表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
222/260

36.寂しげな瞳   


 目が覚めたら、一番におはようございますと言って差し上げますわ。


 自分がそう言ったはずが、逆に言われてしまった。



「おはよう、ティア。よく眠れたかい?」

「⋯⋯は、い、あの、殿下、申し訳ありません。起きるまで見守っていますと申し上げましたのに、まさか、わたくし自身が寝てしまうなんて」

「ティア? 今は、公務中でも、他人の目もないよ」


 また? そんなに、肩書きで呼ばれるのは寂しいのだろうか。


 自分が、ユーフェミアやアナファリテに、交流のある令嬢達に、どこでもいつでもハルヴァルヴィア侯爵令嬢と呼ばれ続けたら?


 それは寂しいだろう、疎外感を感じるだろう。


「申し訳ありません。殿下が立太子なさったとき、わたくしは11になる少し前でしたのですが、父に、これからは、今までと同じように気安くしてはいけないと言われたものですから、人目のないところでも、話題に出すたび、殿下と、王太子殿下と言うようにしてましたので、クセになっていたようです」


 ですが、本当に、周りに人が居ない時だけですよ?

 頰に朱が差すのを感じながら、もじもじと、小さな声で呼んでみる。


「あ、アレクサンドルさま」

「もう一声、昔のように愛称で呼んで欲しいところだけれど、今はそれで満足しておくかな。急には無理のようだから」


 困ったように、寂しげに微笑むアレクサンドルの表情(かお)は、子供の頃我が儘を言った時に見せたものと同じだと思い当たる。


 もっとご本を読んで。

 てぃあも一緒に行く!

 ハーマン( 宮廷家庭教師 )講義(おはなし)はつまんない。さんでぃ( • • • • )が教えて?

 てぃあ、ほんものの王子さまと踊りたい!!


 ねだると優先的に構ってくれた事の方が多かったけれど、公務や自身の勉強があると申し訳なさそうに、困った表情(かお)で自由にしてていいからねと、彼の部屋に置いていくのだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ