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30.ミアの想う人    


 嫌がるマリアンナを、縄をつけるかのように、しっかり目に見えない鎖でもつけているかのように、ユーンフェルトが先導してリングバルドに帰国してはや数ヶ月。


 静かないつもの日常を忙しく過ごす内にすっかり忘れていたが、仕事を減らした分、ふとした瞬間に、エルネストの縁談はどうなったのか、ユーフェミアの想い人は誰で関係は築けているのか、気になる時があった。

 だからと言って、どちらにも訊くことは出来なかったが。



 アナファリテの頼みが、長期休暇をとれるかに係わっているのなら、そのためには、自分に割譲された土地の管理運用を任せるためのルール作りや体制を整える必要があり、毎日のように領地の管理官邸に執事と共に詰めて通っていた。




 久し振りの王城は、なぜか緊張する。



 あれから、城外の夫人団体の活動に、アナファリテとアルメルティアとは顔を合わせたが、ユーフェミアには会えてない。


 避けている訳ではないがなんとなく会いづらくて、却って会えないことに安堵する自分に情けなくなる。

 親姉妹(おやきょうだい)よりも側にいたユーフェミアの、自分の知らない一面を知って、なんだか胸がざわざわするのだ。


 王女だからと言って、恋をしないという事はないだろうし、その事自体はおかしいとは思わない。

 ただ、誰よりも側にいたと思っている、母親の違う双子とまで言われてる自分が、彼女のそういう一面とその事実を知らなかったことにショックを受けているのだ。


 ──知らなかったのではなく、知ろうとしなかったのかもしれない


 自分がそういう感情を知らず、婚約者とは相容れず、他の男性との一対一の付き合いもなく来たからと、ユーフェミアにそんな出会いがあると、思いもしなかったのだ。


 そして、それは、自分が一番誰よりも知っている気になっていたユーフェミアを、ちゃんと見ていなかったということなのではないのか。



「大袈裟ねぇ。ミアだって、女の子だもの、格好いい男性や素敵な貴公子に思いを寄せる事はあるでしょうし、仲良く毎日会う間柄であっても、それこそ姉妹でも『私、好きな人が出来たの』なんて話を出来る人と胸に秘める人がいて、ミアは、身分や立場とか色々あって、誰にも言わなかった、それだけでしょう?」


 システィアーナの不安は、アナファリテから見たら至極単純なことらしい。


 それでも、ショックだったのだ。


「ミアは、自分が王女である事を識っていて、自由に恋をする立場にないことを納得して、誰にも告げずに想っていた。それだけよ。システィアーナに気をつかったとか、秘密にしようとか、そういう事じゃないと思うわよ」


 アナファリテの言葉は、正解のように思える。

 だが、それだけじゃないようにも思える。


 もしかしたら、自分には教えられない相手なのか? まさか身内? 


 とは言っても、ソニアリーナと二人姉妹なのだから、身内と言っても侯爵家には該当者はいない。あるとしたら、王族公爵家の令息達か、身の回りの世話をする者たち──執事従僕や王城内文官、護衛官、近衛騎士の中でも王家直属の精鋭か⋯⋯


 アスヴェルかエル従兄(にい)さま?



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