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7.エルネストのために



 エルネストは大いに慌てた。


 まさか、兄が自分を伴って王太子殿下に会いに行ったのが、自分をシスティアーナの婚約者に押し上げるためだったとは。



「推薦していただけるなら、私にできる事なら何でもいたします」


「殊勝なことを。私の薦める令嬢と婚姻を結び、我が側近になれと言ってもかい?」


「父上の領地運営の手伝いをやりながら、片手間にできることとは思えませんが?」


「何でもと言ったよ? 婚姻を結び、側近になる事は、できない事とは思えないがね?」


「領地を放り出しては行けません」


「ふむ。だが、システィアーナ嬢と婚姻したエルネストが、領地を任されてくれれば、可能じゃないかね? サラディナヴィオ公爵領と、ハルヴァルヴィア侯爵領は近いから、不可能じゃないと思うが?」


「弟に、苦労をさせられません。システィアーナ嬢にしても、新婚そうそう、別居状態をしろと?」


「領地に詰めなくてもいいんじゃないのかい?」



 アレクサンドルとユーヴェルフィオの睨み合いが続く。


 その空気に耐えられなくなって、エルネストが止めた。



「待ってください! 私の為に、兄上が犠牲になることはありません」


「犠牲とは言ってくれるね?」


「申し訳ありません。ですが、何も兄が意に染まぬ婚姻をして、領地を人任せにしてまで、私の結婚を融通利かせる事は。そもそも、私が、システィアーナに拒絶される可能性だって⋯⋯!!」


「だが、王命に従って、9年もアレの婚約者である事を努めたのだ、お前ならもっと」


「それこそ、不本意です。王命なくば私の妻に望めないのなら、無理強いするつもりはありません。王命で無理やり妻にしたとて、心を得られないなど、私が耐えられません」


「エルネスト⋯⋯」



 ふう。アレクサンドルが大きなため息をついた。



「盛り上がってる所、失礼するよ。それに、気を持たせるような言動をして、済まなかったね。ユーヴェルフィオ」


「いえ、決してそのような」


「違うんだ。君の覚悟を試しただけで、悪気はなかったのだが、結果的には、君の覚悟を踏みにじる事になる」


「それは、どう言う⋯⋯?」



 未だ跪くユーヴェルフィオの腕を支え、立たせるアレクサンドル。


 エルネストも、アレクサンドルの言いたいことが察せず、首を傾げるばかり。



「結論から言おう。エルネストが、システィアーナの次の婚約者になる事は、陛下がお許しにならないだろう」





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