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21.薄紅の下ろし髪   



 初めての城外での公務に、華美すぎず素朴すぎない適度なドレスに身を包み、親しみやすい兄フレックにあれこれ話し掛けるメルティを微笑ましく見ていると、いつの間にかアレクサンドルが傍に立っていた。


「今日は、きっちり結い上げてないんだね」


 そう言って、システィアーナのこめかみから肩に下がる薄紅色の淡い金髪を鎖骨の辺りで一房掬い、人指し指でくるんと巻いて跳ねさせて放す。


「ええ。夜会や王家での公式訪問ではないので、堅苦しい恰好は避けました」

「そう。いつもそうやって幾らかは下ろしていた方が可愛いね」


 前触れのない思わぬ台詞に、頰に朱がのぼり、言葉が出て来ない。


「お兄さま、婚約者や配偶者ではない女性の髪に触れるのはマナー違反ですわ」

「あ、ああ、すまない。久し振りに見たヘアスタイルだったので、つい⋯⋯ 無意識に触れてしまった。失礼だった」


 そうと考えずに触れたくなって自然とやってしまった行動に、アレクサンドルは少し赤らめて、肩に触れそうな位置にあった手を引いた。


「お兄さまは、ハーフアップや下ろした髪型がお好きなの?」

「そうだね。夜会巻きのようなカッチリ結い上げた髪よりも、崩した感じや下ろしている方が、女性らしくて好きかな」

「兄上は解ってないな。夜会巻きの、後れ毛が揺れる白いうなじが色っぽいんじゃないか」

「フレック兄さま、女性の前で正直すぎますわ」

「アナ義姉さまは大人っぽい美女ですもんね」


 兄妹ならではの明け透けな会話に、羞恥心が勝り混ざれないシスティアーナ。


(子供っぽいのではないかと思ったけれど、下ろした髪を女性らしいと思われる方もいらっしゃるのね)


 貴族の女性は、成人すると、家の外に出る時はほぼ毎回、家にいても大抵が、首筋が出るほどしっかりと結い上げる。

 実は、祖父や母から受け継がれた薄紅の髪は、国内でも珍しく、侍女の手入れも行き届いて陽の光に煌めきお気に入りなので、わずか一部でも目に映る髪型が好きなのだ。

 自室でゆっくりしている時は基本下ろしている。


 それが好みだという男性もいるとわかり、いつも気を張っていたシスティアーナは、少しだけ気を緩めてもいいような気になれた。




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