい。

 そこに恋情や深い思慕がこもっていればもっと喜べただろうが、まだ親戚のお兄さんを超えられていない気がする。


「期限の二年で、本当にそういう関係になれるのかな。近過ぎて却って見えない存在とか、空気のように傍にいるのが当たり前すぎて特には意識しないとか、ないかな」

「そう言うな。アスヴェルの従騎士(スクワイア)から正騎士になったら、シスの理想像を体現できるだろ」


 システィアーナが四歳、エルネストが五歳、フレキシヴァルトは六歳。

 ドゥウェルヴィア公爵に連れられて、毎日のように王宮に来ていたシスティアーナは、ユーフェミアの遊び相手に正式に決まるまでは白馬のぬいぐるみを抱いていた。


 普通はウサギやクマではないのかとデュバルディオが訊ねると、大人になったら白馬に乗った騎士がお嫁さんにすると迎えに来るための願掛けなのだという。


「普通は、白馬の王子さまなんじゃないの?」


 デュバルディオの質問にも首を横に振るシスティアーナ。


 サラサラの金の髪と若葉色の瞳、優しい笑顔が素敵な、誠実で剣技が巧みな騎士の物語を、ユーフェミアと一緒に子守り(ナニー)に読んでもらって、どちらが先に騎士さまと結婚するか競争する事になったのだと言う。


 その時、フレキシヴァルトは「なら、エルネストが騎士になれば、そのまんまだね」と言ったのを、今でも憶えている。


 ヘーゼルかブルーの眼が一般的なコンスタンティノーヴェルにおいて、エルネストのペリドットの瞳は珍しい。

 クセのないサラサラの金の髪も。


 当時幼児だったシスティアーナは憶えていないようだし、エルネストも言われなければ思い出さないだろうが、確かに、最初は白馬の騎士が理想像だったのだ。


 どんなに時間がなくても疲れていても、サラサラの金の髪と清潔感のある身嗜みを心掛けるエルネストは、システィアーナのために騎士になろうとしているのだと思った。

 だから、最初は自分の発言に責任を持つために、応援しようと思っていたが、同じ歳のデュバルディオではなく自分の学友側近候補としてつくことになり、付き合う内に本心から応援したくなった。


 譬え、どんな結果が待っていようとも──



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ