19.知らされていなかった縁談が気にかかる
エルネストに縁談があると聞いて驚きはしたが、従騎士としても精進し、フレキシヴァルトの私設秘書を兼任し陛下の覚えもめでたいエルネストなら然もありなんと納得する。
ただ、ロイエルドとエスタヴィオとで止めているとはどういう事なのか。
陛下の中ではすでに、エル従兄さまと婚姻させる令嬢は決まっているのかもしれない⋯⋯
気心の知れて優しいエルネストなら、将来への不安もなく穏やかな家庭を築けると思ったゆえの候補だったのが。
祖父と祖母の両方から王族の血を引くシスティアーナは、やはり又従兄は六親等で推奨されないかもしれないという考えも頭の隅にある。
また、エルネスト自身も兵役特例措置で従騎士としても、フレックの補佐官としても精進中の身で、今は婚姻問題で煩わせたくなかったのもある。
だから、これまで口には出さずに来たのだ。
気にはなったが、「その縁談相手とはどちらの家のご令嬢か伺っても?」とは訊けなかった。
エルネストのプライベートな問題だし、本人の口から聞いていないことを、親族だからと言って他から聞くのはマナー違反でもある。
そして、やはり侯爵家に利がある婚姻契約相手と言えば、二国の王家と縁を結べるデュバルディオの方が条件は上と言わざるを得ない。
そして、デュバルディオも、エルネストとは違ったタイプの頼りになる再従甥で、幼少より馴染みのあるお兄さまでもある。
現時点では、ディオが第一候補と言えた。
「まあ、焦って後悔するような選択はしないように。お前はまだ若い」
「はい」
自室に戻ってからも、ディオが婿に入れるから考えておいてと言っていたのに父には話が通っていなかった事、エルネストに複数の縁談が来ていた事と、それらを父と王で差し止めている事が、気になって休めない。
外出着から晩餐用のドレスに着替え、侍女を下がらせて時間まで待つ間に色々考えてしまう。
(エル従兄さまは、そんな事、少しも話してくださらなかった)
敢えて話すような事でもないと思われている?
父らで差し止めているから本人も知らない?
ディオは、本気ではないのだろうか⋯⋯ もしかしたら、私が決意するまで話を表にしないつもりなのかもしれない。王家から話が出れば、臣下から拒否は出来ないだろうから。
いずれにしても、ソニアリーナが安心して婚約者を探せるように、最低二十歳までには子供は産めずとも結婚はしておきたい、とは思うのだった。