9.揃い踏み
「システィアーナ・リリアベル・アレナルハウディス=ハルヴァルヴィア侯爵令嬢、陛下の招聘により罷り越しました」
足を軽くクロスして折り、スカートの端を摘んで上半身を傾けお辞儀する、令嬢が目上の者にする正式な礼──カーテシーを綺麗に決めて、頭を下げたまま下知を待つ。
「おお、システィアーナ嬢、態々こんな奥まで済まなんだな。これ、アレクサンドル、早うソファまでエスコートせんか」
「はい、お祖父様──大公陛下」
──これは何?
システィアーナは肩と言わず手足と言わず、全身に力が入った。
登城してすぐ国王陛下から喚び出しを受けたので、朝から出ている両親はいるとは思った。
国王陛下のみならず、王妃殿下も或いはいるかも知れないとも思っていた。
昨夜の夜会での出来事についての用件ならば、オルギュストの父であるエルネスタヴィオ公爵がいるだろうとも思っていた。
だが、まさか、先代王、大公陛下まで居るとは!?
「そう緊張せんでもええ。お小言を言うたりはせんからの」
「はい。ありがとうございます」
手に汗握り、震える身体に叱咤して、アレクサンドルのエスコートで、ふかふかのソファに座る。
三人がけの一番右で、隣は母エルティーネ、更にその隣に父ロイエルドが先に座っていた。
「むしろ、叱られるのは公爵家の方だよね?」
楽しげに公爵の顔色を伺いつつ、ハーブティーに口をつける現国王。
「は⋯⋯も、申し訳ありません、愚息めが大変失礼を⋯⋯」
「謝るのは、僕にじゃないよね? セルディオ」
「は、も、申し訳ありません。あ、いや、その、システィアーナ嬢、うちの愚息オルギュストが、昨夜は大変な失礼を⋯⋯」
「昨夜は? 昨夜だけなのかな?」
「あ、いえ、そ、それは⋯⋯その、申し訳ありません」
「僕、前に言ったよね? あのお莫迦さんに騎士爵をとらせるつもりなら、最低限ちゃんと騎士道に則った紳士に育てろって」
「はひ」
健康面を理由に療養に専念するため、崩御を待たず早くに譲位され、諸国と比べても異例のまだ若い国王に、ペコペコ頭を下げる髪に白いものが混じる50絡みの公爵。
システィアーナには、シュールに見えた。
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前国王は、健康上の理由と、エスタヴィオに国王として充分な力があると認めた事により、数年前に譲位して、大公(大公爵)となっています。
譲位して隠遁療養生活を送っていても、国王であった実績は消えないので、尊称は殿下や閣下ではなく、前国王として(大公)陛下のままです。
ご了承ください。




